ペニシリン系とセフェム系の違い
・ペニシリン系とセフェム系は、両者とも「β-ラクタム系抗生物質」に分類される。
・作用部位はともに細胞壁にあるペニシリン結合タンパク質(PBP)
・両者の主な違いは、β-ラクタム環に付いている環の数による。ペニシリン系はβ-ラクタム環に5員環が付いており、セフェム系は6員環が付いている。
参照(このサイトより引用):https://kusuri-jouhou.com/microbe/kokin.html
・セフェム系は「腸球菌」「リステリア(グラム陽性桿菌)」のPBPに対して親和性が低いため、腸球菌やリステリアによる感染症の治療薬としては使用できない
世代による分類
・一般に世代の低いものほどグラム陽性菌に効き、世代が高いものほどグラム陰性菌に効く。
・一方、グラム陽性菌のカバーは世代が高くなるにつれて低下する。
・第4世代は第1世代と第3世代の長所を併せ持つ
① 第1世代セフェム系
セファゾリン(CEZ):セファメジン®
・スペクトラムは「アミノペニシリン+MSSA」
特徴
・黄色ブドウ球菌(MSSA)用と覚える。
・スペクトラムは「アミノペニシリン+MSSA」
・腸球菌はカバーしない
・適応:皮膚軟部組織感染症、化膿性関節炎、術後感染など
・感受性のあるPEKによる腎盂腎炎にも有効(耐性化していたら第2世代のセフォチアムを使用)
② 第2世代 ※実際にはあまり使用することはない
・セフメタゾール(CMZ)とセフォチアム(CTM)の二つ
セフメタゾール(CMZ):セフメタゾン®
・セファマイシン系抗菌薬
・嫌気性菌のBacteroidesのカバーあり。
・そのため、軽症~中等症の腹腔内感染症に有効
・ESBL産生菌(大腸菌、クレブシエラ、セラチア、エンテロバクターなどの腸内細菌群にみられることがある)に感受性を示すことがある
・MSSA+グラム陰性桿菌+嫌気性菌
例)1~2g 8時間毎
セフォチアム(CTM):パンスポリン®
・MSSA+グラム陰性菌(セファゾリン耐性PEK)
・適応:肺炎や尿路感染症など(セファゾリンでPEKが耐性の場合。しかしほとんど使用しない)
③ 第3世代
・セフトリアキソン(CTRX)、セフォタキシム(CTX)、セフタジジム(CAZ)の3つ
・髄液移行性あり
・セフタジジム(CAZ)は緑膿菌カバーあり(他はなし)
・嫌気性菌のカバーは弱い
①セフトリアキソン(CTRX):ロセフィン®
・第1,2世代に「インフルエンザ桿菌、モラキセラ(上下気道感染症:肺炎、中耳炎)カバー」が加わる
・グラム陽性菌+グラム陰性菌(CTMよりグラム陰性菌に重きを置いている)
・SPACEはカバーしない(医療関連感染症の起因菌:セラチア、緑膿菌(Pseudomonas)、アシネトバクター、シトロバクター、エンテロバクター)」
・嫌気性菌もカバーしない(横隔膜上の嫌気性菌には効くこともある)
・BLNARをカバーする
・肝代謝のため、腎機能による用量調整が不要
・半減期が長く、1日1~2回投与可能
・セフトリアキソンは嫌気性菌にカバーが及ばない
→腹腔内感染症にCTRXは不向き
・アンピシリン・スルバクタムはGNRのカバーが弱い(大腸菌カバー率は60-70%程度)
→尿路感染症、腹腔内感染症にABPC/SBTは不向き
・誤嚥性肺炎にはABPC/SBTがよさそう(CTRXとあまり優劣なし)
②セフォタキシム(CTX):セフォタックス®
・スペクトラムはCTXRと同様
・腎代謝
③セフタジジム(CAZ):モダシン®
・緑膿菌に効果あり
・しかしグラム陽性菌にはほとんど効果なし(CFPMとの違い)
・現在、CAZの使用用途はほぼ緑膿菌に限られており、これは第4世代で代替できるので、必須の抗菌薬ではない。
④ 第4世代
・セフェピム(CMX)
+「SPACE(セラチア、緑膿菌(Pseudomonas)、アシネトバクター、シトロバクター、エンテロバクター)」
・「SPACE」は院内感染で問題となるGNRの総称(医療関連感染症の起因菌)。
・緑膿菌カバーが必要な場合が適応
・セフェピム(CFPM:マキシピーム®)のみ理解しておけばよい
・グラム陽性菌+グラム陰性菌(緑膿菌を含む)+嫌気性菌
(PIPC/TAZと同等のスペクトラムを持つ)
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