疾患
・中小動脈に発症する原因不明の壊死性動脈炎。
・不明熱の原因となることがある
・男女比は3:1と男性に多く、40~60歳の中高年(平均年齢55歳)に好発します。
・血管壁が炎症により肥厚して内腔が狭窄すると臓器の虚血・梗塞(腎梗塞, 心筋梗塞, 皮膚潰瘍など)をきたします。
・また、血管の破裂による皮膚や臓器の出血(紫斑, 消化管出血, 脳出血など)や、血管壁の炎症から組織・臓器に炎症(心膜炎, 胸膜炎, 筋炎, 関節炎, 多発性単神経炎など)を起こします。
症状・検査
・特に全身症状(38℃以上の発熱、体重減少、倦怠感、多関節痛、筋肉痛など)、末梢神経障害、皮膚症状、腎障害の頻度が高い。
・損傷をうけた血管の支配臓器(腎臓、消化管、脳神経、心臓、皮膚、関節、筋肉など)に特異的な臨床症状を呈する。
・精巣痛、精巣腫脹を約20%に認める。「発熱+(圧痛を伴う)精巣痛」ではPANを早期する
・PAN患者の60%に皮膚症状(結節性紅斑、紫斑、皮下結節、皮膚潰瘍、網状皮斑など)を認める。
・皮膚症状では径1㎝程までの浸潤を触れる紅斑や結節、リベドが多く、時に潰瘍化を認める。
・患者の半数は腎臓が障害されて腎不全や高血圧をきたす(ただし毛細血管に炎症が及ばないため、糸球体腎炎は通常起こらない)。
・末梢神経障害(手足のしびれ、知覚鈍麻や知覚過敏)は患者の80%程度に出現し、中枢神経障害(脳梗塞や脳出血)は5~10%におこります。
・消化器症状(消化管出血・穿孔、腸梗塞)を20%に認め、心症状(心筋梗塞、心膜炎、心不全)や胸膜炎をきたすこともあります。
・PANに特異的な検査所見はありませんが、炎症を反映して血清CRP増加、赤血球沈降速度の亢進、白血球増加、血小板増加などを認めます。
診断
・PANはANCAなどの自己抗体が検出されず、特異的な検査マーカーもないので, 臨床症状と身体所見を参考に診断を進めます。
・確定診断には、症状のある部位(皮膚、神経、腎臓など)からの生検が必要で、中・小動脈にフィブリノイド壊死性血管炎を認めます。
・生検に適した部位がない場合は画像検査が診断の助けになり、血管造影で腹部大動脈分枝(特に腎内小動脈)の多発小動脈瘤や狭窄・閉塞を認めます。
・CTやMRIでは臓器梗塞、動脈壁の肥厚や不整、動脈の閉塞、動脈瘤を確認します。
治療
副腎皮質ステロイドで治療しますが、重要な臓器障害がある場合は免疫抑制薬を併用します。
ステロイド治療は多くのPAN患者に有効で約半数が寛解となりますが、残りの半数はステロイド単独で寛解に至らず、免疫抑制薬のシクロホスファミドを使用します。
生命予後に関わるような臓器障害がある重症例はステロイドパルス療法を行います。
その他の免疫抑制薬としてアザチオプリンやメトトレキサートも使用されます.
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