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化学物質のリスクアセスメント支援ツール(コントロールバンディング、CREATE-SIMPLE)

化学物質のリスクアセスメント支援ツール

職場のあんぜんサイト:化学物質:化学物質のリスクアセスメント実施支援

 

(厚生労働省版)コントロール・バンディング

・コントロール・バンディングとは、化学物質のリスクを判定するに当たって、有害性の程度やばく露量を具体的な数値によってではなく、ある程度の幅(バンド)で判断しようというものである。いわゆる「マトリクス法」がその最も単純化されたものである。

・我が国では英国の安全衛生庁(HSE)が作成した、HSE COSHH essentialsに基づいて開発された「厚生労働省方式コントロール・バンディング」がよく用いられる。

・化学物質の「有害性情報」「取扱い物質の揮発性・飛散性」「取扱量」から簡単にリスクの見積もりが可能である。

・これは、とくに化学物質の有害性についての専門的な知識がなくても使用することが可能で、コンピュータを使用して入力するシステムも開発されている。

・このシステムの利点として、①コストが低く、②容易に実施でき、③実際に作業を開始する前でもリスクを判定できるなどの利点もある。

・反面、簡易なシステムであるため、必ずしも正確なリスクが判定できるわけではないということを認識しておく必要がある。

・実際よりも過剰にリスクを評価してしまう傾向がある

 

 

 

CREATE-SIMPLE

CREATE-SIMPLE(職場の安全サイト)

クリエイト・シンプルを用いた化学物質のリスクアセスメントマ二ュアル ver.3.0対応(2024年2月)

 

CREATE-SIMPLEとは:

・CREATE-SIMPLE(Chemical Risk Easy Assessment Tool, Edited for Service Industry and MultiPLE workplaces;クリエイト・シンプル)は、サービス業などを含め、あらゆる業種にむけた簡単な化学物質リスクアセスメントツールです。

・性状(液体、固体、気体)、含有率、取扱量  、スプレー作業の有無、塗布面積、換気状況、作業時間、 作業頻度 、皮膚への接触面積 、手袋の着用、手袋の教育訓練、取扱温度、などの詳細な情報を入力することで、より詳細なリスクアセスメントが可能である。

・有害性の程度(「ばく露限界値」または「管理目標濃度」)と化学物質の取扱い条件等から推定したばく露の程度(推定ばく露濃度)を比較して、リスクを判定します。

・吸入による有害性リスクだけではなく、経皮吸収による有害性リスクや危険性についてもリスクの見積もりが可能。

・各パラメータを操作することで「何をどの程度変えればどの程度リスクが減るのか」が分かる。

 

 

クリエイト・シンプルの入力方法

STEP1対象製品の基本情報

・リスクアセスメント対象

「吸入」「経皮吸収」「危険性(爆発・火災等)」のうち判定したいものを選択

・性状

「液体」「粉体」「気体」かた選択

・成分数

 

 

STEP2取扱い物質に関する情報を入力

CAS番号がわかっている場合は「CAS RN」の欄に入力し「CAS RNで検索」をクリックすると物質名などが自動入力されます。

CAS番号がわからないときは、「物質一覧から選択」をクリックすると、フォームが出るので物質名打ち込みます。

リスクアセスメント義務になっている物質については上記のように自動入力されますが、それ以外の物質はGHS分類などを手動で入力する必要があります。

 

STEP3物質情報、作業条件等の入力

Q1~Q15までの質問に答えます。

このうち、Q1~7は吸入に関する質問、Q8~10は皮膚吸収に関する質問、Q11~15は危険性(爆発・火災等)に関する質問です。

 

Q1「製品の取扱量はどのくらいですか。」

⇒ 1回あたり(連続する作業の場合は1日あたり)の製品の取扱量を入力しましょう(大量、中量、少量、微量、極微量)
Q2「スプレー作業など空気中に飛散しやすい作業を行っていますか。」
Q3「化学物質を塗布する合計面積は1m2以上ですか。」(はい/いいえ)
Q4「作業場の換気状況はどのくらいですか。」
Q5「1日あたりの化学物質の作業時間(ばく露時間)はどのくらいですか。」
Q6「化学物質の取り扱い頻度はどのくらいでうか。」(週1回以上/週1回未満)
Q7「作業内容のばく露濃度の変動の大きさはどのくらいですか。」

 

Q8「化学物質が皮膚に接触する面積はどれぐらいですか。」
Q9「取り扱う化学物質に適した手袋を着用していますか。」
Q10「手袋の適正な使用方法に関する教育は行っていますか。」
Q11「化学物質の取扱温度はどのくらいですか。」
Q12「着火源を取り除く対策は講じていますか。」
Q13「爆発性雰囲気形成防止対策を実施していますか。」
Q14「近傍で有機物や金属の取扱いがありますか。」
Q15「取扱物質が空気又は水に接触する可能性がありますか。」

 

STEP4リスクの判定

リスクはⅠ~Ⅳの4段階で判定されます。数字が大きいほど高いリスクを表します。

※吸入(8時間)は曝露限界値の1/2を基準として、Ⅱ-AとⅡ-Bに区分けされます。濃度基準値が設定されている物質を屋内で取り扱う場合、吸入(8時間)がⅡ-Bであれば確認測定等が必要です。
確認測定:曝露が濃度基準値以下であることを確認するための実測体(2024年4月から義務化)
濃度基準値:厚生労働大臣が定める曝露濃度の基準

 

 

