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せん妄(予防ケアと発症時のケア)

  1. 「せん妄」の定義
  2. 症状
    1. せん妄を疑わせる身体症状
  3. せん妄の病型分類
        1. 過活動型せん妄
        2. 低活動型せん妄
        3. 混合型せん妄
  4. 原因
    1. ① 直接原因
    2. ② 間接原因
    3. 覚え方
  5. せん妄ハイリスク患者の不眠に対する眠剤処方
    1. ① トラゾドン(レスリン®、デジレル®)
        1. 使用法
    2. ② レンボレキサント(デエビゴ®)
    3. ③ ヒドロキシジン(アタラックスP®)
  6. せん妄治療薬
    1. ① セロクエル(クエチアピン)
    2. ② リスペリドン
  7. 内服困難時のせん妄対応
    1. ヒドロキシジン(アタラックスP®)(内服困難時)
    2. ハロペリドール(内服困難時)
        1. 投与法
    3. ④ フルニトラゼパム(サイレース®)
        1. 投与法:
  8. 参考:不穏時・次なる一手
        1. オランザピン(ジプレキサ®)
        2. ヒルナミン®10%細粒
        3. バルプロ酸ナトリウム(デパケン®)
        4. ヒベルナ散®10%
  9. T病院薬事委員会「不穏時薬剤選択フロー」
    1. 内服可能な場合
        1. 糖尿病なし:クエチアピン または オランザピン
        2. 糖尿病あり:リスペリドン または ペロスピロン(ルーラン®)
    2. 内服不能な場合:ハロペリドール
    3. 上記にても無効かつ入院加療上、鎮静が不可欠な場合
        1. 投与法:
    4. その他:抑肝散、レキサルティー、ロナセンテープ
        1. 抑肝散
        2. レキサルティーOD(ブレクスピプラゾール)
        3. ロナセンテープ(20mg、30mg、40mg)
  10. 参考:抗精神病薬の等価換算表(経口薬)
  11. 予防ケア
    1. 1)病床環境の調整
    2. 2)入院中の対人交流
    3. 3)病気や治療の必要性の認識や心理状態
  12. せん妄発症時のケア
    1. 1)せん妄発症につながる身体因子の調整:
    2. 2)せん妄発症を導く日常生活因子に対処し,日常生活を整える

「せん妄」の定義

・脳の器質的な脆弱性(加齢性変化、脳梗塞、認知症など)に、脱水や感染症、薬物などの負荷が加わり、脳機能が低下した状態(意識障害)。

・せん妄とは、身体的要因や薬剤要因によって急性に出現する意識、注意、認知の障害であり、その症状には変動性がある

 

症状

・注意力障害(97~100%)

・睡眠覚醒サイクルの障害(92~97%)

・幻覚(幻視)

・妄想

・精神運動興奮

・注意障害

 

せん妄を疑わせる身体症状

・floccilation

中空を掴もうとするような動作

・carphology

寝具を目的なく掴もうとする動作

 

 

せん妄の病型分類

過活動型せん妄

・そわそわして落ち着きがない

・興奮している

 

低活動型せん妄

・静かで無関心

・会話が少ない

 

混合型せん妄

・両者の性質を持ち、1日の中で混合あり

 

 

原因

① 直接原因

・脱水

・感染

・薬剤(オピオイド、ベンゾジアゼピン系、ステロイド、H2ブロッカー、頻尿治療薬(抗コリン薬))

 

② 間接原因

・痛み

・身体的苦痛

・強制的な臥床

・睡眠リズム障害

 

覚え方

「あいうえお かく」

あ:アルコール

い:いたみ

う:うんち

え:栄養(脱水、不必要な絶飲食指示、低血糖)

お:おしっこ(尿閉→間欠的導尿を考慮)

か:環境(暑い、寒い、明るい、暗い、モニター、静脈ルート、五感(眼鏡、補聴器、入歯)や時間の環境を整える(時計、カレンダー))、感染

く:くすり

 

