疾患
・回虫目アニサキス科の線虫・アニサキスが寄生した魚介類を生で食べ、アニサキスが生きたまま人の胃や腸壁に侵入することで発症する急性腹部疾患。
・人への感染源となる魚介類は,我が国の近海で漁獲されるものでも160種を超える.この中でも患者の食歴から,サバ(マサバおよびゴマサバの総称,加工品としての「しめ鯖」を含む)が最も重要な感染源と考えられる.この他,アジ、イワシ、イカ、ヒラメ(ヒラメのカルパッチョ)、カツオ、サンマなども原因となる。
・年間300件ちかい届け出がある
病原体
・アニサキス亜科に属する線虫の総称がアニサキスで,その第3期幼虫が魚介類に寄生し(体長は2~3cm),アニサキス症の病原体となる。
・人体症例から摘出される虫体も多くが第3期幼虫であるが,時に第4期幼虫も検出される.
臨床症状
1) 胃アニサキス症
・魚介類の生食後数時間して,激しい上腹部痛,悪心,嘔吐をもって発症する
・通常、3週間以内に免疫系によって死滅するか、嘔吐などで体外に排出される
2) 腸アニサキス症
・虫体が腸に穿入する腸アニサキス症では,腹痛,悪心,嘔吐、腹膜炎症状などが見られ,時に腸閉塞や腸穿孔を併発する.
・腸閉塞などで手術を受けた例では,摘出部位の病理組織標本に虫体を検索し,原因を確定する.
3) 消化管外アニサキス症
まれに虫体が消化管を穿通して腹腔内へ脱出後,大網,腸間膜,腹壁皮下などに移行し,肉芽腫を形成することもある.虫体寄生部位に応じた症状が現れる.
4)アニサキスアレルギー
・魚介類の生食後に蕁麻疹を主症状とするアニサキスアレルギーを認めることがある.
・更に血圧降下や呼吸不全,意識消失などのアナフィラキシー症状を呈した症例も報告されている
・クローニングを含めたアニサキスアレルゲンの性状解析が進んでいるが,アレルゲンに対するIgE抗体の検出が症例の診断に役立つとされる.
検査
1)胃内視鏡検査
・ゴールドスタンダード
2)エコー(胃、消化管)
・胃アニサキス症の場合は胃粘膜が全周性に強く肥厚する
・食後で胃カメラなどが出来ない場合でもエコー実施可能。また胃カメラでは観察できない小腸のアニサキス症もみることが出来るため非常に有効。
参照(このサイトより引用):https://www.takemura-naika.com/ultrasound/
予防・治療
・海産魚介類の生食を避けること,あるいは加熱後に喫食すること(60℃で10分以上)が,確実な感染予防の方法となる.
・また冷凍処理(-20℃で24時間以上)によりアニサキス幼虫は感染性を失うので,魚を冷凍して解凍後に生食することは感染予防に有効である.
・治療は胃アニサキス症では胃内視鏡検査時に胃粘膜に穿入する虫体を見つけ,これを鉗子で摘出する.
・腸アニサキス症では対症療法が試みられ,場合により外科的処置が施される.なお現在のところ,幼虫に対する効果的な駆虫薬は開発されていない.
食品衛生法での取り扱い
・2012年12月28日の食品衛生法施行規則の一部改正で,アニサキスが食中毒の病因物質の種別として,食中毒事件票に新たに追加された(クドア,サルコシスティス,その他の寄生虫(クリプトスポリジウム等)も同様に種別として追加された)
・従って,アニサキスによる食中毒が疑われる患者を診断した医師は,24時間以内に最寄りの保健所に届け出ることが必要である(食品衛生法第58条・中毒に関する届出).
・医師以外の者からの苦情や報告は,食中毒疑いの事案として保健所が受け付ける.
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