過重労働により引き起こされる健康障害の発症に関連する職場における業務上の負荷要因
脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準について
・労働時間
・不規則な勤務
・拘束時間の長い勤務
・出張の多い勤務
・交代制勤務・深夜勤務
・作業環境(温熱環境・騒音・時差等)
・精神的緊張を伴う業務
長時間労働者に対する医師による面接指導
・対象は「時間外・休日労働時間が1か月当たり80時間を超え、かつ、疲労の蓄積が認められる者。」
・医師は、面接指導を行うに当たっては、「当該労働者の勤務の状況」「当該労働者の疲労の蓄積の状況」「当該労働者の心身の状況」について確認を行うものとする。
・事業者は、面接指導の結果に基づき、労働者の健康を保持するために必要な措置について、原則として、面接指導が行われた後、遅滞なく、医師の意見を聴かなければならない。
・事業者は、面接指導の結果に基づき、実施年月日、労働者の氏名、面接指導を行った 医師の氏名、労働者の心身の状況及び面接指導の結果に基づく労働者の健康を保持するために必要な措置についての 医師の意見を記載した記録を作成して、これを5年間保存しなければならない。
記録すべき事項
・実施年月日
・労働者の氏名
・面接指導を行った医師の氏名
・労働者の疲労の蓄積の状況
・労働者の心身の状況及び面接指導の緒果に基づく労働者の健康を保持するために必要な措置についての医師の意見
1か月当たりの時間外・休日労働が 80 時間を超える場合に労働者の生活サイクルへの影響
・1月当たりの時間外労働時間が80時間を超えると、1日当たりの平均で睡眠時間が6時間よりも短くなると言われている。
・そして長期間にわたる1日4~6時間以下の睡眠不足状態では、睡眠不足が脳・ 心臓疾患の有病率や 死亡率を高めるとする報告がある。
時間外・休日労働時間の算出方法
「時間外・休日労働時間」(休憩時間を除き1週間当たりの労働時間が40時間を超えた場合に、その超えた時間をいいます)が1ヶ月当たり100時間を超えて疲労の蓄積が認められる従業員が労働安全衛生法第66条の8に基づく面接指導の対象となります。
ただし、医師が不要と認めたときは毎月行う必要はなく、連続する2ヶ月に一度は省略することが可能です。さらに、時間外・休日労働時間が1ヶ月当たり80時間を超えて、疲労の蓄積が認められる従業員や健康上の不安を有している従業員のほか、事業場で定めた基準に該当する従業員についても、面接指導等必要な措置の対象とするように配慮することが必要です。
この事業場における基準については衛生委員会等で審議し事業者が決定しますが、少なくとも時間外・休日労働時間が「1ヶ月当たり100時間を超える従業員」と「2ヶ月ないし6ヶ月の平均で1ヶ月当たり80時間を超える従業員」については該当する全従業員を対象に面接指導を行うようにしましょう。
また、これほどの長時間労働者がいなくても、時間外・休日労働時間が1ヶ月当たり45時間を超える従業員がいる場合には、従業員の健康確保の観点から必要な措置を行うことが望まれます。
時間外・休日労働時間の算出方法
時間外・休日労働時間は、以下の計算式で算出します。
「時間外・休日労働時間数」
=1ヶ月の総労働時間数-(計算期間(1ヶ月間)の総暦日数/7)×40
【1ヶ月の総労働時間数=労働時間数+延長時間数+休日労働時間数】
産業医に健康相談や面談等がしやすい環境作成
・労働者に対して、「事業場における産業医の業務の具体的な内容」、「産業医に対する健康相談の申出の方法」及び「産業医による労働者の心身の状態に関する情報の取扱いの方法」を周知しなければならない。
・また、時間外・休日労働時間が1月当たり80時間を超えた労働者に対しては、速やかに超えた時間に関する情報を通知しなければならない。このとき、面接指導の実施方法・時期等の案内を併せて行うことが望まれる。
医師による面接指導
医師による面接指導
・事業者は、労働者の週40時間を超える労働が1月当たり80時間を超え、かつ、疲労の蓄積が認められるときは、労働者の申出を受けて、医師による面接指導を行わなければなりません(労働安全衛生法第66条の8)
本人の申出の有無にかかわらず医師による面接指導の実施が義務づけられている場合:
下記の労働者については、本人の申出の有無にかかわらず実施が義務づけられている(ただし、事業者の指定した医師が行う面接指導を受けることを希望しない場合であって、他の医師の行う法定の面接指導と同等のものを受け、その結果を証明する書面を事業者に提出したときを除く)
