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がん関連発熱

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がん関連発熱について

・がん患者における発熱、およびその熱源は下記に挙げるように多様である。

・腫瘍熱や不可逆な病態故に対症療法のみで対応すべき状況なのか、感染など治療すべき状態なのかは慎重な鑑別が必要である。

・感染をはじめとした発熱は意識障害(せん妄)の大きなリスク要因となる。また、熱苦は ADL の
低下や不安・倦怠感といった他の症状の緩和にも有意に影響を及ぼすため、原因のアセスメントと
症状緩和のアプローチを十分に行う。

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原因

① 感染症

・終末期のがん患者は低栄養状態,免疫力の低下,バリア障害、ステロイド治療,医療デバイスの接続など,感染リスク要因が多数存在し、感染症が原因で死を迎える場合も多い。

・終末期がん患者の感染有病率は 20-80%とされ細菌感染が多く、腸内細菌(特に大腸菌)や
黄色ブドウ球菌が原因菌になりやすい。

・他にもウイルス感染(ヘルペスウイルスなど)、真菌感染も生じることがある。

・尿路感染症、呼吸器感染症の頻度が多い。

・終末期がん患者が感染症を発症した場合、多くは抗生剤の投与が行われる。約半数の患者は改善がみられるが、改善の見込みがないときは家族の意向を尊重しつつ、中止も含めて検討する。

・感染症以外の熱源を検討する際には、可能な限り感染を除外すること

② 腫瘍熱

・がん患者の腫瘍熱は 5-27%と報告され、転移巣が多いほど腫瘍熱をきたしやすい。

腫瘍熱診断の診断基準案

1)37.8℃以上の発熱が 1 日 1 回以上ある。
2)発熱の期間が 長期間である(おおよそ 2 週間以上)。
3)身体診察・検査所見 (培養検査を含む)・画像検査などにおいて感染症の根拠を認めない。
4)アレルギーによる発熱は否定的である。
5)感染が疑わしい場合、7 日以上の経験的な抗菌薬治療に対する解熱反応がない。
6)ナプロキセンテストによって速やかに完全に解熱し, ナプロキセンを使用中平熱が持続する。
また、画像検査で腫瘍の壊死像が認められる場合、悪寒戦慄を伴わない場合、解熱剤を用いない
場合でも自然に解熱する場合は腫瘍熱の可能性を加味する。

対症療法

・腫瘍熱と考える場合、定型的にはナプロキセン(ナイキサン)400~600mg 分 2~3 を定期
投与することが勧められている。これで 12~24 時間後から丸 1 日を通して解熱すれば腫瘍熱と診
断する。

・ナプロキセンが有効でない場合、他の解熱作用のあるNSAIDs(フルルビプロフェンアキセチ
ル(ロピオン)、ジクロフェナクナトリウム(ボルタレン)、ロキソプロフェン(ロキソニン))に変更することが有効な時がある。

・またアセトアミノフェン 2.4~4.0g 分 3~4 を使用・併用することも可能である。

セレコキシブ(セレコックス)といった COX-2 選択阻害薬は解熱効果が弱いため使用しない

・上記の対応で症状緩和が困難である場合や食思不振・倦怠感など悪液質による症状がある場
合は、少量のステロイド(デキサメサゾン・ベタメタゾン 2~4mg/回、ハイドロコルチゾン 100mg/回)を投与する事も検討できる。しかし、感染が完全に否定できない場合や 1 カ月以上の投与になる場合には、消化性潰瘍、血糖異常、ムーンフェイス、精神症状(不眠、せん妄、抑うつ)、易感染、ミオパチーなどの合併症を生じるリスクがある。またステロイド投与中に発熱が再発した場合、不顕性の感染が顕性化した可能性が高いので、感染の再検索が必要と思われる。

 

以下③~⑥が考えられる場合は、可逆性が期待できる場合は原因の除去を試みる。

不可逆な場合や治療効果が得られるまでは、腫瘍熱の対症療法に準じて対症療法を行う。

③ 血栓症

・深部静脈血栓、上大静脈・下大静脈症候群、肺梗塞など

④ 薬剤関連の発熱

・がん薬物療法(シスプラチン、ゲムシタビン、パクリタキセル、エトポシド、分子標的薬など)

・ゾレドロン酸ナトリウム(ゾメタ)

・悪性症候群(抗精神病薬など抗ドパミン受容体拮抗薬使用時)

・薬剤性セロトニン症候群(セロトニン作動薬、セロトニン再取り込み阻害薬使用時)

⑤ 治療関連

・術侵襲、放射線肺臓炎、心内膜炎など

 

⑥ 中枢熱(視床下部の体温中枢障害)、内分泌関連など

・頭蓋内腫瘍、脳出血、てんかん発作、副腎不全、視床下部機能不全、下垂体機能不全、セロトニン症候群、脱水、など

 

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