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振戦

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振戦の定義

相補的に機能する拮抗筋同士の律動的かつ振動性の不随意運動。典型的には手,頭部,顔面,声帯,体幹,または下肢に生じる。

診断は臨床的に行う。

治療法は原因と病型によって異なるが,具体的には誘因の回避(生理的振戦),プロプラノロールまたはプリミドン(本態性振戦),理学療法(小脳振戦),レボドパ(パーキンソン振戦)のほか,ときに脳深部刺激術または視床切除(生活に支障を来す薬剤抵抗性の振戦)も用いられる

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振戦の種類

振戦は「安静時振戦」「姿勢時振戦」「動作時振戦」「企図振戦」の大きく4つに分類される.

① 安静時(静止時)振戦

・罹患肢の随意収縮が全くない安静時に見られる振戦。

・一般的に,動作によって減弱する

・逆に,暗算負荷等の精神的緊張や対側上肢の随意運動、歩行により振戦は増強する

・振幅は微細なものから大きいものまでさまざまである.

・代表的疾患はParkinson病(Parkinson’s disease:PD) であり、“薬をまるめるように” みえる
pill-rolling tremorを呈することもある.

 

 

② 動作時(運動時)振戦

・随意運動の開始直後から生じる不規則な振戦で、動作終了により消失する。

・例えば,指鼻試験を行うと、軌道を修正するように動揺するが、指が鼻に到達すると振戦は止まる。

時に小脳疾患や脳血管障害等でみられる。

・小脳失調に起因する測定障害でみられる終末時の揺れ(dysmetria)とは区別される。

③ 企図振戦

・目標を目指した(goal-directed)動作で目標に近づくほど振戦が増大するもの。

・目標に達した後もその姿勢を保つ限り,振戦は持続する。

・振幅はやや粗大で不規則である.振戦周期は5 Hz以下が多い。

小脳病変で生じる場合が多いが,企図振戦の程度と小脳失調の程度は並行しない。

 

⑤ 姿勢時振戦

・一肢を固定した肢位で重力に抗して保持しているとき(例,腕を伸ばした状態を保持するとき)に最大となる

・5~8Hzの振動数で生じる。

・姿勢時振戦はときに特定の姿勢や作業によって修正されるが,それによって原因が示されることがある。例えば,ジストニアは振戦の引き金になることがある(ジストニア振戦)。

 

 

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振戦の原因疾患

 

① 生理的振戦

・神経系の病気がなくても、寒い時、緊張した時、ストレス時などに出現する振戦

 

② 本態性振戦

・安静時には手のふるえがないのが特徴で、上肢挙上等、姿勢をとった時にだけふるえが生じる。

・手や指の症状が最も多いが、頭や足・顔面・声などにも起こる。

・症状は、書字や食事、飲水時にふるえが強くなるのが特徴で、日常生活に支障を来たすことが多い.

例)新聞を読むとき、箸を持つとき、コップを持つとき、字を書くとき、緊張すると声が震えたり、頭が横や縦に揺れたりする

・一方で、完全に力を抜いている状態では震えを生じない。

・振幅は,少し早めの6~10 Hzという振戦で,通常両側性であるということが特徴的である.

・日常診療で目にすることの多い不随意運動の1つで,有病率は意外と多く約2.5~10%で,年齢に伴って増加する.

・50~70代に多く,加齢性の関与も指摘されている.

・発症年齢としては,ピークが20代と60代のだいたい2回あり,個人差は比較的大きい.

・軽い小脳症状が合併する場合もある.

・画像検査では,頭部MR,CT(computed tomography)で異常所見が出ないのが本態性振戦の特徴。

・老化の関与が大きいと思われるが,現在のところ原因は不明である.

・ただし,遺伝的な関与が多く,家族内発症を多く認める(家族性振戦)

・飲酒で改善することがある

 

検査・診断:
・多くの場合、診察で本態性振戦を診断することが可能。

甲状腺機能亢進症によって振戦が出ている場合があるので、血液検査で甲状腺ホルモンを測定する

てんかんの可能性が否定できない場合は脳波検査を行う。

また、パーキンソン病やパーキンソン症候群が疑われる場合は、頭部MRIや各種の核医学検査を実施する。

治療:
・治療しなくても急に悪くなることはないので、治療するかどうかは、「症状に対してどの程度困っているのか」が判断材料になる。

・日常生活に支障を来していない、困っていない場合であれば急いで治療しなくても良い。

・治療薬としては、交感神経の働きを抑え、震えを弱めるベータ遮断薬(アロチノロールのみ保険適用)が最も一般的。

・ベータ遮断薬で効果が得られない場合や、喘息などでベータ遮断薬を服用できない患者には、抗不安薬や抗てんかん薬が処方されることもある。

・このほか、ボツリヌス毒素注射という手段もある(保険適用外)。

・薬物治療で効果がない場合は脳の外科的療法が検討される(脳深部刺激療法、視床の一部を凝固、ガンマ線や集束超音波で視床の一部を破壊など)

予防/治療後の注意:

・腕や脚を不自然な姿勢のままにすること、カフェインの摂取など生理的な震えを悪化させる要因は、症状を顕著にするのでできるだけ控える

・ストレスや疲労も症状を強めるため、十分な睡眠と休養をとり、リラックスを心がける。

・震えを必要以上に気にしすぎず、症状を隠そうとしないことも大切。家族など周囲の人も患者の震えを細かく指摘しないようにしたい。

・飲酒によって症状が軽くなるケースは多いが、お酒で震えを抑える習慣がつくとアルコール中毒になる恐れがあるので、症状を改善するための飲酒は避ける。

・これらのことに気をつけ、病気と上手に付き合っていくことで、症状を和らげることもできる

 

③ Parkinson病の振戦

・Parkinson病の振戦は4~6 Hzで,通常は左右差があり、安静時に出現する

・pill-rolling tremor(薬丸め運動)ともいわれ,いかにも親指で薬を丸めているような振戦が特徴である.

・安静にしているときに片側だけ手がふるえているのが見られたら,Parkinson病の振戦という診
断に直結する。

・さらに,姿勢をとったら消失することが典型的な症例である

④ 薬剤性振戦

・向精神薬(抗精神病薬,抗うつ薬等),特に多いものとしてスルピリド(ドグマチール®)、テオフィリン,β作動薬,コルチコステロイド,バルプロ酸など

・原因と思われる薬剤を1種類だけ中止し,症状が改善することが確認できた場合,薬剤性の振戦と診断。

 

⑤ Basedow病,甲状腺機能亢進症

・安静時には認めないが,姿勢時に細かい振戦が出現する.

・本態性振戦の鑑別として,T3,T4,TSH等を必ず検査で確認する.

 

⑥ 振戦せん妄

・アルコールの離脱症状のひとつで、著明な自律神経機能亢進や幻覚などの症状がみられる。

・長期間の飲酒歴のある重度のアルコール依存症者が、飲酒を中断または減量した際に生じる。

・多くは大量のアルコール摂取を中止または減量してから2~4日目頃に出現し、通常3~4日で回復しますが、個人差が大きく、長引くこともあります。

・主な症状としては「頻脈や発熱」「発汗などの著明な自律神経機能亢進」「全身性の粗大な振戦」「意識変容」「精神運動興奮」「失見当識」「幻覚」などが挙げられます。

 

 

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