せん妄ハイリスク患者の不眠に対する眠剤処方

トラゾドン(レスリン®、デジレル®)がfirst choice

・ベンゾジアゼピン系はせん妄を惹起しうるため投与しないこと。

・せん妄の症状は夜間に多く、精神症状が著しくなると内服がうまくできなかったり、必要とする薬剤量が過量となり翌朝まで効果を持ち越す可能性があるため、内服の時間は眠前より早めの夕食後の方が望ましい

 

① トラゾドン(レスリン®、デジレル®)

・抗うつ薬。催眠効果に加えてせん妄抑制効果もある

・鎮静効果は弱い。「ゴソゴソレベル」の不眠に有効

・筋弛緩作用が少なく、安全

・抗コリン作用が少なく、特に注意点なし

・作用時間は約8時間で使いやすい

・ベルソムラ、ロゼレムとの併用も可

ワルファリンとの併用は使用注意(ワルファリンの効果指標である. PT-INR が短縮するとの報告があるため添付文書上、併用注意とされている)

 

使用法

トラゾドン(デジレル®、レスリン®)25㎎錠

定時:1錠 夕食後(または眠前)

頓用:30分毎、合計2回まで(定時と頓用の合計で3錠まで)

深夜2時まで使用可

 

② レンボレキサント(デエビゴ®)

不眠時頓用

指示例1)

デエビゴ(5mg) 1日2回まで

 

例2)

デエビゴ

① 5㎎

② 2.5㎎

③ 2.5㎎

それぞれ30分以上あけて

 

③ ヒドロキシジン(アタラックスP®)

・比較的安全

・不穏時25mg、1日3回まで

 

 

せん妄治療薬

・過活動型せん妄で、内服可能かつ糖尿病がなければクエチアピンセロクエル®)がfirst choice

・またはリスパダール

抗精神病薬の併用(2剤以上)は避ける

・内服困難な場合はハロペリドール(セレネース注)またはクロルプロマジン(コントミン®)

・ハロペリドールは鎮静効果が決して強くないため、効果不十分の場合はフルニトラゼパム(サイレース®)やヒドロキシジン(アタラックスP®)を用いる

 

① セロクエル(クエチアピン)

first choice

・非定型抗精神病薬

・MARTA(multi-acting receptor targeted antipsychotics)の一つ

鎮静作用強い(リスパダールより強い)

・作用時間が約8時間と短い(翌日への持ち越しが少ない

・昼夜のリズムを保つのに役立つ

・錐体外路症状が少ない

・幻覚、妄想への効果が弱い

糖尿病には禁忌(糖尿病がある場合はリスペリドンを使用すること)

使用法

クエチアピン(セロクエル®)25㎎錠

0.5~1錠 夕食後

1時間あけて、合計1日3錠まで

(1日の最大量は75mg(3錠))

 

② リスペリドン

・鎮静作用はやや弱い(セロクエルより弱い)

・催眠効果もあまり期待できない

・幻覚、妄想への効果が強い

・腎機能低下で翌日持ち越しあり

・パーキンソン症候群、嚥下機能障害(誤嚥)の危険性

使用法

0.5~1㎎ 夕食後1時間空けて

1日最大2㎎まで(夕と眠前に分けても可)

 

 

内服困難時のせん妄対応

ヒドロキシジン(アタラックスP®)(内服困難時)

・比較的安全

・筋注可

・1回25mg 静注まはた筋注

・1日あたり25~150mgで使用

 

ハロペリドール(内服困難時)

・内服困難時

・鎮静作用普通

・幻覚、妄想への効果あり

・禁忌:パーキンソン病、レビー小体型認知症、重症心不全患者

・鎮静効果は強いものではない

・静注、または筋注も可

(静注の方がパーキンソニズムなどの副作用が少なく、速効性がある)

・不穏が強く速効性が求められる場合は、ワンショット静注も可

 