1)研究開発業務に従事する労働者であって、休憩時間を除き一週間当たり 40 時間を超えて労働させた労働時間が1月当たり 100 時間を超えた場合
2)高度プロフェッショナル制度対象労働者で、1週間当たり40時間を超えた時間が、 1月あたり100時間を超えた場合
面接指導の記録
・安衛則第52条の6により、事業者は、面接指導の結果に基づき、実施年月日、労働者の氏名、面接指導を行った医師の氏名、労働者の疲労の蓄積の状況、労働者の心身の状況及び面接指導の結果に基づく労働者の健康を保持するために必要な措置についての医師の意見を記載した記録を作成して、これを5年間保存しなければならない。
面接指導を行う医師
・事業場に選任されている産業医が実施することが望まれます。
・産業医が選任されていない事業場においては、地域産業保健センターの登録医、健康診断機関(労働衛生機関)の医師、労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識を有する医師が実施しましょう。
長時間労働者面接指導の流れ
厚生労働省パンフレット「医師による長時間労働面接指導実施マニュアル」
事業者の実施事項
① 労働時間に関する情報の産業医への提供
② 面接指導対象者の選定
③ 面接指導実施の労働者への通知
④ 事前問診票の面接指導対象者への配布
⑤ 面接指導対象者に関する情報の産業医への提供
⑥ 医師からの意見に基づく面接指導後の事後措置の実施
⑦ 実施した事後措置の記録・保存
⑧ 事後措置に関する情報の産業医への提供
面接指導の対象となる労働者の実施事項
① 事業者から配布された事前問診票への記入
② 面接指導の受診
③ 面接指導で指導を受けた事項を実践
産業医の実施事項
① 事業者から受けた労働時間に関する情報に基づき、長時間労働者の把握
② 事業者から受けた面接指導対象者に関する情報に基づき、面接指導前の健康リスク評価
③ 面接指導の実施(対象者への個人指導)
④ 面接内容の記録・保存
⑤ 事後措置に関する意見の事業者への提供
⑥ 事業者が行った事後措置の確認
面接
・長時間労働者への面接指導チェックリスト
・長時間労働者への面接指導マニュアルーチェックリストの使い方ー
労働者の状況を把握するために参考となる自記式質問票
労働者の疲労蓄積度自己診断チェックリスト(2023 年改正版)
労働者の疲労蓄積度自己診断チェックリスト(2023 年改正版)
職業性ストレス簡易調査票
日本産業衛生学会の自覚症しらべ
気分プロフィール検査(Profile of Mood States:POMS)
・気分や感情を主観的側面から評価するために1971年に開発された、65項目から構成される自己記入式の評価尺度である
・POMSは、緊張、抑うつ、怒り、活気、疲労、混乱の6種の因子が測定できる心理テストである。
面接指導の事後措置
事業者の事後措置
衛生委員会に報告するときの留意点
衛生委員会の関与について
・衛生委員会で面接指導の対象者数及び実施者数、事後措置に関する医師の意見等の報告を行うことで、事業場における長時間労働の状況を把握でき、対策に結びつけることができます。
・ただし、個人が特定されないよう注意することが必要であり、どのような情報を共有するか事前に衛生委員会で決めておくとよいでしょう。
・ 面接指導対象者が多い職場や事業場が明らかとなり(継続して面接指導対象者が多い部署など)、組織的な対応や職場環境改善が必要と考えられる場合、必要に応じて衛生委員会で改善策を審議することが大切です。
・衛生委員会で審議された後は、管理監督者へ通知し、職場環境改善や面接指導対象者への事後措置へつなげることが必要です。
衛生委員会等での調査審議事項
過重労働による健康障害防止対策について、衛生委員会等での調査審議事項
① 長時間にわたる労働による労働者の健康障書の防止対策の実施計画の策定等に関すること
② 事業場で定める必要な措置に係る基準の策定に関すること
③ 面接指導等の実施方法及び実施体制に関すること
④ 労働者の申出が適切に行われるための環境整備に関すること
⑤ 申出を行ったことにより当該労働者に対して不利益な取扱いが行われることがないようにするための対策に関すること
⑥ 事業場における長時間労働による健康障害の防止対策の労働者への周知に関すること
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