有害性のリスク判定基準

・クリエイトシンプルは、推定したばく露濃度と化学物質ごとの管理目標濃度を比較することで有害性のリスク判定しています。
・推定にあたっては、まず「揮発性・飛散レベル」や「取扱量」から「初期ばく露濃度範囲」を決定します。

・そこに化学物質の「含有率」、空気中に飛散しやすい作業かどうかなどの「作業内容」、「換気条件」、「作業時間」、「作業頻度」などの要素ごとの補正係数を掛け、「労働者の推定ばく露濃度範囲」を決定する。

・「労働者の推定ばく露濃度範囲」に防毒マスクや防じんマスクなど「呼吸保護具の有無」による補正係数を掛けて、「労働者のマスクの内側の推定ばく露濃度範囲」を決定する。

 

 

「実施レポートに出力」をクリックすると実施レポートを出力します。

推定曝露濃度に大きな影響を与える保護具の着用は、実施レポートで情報を入力します。リスク低減対策の検討の項目では、下記の図ように簡単にリスクを減らす方法を検討できます。

 

 

 

クリエイト・シンプルによる「吸入ばく露」のリスクの見積りの方法:

 

 

 

1 ばく露限界(ばく露限界値、または管理目標濃度)の決定:

 

※ ばく露限界値:

① 厚生労働大臣が定める濃度基準値がある場合は濃度基準値

② 濃度基準値がなければ、日本産業衛生学会の許容濃度やACGIHのTLV-TWA(時間加重平均値ばく露限界値) などを用いる。

※ 管理目標濃度:

濃度基準値も許容濃度もない場合は、GHS分類の有害性区分に対応する管理目標濃度を用いる

 

2 推定ばく露濃度の算出:
・揮発性・飛散性及び取扱量から初期ばく露濃度範囲を算定する。

・次に、含有量、作業内容、換気条件、作業時間・頻度、呼吸用保護具の種類と有無によって補正する。

 

3 「ばく露限界」と「推定ばく露濃度」の比較によるリスク判定:

・リスクはⅠ~Ⅳの4段階で判定されます。数字が大きいほど高いリスクを表します。

・「吸入(8時間)」はばく露限界の1/2を基準として、2分の1以下の「Ⅱ-A」と、2分の1を超える「Ⅱ-B」に区分する。

・リスクレベルⅡ-Bは、ばく露限界の1/2を超えると評価された場合を表しており、リスクレベルⅡ-B以上のリスクレベルの場合には「確認測定」等が必要となる。

 

注意点

・何らかの理由によりばく露が大きくなるような作業については、リスクを過小に見積る可能性がある。
・危険性については、プロセスについては対象外としており、化学物質が潜在的に有する危険性に気づくことを主目的にしているため、プロセスで用いる場合などは、労働安全生成総合研究所が作成した「安衛研 リスクアセスメント等実施支援ツール」などをご利用ください。

 

CREATE-SIMPLEの流れ

 

 

結果の評価

・CREATE-SIMPLEでは、有害性の程度(ばく露限界値または管理目標濃度)とばく露の程度(推定ばく露濃度)を比較して、リスクを判定します。

・クリエイトシンプルで算出された「推定ばく露濃度」が、「濃度基準値の2分の1」を超えると評価された場合は、個人ばく露測定等により、ばく露が濃度基準値以下であることを確認 (確認測定) する必要があります (令和6年4月から義務化)

 

確認測定

確認測定とは:

・数理モデルによる解析(クリエイトシンプル)を含めた適切な方法により、事業場のリスクアセスメント対象物に対してリスクアセスメントを実施し、その結果、労働者の推定ばく露濃度八時間濃度基準値の2分の1を超えた場合に、労働者のばく露濃度を確認するための測定(確認測定)を行う必要があります。

・確認測定は、労働者の呼吸域に当該物質を捕集するためのサンプラーを取り付けて個人ばく露測定を行います

・確認測定の結果、労働者の呼吸域における物質の濃度が、濃度基準値を超えている作業場については、少なくとも六か月に一回、継続的な確認測定の実施が必要です

・確認測定の結果、労働者の呼吸域における物質の濃度が、濃度基準値の2分の1程度を上回り、濃度基準値を超えない作業場については、一定の頻度で確認測定を実施することが望ましいとされています

 

 

コントロールバンディングとCREATE-SIMPLEの違い

・コントロールバンディングとCREATE-SIMPLEはともに、「職場のあんぜんサイト」で提供されている代表的な化学物質のリスクアセスメント支援ツールです。

・これらは労働者の化学物質へのばく露濃度等を測定しなくても使用できるという点では共通点がありますが、明確に異なる方法です。

・「職場のあんぜんサイト」で提供されているリスクアセスメント支援ツールのうち、有害性に関しては「コントロール・バンディング」が最も簡易なツールとして位置づけられ、簡易なツールであるほど安全側の評価、つまりリスクが高く評価される傾向にあります。

・「コントロールバンディング」は、化学物質の有害性やばく露の可能性についてリスクレベルを決定し、あらかじめ決められた各リスクレベルの対処方法を実施していきます。リスクレベルに応じて一般的な対策がシートとして示されますが、有害性のみを対象としたツールであり、危険性に関するリスクを見積もることはできないことに注意が必要です。

・「CREATE SIMPLE」は、使用する化学物質の情報、作業の種類、使用量、作業条件などからリスクを推定する方法で、有害性の程度はばく露限界値を採用しています。詳細に言うと作業者のばく露濃度は、物理的特性や取扱量だけではなく、含有率や換気状況、作業頻度なども考慮して推定されるのです。この方法は中小企業などがリスク評価を迅速に行いたい場合に適しています。

 

 

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