投与法

ハロペリドール(セレネース®)(5mg/1mL)

0.5A+生食20mL IV

0.5A+生食100mL 点滴

 

 

④ フルニトラゼパム(サイレース®)

・鎮静効果強い

・呼吸抑制あり(→呼吸状態が悪いときは、代わりにアタラックスPを使用)

・ハロペリドールが無効の場合

・呼吸抑制をきたすことがあるため、アネキセートや気道確保の準備をしておく

投与法:

サイレース(2㎎/A)1A+生食100mL

1時間ペースで点滴静注、うとうとしたら中止、覚醒したら再開

 

 

参考:不穏時・次なる一手

オランザピン(ジプレキサ®)

・非定型抗精神病薬

・MARTA(multi-acting receptor targeted antipsychotics)

※クエチアピンと同じ作用機序

鎮静(催眠)作用がクエチアピンより少し強く、副作用も多め

・クエチアピン同様、糖尿病には禁忌

・半減期が長い(1日1回投与)

・1日1回夕食後、2.5㎎から開始。効果を見ながら最大10㎎まで増量可

 

ヒルナミン®10%細粒

・レボメプロマジン(フェノチアジン系抗精神病薬:定型抗精神病薬)

・鎮静作用強い。少量で睡眠薬としても使用

内服:1日5mg 1日1回

頓用:1回5mg 1日2回まで

 

 

バルプロ酸ナトリウム(デパケン®)

・抗てんかん薬

易怒性、衝動性、攻撃性、脱抑制に対して

・鎮静作用は穏やか

・肝代謝のため、腎機能障害患者にも使用しやすい

肝機能障害、皮膚症状の副作用があり

400mg(高齢者では200mg)~1200mgを1日2~3回に分服

 

ヒベルナ散®10%

・第1世代抗ヒスタミン薬(H1受容体拮抗薬)

・鎮静作用強い(抗アレルギー性疾患にはあまり使用されない)

内服:1回5~25㎎(10%散 0.05g~0.25g) 1日1~3回

 

 

T病院薬事委員会「不穏時薬剤選択フロー」

内服可能な場合

糖尿病なし:クエチアピン または オランザピン

クエチアピン(25mg)

・高齢者は通常25mg/日より開始

・鎮静が強い

・興奮、攻撃性に有効

 

オランザピンOD(10mg)

・クエチアピン同様、糖尿病には禁忌

・鎮静(催眠)作用がクエチアピンより少し強く、副作用も多め

・半減期が長い(1日1回投与)

・高齢者は通常2.5m 1日1回夕食後から開始。効果を見ながら最大10㎎まで増量可

・気分安定効果あり

 

糖尿病あり:リスペリドン または ペロスピロン(ルーラン®)

リスペリドンOD(1mg)、リスペリドン内用液(1mg/1mL)

・抗幻覚作用強い

・非定型抗精神薬の中では錐体外路症状を来しやすい

・高齢者は通常1回あたり0.5mgから開始1日最大2㎎まで(夕と眠前に分けても可)

 

ペロスピロン(ルーラン®)(4mg)

・セロトニンとドーパミンを遮断するSDA(セロトニン・ドーパミン拮抗薬)に分類される非定型抗精神病薬

・効果、副作用ともmild

・高齢者には通常1回あたり4mgから開始

 

内服不能な場合:ハロペリドール

ハロペリドール

処方例)

① ハロペリドール(5mg/1mL)0.5A+生食50mL

30分以上あけて、1日2回まで

② 朝まで寝てほしいといった持続性を期待する場合は、時間をかけて点滴

ハロペリドール1A+生食100ml点滴:2時間かけて点滴静注

 

・鎮静作用普通

・幻覚、妄想への効果あり

・禁忌:パーキンソン病、レビー小体型認知症、重症心不全患者

・鎮静効果は強いものではない

・静注、または筋注も可能

(静注の方がパーキンソニズムなどの副作用が少なく、速効性がある)

