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家族志向のケア

・家族とは生物学的、感情的、法的に結びついている集団。

・患者の背景には、それぞれに固有の家族関係があり、それぞれが関係しあい、家族全体がひとつのシステムを作り上げている

・家庭医療に限らず、医療の現場において家族との関わりを抜きに患者とのやりとりを行うことはできない。

・「家族志向型ケア」とは、家族に焦点を当てた、もしくは家族を視野に入れたケアを意味する概念である。

 

家族の木(Family tree)

家族の木

家庭医療で重要な概念に「家族の木」がある。

外来を受診する患者は通常一人だが,その患者の背後に木があり,その上には家族がいるとことを模式図として表している。

よくみると、こんなに大勢の家族が乗っており、枝によって乗っている家族の数も違うのに、枝は折れず幹も傾かず、バランスが取れている

2人一緒に腕を組んでいる人もいれば、一人の人もいたり、また隣り合う家族の距離も違う

患者それぞれに、背後にある家族の木は異なることを認識し、患者背景を探ることが重要である。

 

家族ライフスタイル

・個人が年齢とともに成長・発達するように,家族も一定のステージを踏んで発達していくものである。

・各ステージには共通した発達課題があり,それをいかにして乗り越えるかがその家族にとって大きな課題である。

・こうした課題に取り組む中で生じる様々なストレスが、健康問題と関係しあうことも多く、これを念頭に置いて診療にあたることで、社会背景の把握、さらには健康問題の解決に役立つとする考え方である。

・家族ライフサイクルの各段階の分け方は諸説あって決まったものはないが、おおよその流れをつかんでおく必要がある。

 

家族の発達段階 家族レベルの課題と変化 個人レベルの課題と変化
第1段階:結婚前の成人期 

家からの巣立ちと家族の基盤作り

原家族からの自己分化 同性、異性との親密な関係

職業選択とコミットメント

経済的自立

第2段階:新婚夫婦の時期 

二つの異なる家族システムの結合

夫婦間の相互適応と相互信頼の確立

葛藤解決のスキルの獲得

夫婦間の心の絆と実家との結びつきとのバランス

親族との関係の再編成

友人関係の再編成

仕事と家庭のバランス

第3段階:乳幼児を育てる時期

幸せとストレスの狭間

夫婦間の調整(父親、母親としての

役割の取得、家事と子育ての分担)

祖父母役割の取得

世代間境界の確立

人間としての自分の親を見つめ直す

子供の課題

 基本的信頼感の確立

 自律性の確立

親の課題

 自己の養育能力を育てる

 自己の被養育体験と向き合う

第4段階:学童期の子供を育てる時期

生活の広がりと境界の維持

家族メンバーの個性化

社会(学校、地域)との交流

適切な家族外境界の維持

世代間境界の維持

子供の課題

  勤勉性の獲得

  集団生活への適応と友人と の仲間関係

親の課題

  子供の教育への関与

  子供の心身の健康な発達の促進

第5段階:思春期・青年期の子供を育てる

健康な家族でも揺れる時期

子供の自立を促進し、一方で子供も 依存を受け止める、柔軟な家族境界の確立

祖父母を世話する方向への変化

夫婦関係の問い直しと親としての協力関係の維持

子供の課題

 第二次性徴

 進路選択、職業選択

 アイデンティティーの確立

親の課題

 中年期の危機(肉体的衰え、     職業上の問題への焦点、アイデンティティーの確認)

 自己の青年期の問い直し

第6段階:子供の巣立ちとそれに続く時期

岐路に立つ家族

夫婦システムの再編成

成長した子供と大人の対等な関係への変化(子供離れに伴う喪失感への対応)

父母(祖父母)の老化や死への対処

子供世代(第一段階)

親世代

 老後への準備

 

 

まとめ

・時には、治療は薬ではなく、家族関係の修復であったり、家族間の役割の調整が必要になることがある。

・家族がどのように影響し、またどのような手助けを提供してくれるかを考え、必要なら家族カンファレンスを招集して、家族ぐるみで解決策を一緒に考えたりすることも家庭医療の役割の一つである。

・家族ライフサイクルに目を向けることで病気をより良く理解できるだけでなく、問題を解決するための糸口が見つかることがある。

 

家族志向のプライマリ・ケア

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