医師による面接指導
法令
【労働安全衛生法】
(心理的な負担の程度を把握するための検査等)
第66条の10
事業者は、ストレスチェックの結果の通知を受けた労働者のうち、心理的な負担の程度が高くストレスチェックを実施した医師等が必要と認めた者であって、面接指導を受けることを希望する旨を申し出た者に対して、医師による面接指導を行わなければならない。
【労働安全衛生規則】
(面接指導の実施方法等)
第52条の16 法第六十六条の十第三項の規定による申出(以下この条及び次条において「申出」という。)は、前条の要件に該当する労働者が検査の結果の通知を受けた後、遅滞なく行うものとする。
2 事業者は、前条の要件に該当する労働者から申出があつたときは、遅滞なく、面接指導を行わなければならない。
面接指導の実施と就業上の措置
ストレスチェック結果で「医師による面接指導が必要」とされた労働者から申出があった場合は、医師に依頼して面接指導を実施する
・申出は、結果が通知されてから1月以内に行う必要があります。
・面接指導は申出があってから1月以内に行う必要があります。
・高ストレス者のうち、実際に医師の面接指導を受けているのは0.6%と低い。
ストレスチェック後の医師による面接指導において確認する事項:
・当該労働者の勤務の状況
・当該労働者の心理的な負担の状況
・当該労働者の心身の状況
面接指導を実施した医師から、就業上の措置の必要性の有無とその内容について、意見を聴き、それを踏まえて、労働時間の短縮など必要な措置を実施する
※ 医師からの意見聴取は、面接指導後1月以内に行う必要があります。
面接指導の結果は事業所で5年間保存
※ 記録を作成・保存してください。以下の内容が含まれていれば、医師からの報告をそのまま保存しても構いません。
① 実施年月日
② 労働者の氏名
③ 面接指導を行った医師の氏名
④ 労働者の勤務の状況、ストレスの状況、その他の心身の状況
⑤ 就業上の措置に関する医師の意見
高ストレス者面接の実際(by指導医Dr.T)
高ストレス者面接の実際:
面接時間
・一人45~60分程度(うち最後の10分は報告書・意見書の作成)
面接の内容
・ストレスチェックの結果から、ストレス要因、ストレス反応(症状)、周囲のサポートの状況などの問題点を把握する
・「構造化面接法」でうつ病の可能性の評価を行う
・傾聴する姿勢は重要
・問題点への対処法について助言する
・セルフケアについては時間不足のため、情報提供のみを行う
セルフケアに対する情報提供
参照サイト:こころもメンテしよう~若年を支えるメンタルヘルスサイト~(厚労省)
書籍:セルフケアの道具箱(伊藤絵美 著、晶文社、1,760円)
報告書・意見書の記載
・記載内容は被面接者の意向を確認し、不利益が生じないよう留意する
構造化面接法によるうつ病の可能性の評価と受診の要否
構造化面接法
高ストレス者については、ストレスチェック調査票上の抑うつ症状に関する質問項目等
の点数が高い場合に、「心理的な負担の状況」の確認において、「構造化面接法」におよる質問を行い、うつ病の可能性の評価を行う。

ストレスチェックの「面接指導結果報告書」「就業上の措置に係る意見書」
長時間労働者、高ストレス者の面接指導に関する報告書・意見書作成マニュアル
「面接指導結果報告書」

就業上の措置に係る意見書

報告書、意見書の記載上の注意
・意見書、報告書は事業所に提出し、健康管理担当者や総務・人事担当者など(事業所によっては直接の上司)の目に触れることを伝える。
・記載する内容については、本人の意向を確認する(書いてほしくないこと、書いてほしいとこを確認する)
・本人に不利益が及ばないような内容・表現を心掛け、了承を得ることが望ましい(特に職場の人間関係など)
・事業所側が意見書の通りに職場改善に取り組んでくれるかどうかはわからないことは伝えておく。
・異動の要望については、深刻なメンタル不調がある場合を除き、直接的な表現で記載することは避ける。
検査結果の集団ごとの分析等