 

上記にても無効かつ入院加療上、鎮静が不可欠な場合

フルニトラゼパム(サイレース®)

・鎮静効果強い

・呼吸抑制あり(→呼吸状態が悪いときは、代わりにアタラックスPを使用)

・ハロペリドールも無効の場合

・呼吸抑制をきたすことがあるため、フルマゼニル(ベンゾジアゼピン受容体拮抗薬)やアネキセート、気道確保の準備をしておく

 

投与法:

サイレース(2㎎/A)0.5A+生食100mL

1時間ペースで点滴静注、入眠したら中止、覚醒したら再開

 

その他:抑肝散、レキサルティー、ロナセンテープ

抑肝散

・易怒性に対し有効

・1回2.5mg、1日1~3回

 

レキサルティーOD(ブレクスピプラゾール)

・ブレクスピプラゾール

・Serotonin-Dopamine Activity Modulator(SDAM)

・「ドパミンD2受容体とセロトニン5HT1A受容体に対するパーシャルアゴニスト」、「セロトニン5HT2A受容体に対するアンタゴニスト」として作用する。

・ドパミンD2受容体とセロトニン5HT1A受容体に対するパーシャルアゴニストによってドパミンを正常な状態に近づけることが可能となりますので、陽性・陰性症状を共に改善することができます。また、セロトニン5HT2A受容体遮断作用を示すため、陰性症状のさらなる改善も期待できます。

・錐体外路障害も発現しにくいとされています。

・ドーパミン分泌量を上手く調整する

・効果は強くないが副作用も少ない

1日1回0.5mgより開始、1週間以上あけて、増量、最大1日1mgまで

 

ロナセンテープ(20mg、30mg、40mg)

・セロトニン・ドーパミン遮断薬(SDA)のテープ剤

内服不能な場合に有効

・通常40mg/枚を日1日1回貼付。最大1日80mgまで

 

 

 

参考:抗精神病薬の等価換算表(経口薬)

※リスペリドンを基準に、抗精神薬の等価換算量を示す

(例:リスペリドン1㎎をオランザピンに置き換えるなら、2.5㎎と考える)

・リスペリドン 1mg

・オランザピン 2.5mg

・アリピプラゾール(エビリファイ®) 4mg

・クエチアピン 66mg

・ハロペリドール 2

・レボメプロマジン(ヒルナミン)100

 

 

予防ケア

1)病床環境の調整

①不安を助長しない環境:
光,機械・治療器具・モニターの音,スタッフの話し声などの調整

②なじみ感の感じられる環境:
認知症がベースにある場合は,その人のなじみのあるものを環境に取り入れる.日常使う湯呑み,子どもや孫の写真など,落ち着けるものを用い,安心感につなげる.

③見当識を維持できる環境:
適度な刺激を入れる.時間を意識できるカレンダーや時計を見える位置に置く,適度な数の面会者など,人,場所,時間の見当識を維持できる環境を調整する.日頃老眼鏡や補聴器を使用している人には装着を促す.

④部屋移動:
個室か大部屋かという選択ができるなら,その人の状態に合わせて選択する.

対人交流により不安は助長することも緩和することもある.

人と交流することで緊張が助長するなら個室が適している.

病室移動の回数はできるだけ少なくする.

ナースステーションに近い部屋の位置は,スタッフからすると事故を未然に防ぐという意味で安心できるが,ステーションから発生する夜間の音や他の重症患者の声などにより,患者の睡眠を妨げられることがある.

2)入院中の対人交流

せん妄を発症した患者は,大部屋にいても他の患者とうまく交流できていないことが報告されている.その人に負担のない量に対人交流を調整することが必要である.

適度な時間帯の,適度な回数や長さの家族の面会は,本人の意向に合わせて調整する必要がある.

