「せん妄」の定義
・脳の器質的な脆弱性(加齢性変化、脳梗塞、認知症など)に、脱水や感染症、薬物などの負荷が加わり、脳機能が低下した状態(意識障害)。
症状
・幻覚(幻視)
・妄想
・精神運動興奮
・注意障害
原因
直接原因
・脱水
・感染
・薬剤(オピオイド、ベンゾジアゼピン系、ステロイド、H2ブロッカー、頻尿治療薬(抗コリン薬))
間接原因
・痛み
・身体的苦痛
・強制的な臥床
・睡眠リズム障害
せん妄ハイリスク患者の不眠に対する眠剤処方
・就寝前ではなく夕食後に投与
・トラゾドン(レスリン®、デジレル®)がfirst choice
トラゾドン(レスリン®、デジレル®)
・鎮静効果は弱い。「ゴソゴソレベル」の不眠に有効
・筋弛緩作用が少なく、安全
・抗コリン作用が少なく、特に注意点なし
・ベルソムラ、ロゼレムとの併用も可
・使用法
25㎎錠 1-6錠/日
屯用:「30分毎、合計3錠まで。深夜2時まで使用可」
レンボレキサント(デエビゴ®)
① 5㎎
② 2.5㎎
③ 2.5㎎
それぞれ30分以上あけて
せん妄治療薬
・過活動型せん妄で、内服可能かつ糖尿病がなければセロクエル®(クエチアピン)がfirst choice。またはリスパダール
・内服困難な場合はハロペリドール(セレネース注)またはコントミン®
・ハロペリドールは鎮静効果が決して強くないため、効果不十分の場合はフルニトラゼパム(サイレース®)やヒドロキシジン(アタラックスP®)を用いる
セロクエル(クエチアピン)
・first choice
・鎮静作用強い(リスパダールより強い)
・半減期短い(翌日への持ち越しが少ない)
・幻覚、妄想への効果が弱い
・糖尿病には禁忌(糖尿病がある場合はリスペリドンを使用すること)
・
・使用法
25㎎錠、1時間あけて、合計4回まで
(1日の最大量は100㎎を目安)
リスペリドン
・鎮静作用はやや弱い(セロクエルより弱い)
・催眠効果もあまり期待できない
・幻覚、妄想への効果が強い
・腎機能低下で翌日持ち越しあり
・パーキンソン症候群、嚥下機能障害(誤嚥)の危険性
使用法
0.5~1㎎、1時間空けて
1日最大2㎎まで
ハロペリドール
・鎮静作用普通
・幻覚、妄想への効果あり
・禁忌:パーキンソン病、レビー小体型認知症、重症心不全患者
・鎮静効果は強いものではない
・静注、または筋注
(静注の方がパーキンソニズムなどの副作用が少なく、速効性がある)
・不穏が強く速効性が求められる場合は、ワンショット静注も可
例)
1A+生食20ml IV
1A+生食100ml点滴
・朝まで寝てほしいといった持続性を期待する場合は、時間をかけて点滴
例)1A+生食100ml点滴:2時間かけて点滴静注
フルニトラゼパム(サイレース®)
・鎮静効果強い
・呼吸抑制あり(→呼吸状態が悪いときは、代わりにアタラックスPを使用)
・ハロペリドールも無効の場合
・サイレース(2㎎/A)0.5~1A+生食100mL
入眠したら中止、覚醒したら再開
呼吸抑制をきたすことがあるため、アネキセートや気道確保の準備をしておく
内科救急診療指針2022
一般社団法人 日本内科学会専門医制度審議会 救急委員会
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