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劇症型溶血性レンサ球菌感染症(severe invasive streptococcal infection 、streptococcal toxic shock syndrome ;STSS)、壊死性筋膜炎

参照:劇症型溶血性レンサ球菌感染症とは

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疾患

・「劇症型溶血性レンサ球菌感染症」「壊死性筋膜炎」は突発的に発症し、急速に多臓器不全に進行するβ溶血を示すレンサ球菌による敗血症性ショック病態である。

・メデイアなどで「人喰いいバクテリア」といった病名で、センセーショナルな取り上げ方をされることがある。

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疫学

・毎年100-200人の患者が確認されている。そして、こ のうち約30%が死亡しており、きわめて致死率の高い感染症である。

・劇症型溶血性レンサ球菌感染症は、主に「A群溶血性レンサ球菌(Streptococcus pyogenes ;S. pyogenes) 」により引き起こされる

・A群溶血性レンサ球菌感染による一般的な疾患は咽頭炎であり、その多くは小児が罹患する。

・一方、劇症型溶血性レンサ球菌感染症は子供から大人まで広範囲の年齢層に発症するが、特に30歳以上の大人に多いのがひとつの特徴である(IASR 2012年8号参照)

 

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壊死性筋膜炎の起因菌

・溶連菌(A群が有名だが、高齢者や免疫不全者ではB、C、G群の感染も増加)

・黄色ブドウ球菌

・嫌気性菌(特にC.perfringens

・淡水や海水の曝露歴がある場合:Vibrio vulnificus、Aeromonas hydrophilaなど

 

臨床症状

・劇症型溶血性レンサ球菌感染症(severe invasive streptococcal infection 、または streptococcal toxic shock syndrome ;STSS)の患者は、免疫不全などの重篤な基礎疾患をほとんど持っていないにもかかわらず、突然発病する例がある

・発症に何らかの宿主側の要因も存在すると考えられている

・初期症状としては四肢の疼痛、腫脹、 発熱、血圧低下などで、発病から病状の進行が非常に急激かつ劇的で、発病後数十時間以内には軟部組織壊死、急性腎不全、成人型呼吸窮迫症候群 (ARDS)、播種性血管内凝固症候群(DIC)、多臓器不全(MOF)を引き起こし、ショック状態から死に至ることも多い。近年、妊産婦の症例も報告されている。

・Stevens らの報告によると、本症の最も一般的な初期症状は疼痛であり、急激に始まり、重篤である(Stevens,1992,Stevens et al,1989)。

・続いて、圧痛あるいは全身症状が見られる。疼痛は通常四肢で見られる。

・疼痛の開始前に、発熱、悪寒、筋肉痛、下痢のようなインフルエン ザ様の症状が20%の患者にみられる(Stevens,1992, Stevens et al,1989)。

・全身症状としては、発熱が最も一般的である(ただし、患者の10%はショックによる低体温を示す)(Stevens,1992, Stevens et al, 1989)。

・錯乱状態(confusion)が患者の55%でみられ、昏睡や好戦的な姿勢がみられることもある(Stevens,1992, Stevens et al,1989)。

・局所的な腫脹、圧痛、疼痛、紅斑のような軟部組織感染の徴候は、皮膚の進入口が存在する場合によくみられる。

・圧痛は明らかな皮膚病変を越えて存在する。

・発熱や中毒症状を示す患者紫色の水疱がみられると、壊死性筋膜炎や筋炎のような深部の軟部組織感染を起こしている可能性が考えられる(Stevens,1995)。

 

診断

 

 

病原診断

・通常無菌的である部位(血液、脳脊髄液、胸水、腹水、生検組織、手術創など)からβ溶血を示すレンサ球菌が検出される。

・本症では顕著な菌血症を示すので、血液のグラム染色標本を検鏡するとレンサ球菌が直接観察される。分離培地には血液寒天培地を用いるが、溶血性レンサ球菌はこの培地上でβ溶血を示す直径0.5mm 以上のコロニーを形成する。

・本菌はグラム陽性球菌で連鎖状の配列を形成し、鞭毛を有していなく、芽胞を形成しない。また、カタラーゼ陰性である。その後、血清群別、糖分解試験等の生化学的性状試験や検査キットにより、A群溶血性レンサ球菌であることを同定する。

治療

抗菌薬

・抗菌薬としてはペニシリン系薬が第一選択薬である。

・毒素産生抑制効果を期待してクリンダマイシンを併用する。

起炎菌が同定されるまでは:

タゾバクタム/ピペラシリン 1回4.5g 6時間毎

+バンコマイシン

+クリンダマイシン600~900㎎を8時間毎(毒素産生抑制効果を目的に併用する)

溶連菌やC.perfringensが同定、想定される時:

ペニシリンG200~400万単位 4時間毎

+クリンダマイシン600~900㎎ 8時間毎

 

Vibrio vulnificus、Aeromonas hydrophilaが想定される時:

CTRX 2g 24時間毎

+ドキシサイクリン100㎎ 12時間毎

 

外科的治療

・壊死に陥った軟部組織は本菌の生息部位であり、筋壊死による腎不全および代謝性アシドーシスの悪化を防止するため、壊死部切開、デブリドマンが必要である。

・血圧維持には大量の輸液が必要であるが、輸液量の許容範囲が狭いため、肺動脈圧の経時的観察が必要である。

 

感染症法における取り扱い  (2012年7月更新)

全数報告対象(5類感染症)であり、診断した医師は7日以内に最寄りの保健所に届け出なければならない。

 

 

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