家族が面会から帰ってしまった後や,夕方以降にせん妄症状の発生が頻発することは経験的に知られているが,夕方以降の静かで孤独な環境下で,話し相手がなく,なかなか寝付けないようならば,就寝までの間,少しでも落ち着けるようコミュニケーションをとることもよ
い.

3)病気や治療の必要性の認識や心理状態

入院や治療の必要性を適切に認識できている患者は,自己コントロール感が高く,せん妄発症につながりにくい.

認識を促すために,以下の点に留意する.

①入院時における不安状態の把握と不安の緩和
入院時における緊張した表情.「何か変」と思える言動には十分に応えておく必要がある.話しやすい状況を提供し,少しでも緊張状態から開放していく

②オリエンテーション,説明
対象の年齢や,入院への準備状態を考慮して,必要なオリエンテーションを進める.理解できる言葉で説明を加えることや,治療行動を導く.

緊急入院は,せん妄発症を起こしやすい.入院への準備状態がない中で,治療がどんどん進められていくように感じやすいので,患者のペースを確認する.

 

せん妄発症時のケア

1)せん妄発症につながる身体因子の調整:

全身状態を整える

身体因子としてあげられるものには,脱水,低酸素状態,肝機能・腎機能障害,電解質バランスの異常,血糖値の異常,服用している薬剤による影響,アルコール離脱などがある

これらの因子に関する検査データや薬剤に注目し,以下のようなケアを取り入れる.
(1)必要水分量を保持し,in-out バランスを保つ.
(2)酸素飽和度,呼吸状態を測定し,適切に保つ.必要な酸素吸入を実施する.
(3)肝機能(GOT,GPT 等),腎機能のデータ(UA等)をチェックし,必要な休息,睡眠,薬剤投与,輸液管理を行う.
(4)電解質バランスをチェックし,必要な休息,睡眠,薬剤投与,輸液管理を行う.
(5)感染症の徴候(体温,CRP 高値)に留意し,必要な薬剤投与,クーリングを行う.発熱の原因が特定できれば対処する.
(6)服用している薬剤のうちせん妄発症につながりやすい薬剤の投与量をチェックし,投与薬剤の効果や副作用をモニターし,随時医師へ必要な報告を行う.(薬剤については別の項を参照)
(7)疼痛コントロールを医師の指示と合わせて進める.身体状態のコントロールでは,原疾患の治療や,医師の指示を基本に置き,医療チーム全体で連携していくことも重要である.

2)せん妄発症を導く日常生活因子に対処し,日常生活を整える

(1)睡眠コントロール
眠剤の服用,主観的な不眠の訴え,昼夜逆転傾向に留意する.

必要な睡眠を得ることは,症状の軽減に直接結びつく.睡眠障害はせん妄の原因でもあり,せん妄の徴候の一つにも含まれる.

昼夜逆転への対処として,適度な刺激を日中に加えることや,日中の睡眠を減らしていくことなどが取り組まれているが,1 日における睡眠時間の総和が維持できないと睡眠パターンが崩れていくことにもなり,無理な日中刺激は悪循環を引き起こすことにもなる.

適度な日中の刺激として,その人が日中に普通に行う日常生活行動を取り入れる.例えば,朝起きて温かいあるいは冷たい水で顔を洗う(温熱刺激,冷感刺激),口を洗い歯磨きをする(顔部分への物理的な刺激)等は,ごく自然な日常生活での物理的な刺激である.

ベッドが窓際にあることや日中の日光浴や散歩は,体内時計をリセットし,生体のリズムを睡眠状態から覚醒状態への切り替え,昼と夜の生体のリズムを整えることにつながる.これは,日中の日光浴によって,夜間のメラトニン分泌が促進されることによる.

午睡は,適度な量であれば身体に休息をもたらし,夜間睡眠に影響を及ぼすことなく日中の眠気を除去することができる.

普段の生活リズムを確認し,できるだけそのパターンを維持すること,夜間の点滴・処置を避けることなども具体策に取り入れる.

