「職場における 労働者が安全に働くために新たな化学物質規制が導入されます」(厚生労働省)
職場における 労働者が安全に働くために新たな化学物質規制が導入されます
001093845
「化学物質の自律的な管理」への方向
化学物質規制の見直しについて(職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会報告書のポイント)
趣旨・ 目的
現在、国内で輸入、製造、使用されている化学物質は数万種類に上るが、その中には危険性や有害性が不明な物質も少なくない。
こうした中で、化学物質による労働災害(がんなどの遅発性疾病は除く。)は年間450件程度で推移し、法令による規制の対象となっていない物質を原因とするものは約8割を占める状況にある。
また、オルト-トルイジンによる膀胱がん事案、MOCAによる膀胱がん事案、
有機粉じんによる肺疾患の発生など、化学物質等による重大な職業性疾病も後を絶たない状況にある。
これらを踏まえ、令和4年5月31日に公布された厚生労働省令の改正により、現行の特化則等による個別具体的規制を中心とする規制から自律的な管理を基軸とした規制へと大きく方向転換が行われた。
001093845
「自律的な化学物質管理」が推進される理由
・化学物質による労働災害の約8割が法令による規制対象外の物質によるものである。
・新たに規制対象にしても、他の規制対象外の物質に切り替えるなど「規制のいたちごっこ」が起きている
・この背景から、「法令遵守ありき」ではなく、「自律的管理」を行う必要が生じた。
本改正の主なポイント
リスクアセスメント対象物質に関する事業者の義務
・ばく露される程度を最小限にしなければならない
(代替物の利用、密閉、局所排気装置など)
・濃度基準値設定物質(厚労大臣が定める物質)は濃度基準値以下にする
・ばく露を最小限にする措置内容をばく露状況の記録を3年間保存する(がん原生物質は30年)
濃度基準値とは
・「濃度基準値」とは、労働者が化学物質にばく露する程度の上限値を定めたもので、厚生労働大臣が定めています。労働者の健康障害を防止することを目的としており、一定程度のばく露に抑えることで健康障害を生ずるおそれがない物として定められています。
・「濃度基準値」のうち、8時間のばく露における物の平均の濃度(8時間時間加重平均値)は、「8時間濃度基準値」を超えてはならず、また、濃度が最も高くなると思われる15分間のばく露における物の平均の濃度(15分間時間加重平均値)は、 「短時間濃度基準値」を超えてはならないとされる。
・「濃度基準値」が定められた物質は、C,D法または個人ばく露測定に基づく自主管理が必要である。
ラベル表示、SDS等による通知義務対象物質の追加
・GHS分類で危険性、有害性が確認されたすべての物質がリスクアセスメントの対象物質に追加される。
「化学物質管理者」の選任の義務
・「労働安全衛生規則等の一部を改正する省令(令和4年厚生労働省令第91号〔令和4年5月31日公布〕)」において、リスクアセスメント対象物の製造、取扱いまたは譲渡提供を行う事業場ごとに、化学物質管理者を選任することが義務付けられた。
化学物質管理者の職務
① SDSの確認
② 化学物質のリスクアセスメント
③ ばく露防止対策の実施
④ 自律的管理のための記録作成
⑤ 化学物質の自律的管理の周知教育
⑥ SDSの作成
⑦ 労災が発生した時の対応
選任資格・講習
・化学物質管理者は、いわゆる国家資格ではなく、その選任要件は「化学物質の管理に係る技術的事項(後述「化学物質管理者の役割・職務」)を担当するために必要な能力を有すると認められる者」であり、原則として選任は、事業者の裁量によります。
・ただし、リスクアセスメント対象物を製造する事業場においては形式的要件として、選任すべき事由が発生した日から14日以内に、厚生労働大臣が定める化学物質の管理に関する講習を修了した者等のうちから選任しなければなりません(改正安衛則第12条の5第3項。一部表現を修正)。
・つまり、リスクアセスメント対象物を製造する事業場においては、化学物質管理者に選任される者は厚生労働大臣が示す内容(同項第2号イ)に従った専門的講習を受けていなければならないとされており、当該講習は各種団体が開催しています。
・
化学物質管理者になるための講習が「化学物質管理者講習」です。化学物質管理者講習は「製造事業場向け」と「取扱事業場向け」の2種類の講習があります。
そのうち製造事業場向けの化学物質管理者講習は、化学物質の製造を行う事業場向けの講習です。講習は大きく分けて学科と実習の2つのカリキュラムがあります。
、製造事業場の講習は学科9時間+実習3時間の合計12時間受講する必要があります。
取扱事業場向けの化学物質管理者講習というもう一つの講習があります。
この講習は別名「化学物質管理者講習に準ずる講習」とも呼ばれることがあります。これは化学物質の製造には関わず、取扱のみを行う事業場向けの講習となっています。
講習の科目名は製造事業場向けの講習と変わりませんが、それぞれの科目の講習時間が違います。講習時間は同様か短くなっており、学科の合計の講習時間は6時間となっています。
またもう一つの大きな違いとしては、取扱事業場向けの講習には実習科目はありません。つまり学科科目だけで講習が終了します。
事業場によって受けるべき講習は違うので、よく確認をしてから受講する講習を決めましょう。
保護具着用管理責任者の義務化
・保護具を使用させる作業場では保護具着用管理責任者を選任しなければならない
コメント