【労働安全衛生規則】
(検査結果の集団ごとの分析等)
第52条の14 事業者は、検査を行つた場合は、当該検査を行つた医師等に、当該検査の結果を当該事業場の当該部署に所属する労働者の集団その他の一定規模の集団ごとに集計させ、その結果について分析させるよう努めなければならない。
→集団分析は努力義務
職場分析と職場環境の改善 (努力義務)
ストレスチェックの実施者に、ストレスチェック結果を一定規模の集団(部、課、グループなど)ごとに集計・分析してもらい、その結果を提供してもらう
※ 集団ごとに、質問票の項目ごとの平均値などを求めて、比較するなどの方法で、どの集団が、どういったストレスの状況なのかを調べましょう。
注意! 集団規模が 10 人未満の場合は、個人特定されるおそれがあるので、全員の同意がない限り、結果の提供を受けてはいけません。
原則 10 人以上の集団を集計の対象としましょう。
ストレスチェック結果を一定規模の集団ごとに集計・分析し、その結果を勘案して、必要に応じて、当該集団の労働者の実情を考慮して、当該集団の労働者の心理的な負担を軽減するための適切な措置を講じるようにする。このほか、集団ごとの集計・分析の結果は、当該集団の管理者等に不利益が生じないようその取扱いに留意しつつ、管理監督者向け研修の実施又は衛生委員会等における職場環境の改善方法の検討等に活用する。
集計・分析の単位が少人数である場合には、当該集団の個々の労働者が特定され、当該労働者個人のストレスチェック結果を把握することが可能となるおそれがあることから、集計・分析の単位が10 人を下回る場合には、集団ごとの集計・分析を実施した実施者は、集計・分析の対象となる全ての労働者の同意を取得しない限り、事業者に集計・分析の結果を提供してはならない。
なお、個々の労働者が特定されるおそれのない方法で集計・分析を実施した場合はこの限りでないが、集計・分析の手法及び対象とする集団の規模について、あらかじめ衛生委員会等で調査審議を行わせる必要がある。
集計・分析結果を踏まえて、職場環境の改善を行いましょう。
ストレスチェック制度に関する労働者の健康情報の保護
ストレスチェック制度に関する労働者の健康情報の保護:
(1)労働者の同意の取得方法
ストレスチェック結果が当該労働者に知らされていない時点でストレスチェック結果の事業者への提供についての労働者の同意を取得することは不適当であるため、事業者は、ストレスチェックの実施前又は実施時に労働者の同意を取得してはならないこととし、同意を取得する場合は次に掲げるいずれかの方法によらなければならないものとする。ただし、事業者は、労働者に対して同意を強要する行為又は強要しているとみなされるような行為を行ってはならないことに留意すること。
① ストレスチェックを受けた労働者に対して当該ストレスチェックの結果を通知した後に、事業者、実施者又はその他の実施事務従事者が、ストレスチェックを受けた労働者に対して、個別に同意の有無を確認する方法。
② ストレスチェックを受けた労働者に対して当該ストレスチェックの結果を通知した後に、実施者又はその他の実施事務従事者が、高ストレス者として選定され、面接指導を受ける必要があると実施者が認めた労働者に対して、当該労働者が面接指導の対象であることを他の労働者に把握されないような方法で、個別に同意の有無を確認する方法。
なお、ストレスチェックを受けた労働者が、事業者に対して面接指導の申出を行った場合には、その申出をもってストレスチェック結果の事業者への提供に同意がなされたものとみなして差し支えない。
(2)事業者に提供する情報の範囲
事業者へのストレスチェック結果の提供について労働者の同意が得られた場合には、実施者は、事業者に対して当該労働者に通知する情報と同じ範囲内の情報についてストレスチェック結果を提供することができるものとする。