(2)排尿排便のコントロール
オムツ使用患者,下痢や便秘の患者にせん妄発症が見られる.

オムツはその人の自己尊重の感覚を低下させ,日常性の刺激を鈍麻させる.そのため,外せるオムツはできるだけ外していくよう勧める.

また,たとえオムツをしていても,尿意や便意を確認して,その身体感覚を活かしてオムツを替える時間を調整していくことで,身体内部からの感覚を活かした覚醒につながる.

尿失禁がある場合,失禁のタイプを区別し,排尿誘導が可能であれば,進める.
排尿排便コントロールがうまくできない理由として,下痢や便秘がある.その場合は,検査データとして電解質バランスの乱れが生じていないか,緩下剤等の使用薬
剤がその人に適しているものであるか,適切な in-out バランスかをモニターしていく.できるだけ通常のその人の排便排尿パターンに戻していくことが必要となる.

普段とは異なる排泄方法を強いられている場合には,排泄方法の変更を苦痛に感じていないか確認し,普段の排泄方法をできるだけ維持できるよう進める.
(3)経口からの栄養摂取をすすめ,摂取量を維持する

治療上必要となる絶飲食は,患者自身が食べられない状態ではなく,治療的に食べてはいけない状態をつくることになるため,空腹感が持続するだけでなく,長期にわたると食べる意欲を減退させることにつながる.

口から食べるという刺激が減ることで,脳への刺激が減り,生活意欲の減退が生じる.また,必要な栄養状態が維持できず,血液中の蛋白質量が減少し,身体組織に必要なタンパク量が維持されない状態となる.

絶飲食の状態とせん妄発症はいくつかの研究で関連があると報告されている.治療的な絶飲食が解除されたときから,経口摂取を勧めること,水分や固形物を患者の嚥下機能に合わせて徐々に進めていくことが必要となる.

(4)呼吸機能の維持:低酸素状態を避ける
血中酸素飽和度の値が低値であることは多くの研究でせん妄状態との関連を認めている.
低酸素状態は,脳に送る血液量を減少させ,意識障害を引き起こす.呼吸器疾患,高齢,手術後間もない患者などでは呼吸状態の管理が必要であり,酸素吸入が必要な状態では,酸素吸入量の管理をし,常に血中酸素飽和度を正常値に維持する.

(5)ルート類の装着,可動制限,活動制限をできるだけ避ける,
ルート類をできるだけ少なくすること,可動制限を守りつつ,動かせる範囲を動かしていくこと,活動制限を可能な限り早期に広げていくことが必要である.

ケアの要点としては,不必要なカテーテル,モニター類の除去,早期離床の促進,身体拘束の回避が挙げられる.

運動量を維持する上では,可動制限をできるだけ早期に解除できることや,治療環境下でできるだけ活動量を増やしていくことも検討する.とくに,日中の適度な活動量を維持,活動と休息のバランスをとることで,適度な体力の回復を促す.

(6)感覚刺激による見当識情報の維持視覚刺激,聴覚刺激を維持する.ことに視覚からの刺
激はせん妄発症との関連が認められている.

例えば刺激として有用なケアには以下のようなことがある.

カレンダー,時計をみえる位置に置く

②日常の会話やケアの中で見当識(日時・場所・人)の話題を盛り込む.

③眼鏡,補聴器などの補助具を普段付けているように装着する.

④不快な照明,騒音を排除する.

⑤テレビ,ラジオなどの情報を流す.

⑥コミュニケーション量の維持のために心地よい会話量を維持する.

⑦コミュニケーションに集中できる環境を整える.

⑧視線,話し方の工夫によって視界に入る位置や目の高さで接触する.

⑨視聴覚障害に応じた方法を取り適切なコミュニケーションをつなげる.書面の活用など.

⑩病室やベッドの位置の変更を最小限にする,馴染みの物を持ち込む.

 

 

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