疾患
・ビタミンD欠乏や作用不全、低リン血症によって発症した骨石灰化が障害され、類骨が増加する疾患。
・典型的な病態は乳幼児の骨格異常で、小児期の病態を「くる病(rickets)」、骨端線閉鎖が完了した後の病態を「骨軟化症(osteomalacia)」と呼び区別する(語源はギリシャ語の「背骨」を意味する rhakhis に由来する)。
・骨端軟骨部では石灰化されない類骨が横方向に拡大するため、骨X線検査でも特徴のある変化が見られる。
分類
ビタミンD欠乏性クル病
・最も頻度が高く、近年増加している。
・ビタミンDは紫外線より皮膚で活性化されるか、食品から摂取される。これらのビタミンDは肝臓や腎臓で水酸化され、活性型となり、腎臓や骨、腸管に働いて血液中のカルシウムを上昇させる
原因:
①日光浴不足(日光によって皮膚でビタミンDが合成される)
②母乳栄養かつ母親が潜在的なビタミンD欠乏(母乳中のビタミンD含有量は少なく、現在アメリカではすべての母乳栄養児にビタミンD補給を推奨している)
③アレルギー疾患などでの極端な食事制限
④その他(未熟児、消化管切除後の吸収障害、肝胆道疾患など)
単独、複合してビタミンD欠乏が起こることによる。
ビタミンD依存性クル病
Ⅰ型:1α水酸化酵素遺伝子異常によって活性型ビタミンD合成障害
Ⅱ型:ビタミンD受容体の遺伝子異常によって活性型ビタミンDの作用不全
いずれもビタミンD作用不足により血中カルシウムが低下し、2次性副甲状腺機能亢進によりリンも低下するためクル病となります。
この二つはいずれも常染色体劣性遺伝をとるまれな疾患です。
低リン血性(ビタミンD抵抗性)クル病
・遺伝性クル病のうちもっとも頻度が高い疾患
・X連鎖性の優性遺伝を示し、男女ともに発症
・腎尿細管におけるリン再吸収低下による低リン血症、ビタミンD代謝障害、クル病、骨軟化症、成長障害を来す
症状
骨、歯の異常:
・歩き始めると重力のために変形しO脚となる。
・肋骨の一部が数珠のようになる(肋骨念珠)。
・骨X線検査で骨端線拡大、骨端部片縁の不整(fraying)、カップのように見える杯状陥凹(cupping)が見られる
・大泉門の閉鎖遅延、胸郭変形、歯牙萌出遅延やエナメル質の形成不全
・頭蓋骨がぺこぺこへこむ頭蓋癆(とうがいろう)
骨外症状:
・けいれん、テタニー
・まれに心筋症
治療
・生理量の活性型ビタミンDを投与
副甲状腺機能亢進症
原因:原発性副甲状腺機能亢進症は小児においてはまれで、副甲状腺の腺種などによって副甲状腺ホルモン(PTH)が過剰分泌される。
症状:高カルシウム血症により不機嫌、筋力低下、嘔吐、多尿、多飲等が見られる。
骨はカルシウムが遊離されるため、クル病を思わせる変化が見られ、遊離カルシウムによって腎結石等を認めることもある。治療は副甲状腺を唖全摘する。
副甲状腺ホルモン(PTH)はビタミンD等とともにカルシウムとリンの代謝を調節しており、骨からはカルシウム、リンを動員し、尿細管でカルシウムを再吸収する一方リンは再吸収を抑制し、血漿中では高カルシウム、低リンとなる。
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