なお、衛生委員会等で調査審議した上で、当該事業場における事業者へのストレスチェック結果の提供方法として、ストレスチェック結果そのものではなく、当該労働者が高ストレス者として選定され、面接指導を受ける必要があると実施者が認めた旨の情報のみを事業者に提供する方法も考えられる。ただし、この方法による場合も、実施者が事業者に当該情報を提供するに当たっては、上記の①又は②のいずれかの方法により、労働者の同意を取得しなければならないことに留意する。
(3)外部機関との情報共有
事業者が外部機関にストレスチェックの実施の全部を委託する場合(当該事業場の産業医等が共同実施者とならない場合に限る。)には、当該外部機関の実施者及びその他の実施事務従事者以外の者は、当該労働者の同意なく、ストレスチェック結果を把握してはならない。なお、当該外部機関の実施者が、ストレスチェック結果を委託元の事業者の事業場の産業医等に限定して提供することも考えられるが、この場合にも、緊急に対応を要する場合等特別の事情がない限り、当該労働者の同意を取得しなければならない。
(4)事業場におけるストレスチェック結果の共有範囲の制限
事業者は、本人の同意により事業者に提供されたストレスチェック結果を、当該労働者の健康確保のための就業上の措置に必要な範囲を超えて、当該労働者の上司又は同僚等に共有してはならない。
ストレスチェックで「高ストレス者」と判定された労働者が面接指導を希望しない場合の対応
ストレスチェックで「高ストレス者」と判定された労働者が面接指導を希望しない場合の対応:
・面接指導を希望しない高ストレス者に対しても何らかのフォローアップを行うことが望ましい。また、事業者側としては、高ストレス者が面接指導を希望しやすい環境・体制を作ることが大切です。
・メンタルヘルスサポートの案内:
産業医やカウンセラー、EAP(Employee Assistance Program:従業員支援プログラム)など、利用可能な相談窓口を案内する。
・社内の産業医に相談することをためらっている場合は、社外の相談機関やサービスの利用を提案する
労働者数 50 人未満の事業場における留意事項
労働者数 50 人未満の事業場における留意事項(ストレスチェック指針より抜粋)
常時使用する労働者数が 50 人未満の小規模事業場においては、当分の間、ストレスチェックの実施は努力義務とされている。これらの小規模事業場では、産業医及び衛生管理者の選任並びに衛生委員会等の設置が義務付けられていないため、ストレスチェック及び面接指導を実施する場合は、産業保健スタッフが事業場内で確保できないことも考えられることから、産業保健総合支援センターの地域窓口(地域産業保健センター)等を活用して取り組むことができる。
<解説>
労働者数 50 人未満の事業場における留意事項(ストレスチェック指針):
・国においては、独立行政法人労働者健康安全機構及び医師会と協力し、都道府県ごとに産業保健総合支援センターを設置するとともに、地域ごとに地域窓口(地域産業保健センター)を設置し、小規模事業場に対して産業保健のサービスを無料で提供しています。
・特に、ストレスチェック制度に関しては、労働者数が 50 人未満の小規模事業場が制度を導入する場合に、産業保健総合支援センターが個別に事業場を訪問して支援するほか、小規模事業場がストレスチェック結果を踏まえた面接指導を行う場合に、地域産業保健センターにその実施を依頼することができます。
・さらに、労働者健康安全機構では、小規模事業場がストレスチェックや面接指導を行う場合に、その費用の一部を助成する助成金制度(団体経由産業保健活動推進助成金)も実施しております。

メンタルヘルス対策に予算を割けない事業所に対する助言
・地域産業保健センターによる小規模事業場に対する産業保健のサービスの無料提供を利用する。
・労働者健康安全機構による小規模事業場がストレスチェックや面接指導を行う場合に、その費用の一部を助成する助成金制度(団体経由産業保健活動推進助成金)の活用
・小規模事業場産業医活動助成金
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