疾患
・病原性レプトスピラ(Leptospira interogansなど)により発熱その他多彩な症状を示す急性熱性細菌感染症である
・人獣共通感染症の一つ
・レプトスピラは現在、種名のついた13種とまだ分類が確定していない4つの遺伝種からなり、さらに免疫学的性状により250以上の血清型に分類される
・げっ歯類を中心とした多くの哺乳動物(ネズミ、イヌ、タヌキ、シカ、イノシシ等)の腎臓に定着し、尿中に排泄される。
・人は保菌動物の尿で汚染された水や土壌から経皮的あるいは経口的に感染する。
・特に東南アジア、中南米などの亜熱帯、熱帯地方で多い
・日本では沖縄で多く報告されている
・またわが国のレプトスピラ症は「秋病(あきやみ):秋に発生することが多いことから」「用水病」「七日熱」などの風土病として古くから知られている。
・野外活動歴の聴取が重要
・近年は都会のネズミを媒体にした「都市型レプトスピラ」や東南アジアからの輸入感染症も増えてきている
・重症型(黄疸、出血、肝臓・腎臓障害、全身出血、DICを合併)は「Weil病(ワイル病)」の別名で呼ばれる。
・感染症法の四類感染症に指定されている(診断した医師は直ちに最寄りの保健所への届出が義務付けられている)
疫学
・全世界で発生しており、とくに熱帯・亜熱帯地域に多くみられる。
・近年、ブラジル、ニカラグアなどの中南米、フィリピン、タイなどの東南アジアなどで流行がみられている。
・わが国でも、1970 年代前半までは年間50 名以上の死亡例が報告されていましたが、衛生環境の向上などにより患者数(死亡者数)は著しく減少しつつある。
・しかし、現在でも沖縄などで散発的な発生が認められています。
・沖縄県が全国の報告件数の約半数を占める
・死亡率17%
感染経路
・「農作業」「下水作業」「河川でのレジャーや作業」の病歴を確認
・レプトスピラは水の中でも生存し,健康な皮膚から侵入する.
・感染動物の腎臓内のレプトスピラ → 尿に排泄 → 河川,湿地,沼,湖などの地表水中に生存 → 動物や人が汚染水に触れることで経皮的、経口的に感染する.
・保菌動物:
各種動物が感染して保菌動物となる.特に重要なのは感染後レプトスピラを生涯排泄し続けるげっ歯類,年単位で排泄する犬,月単位で排泄する豚,約1ヶ月間排泄する牛などである.
・感染経路
レプトスピラ菌は保菌しているネズミ、イヌ、家畜などの哺乳動物の尿から排泄され、土壌や水を数週間にわたり汚染します。
このため、土壌、水、保菌動物と接触した際に、皮膚や粘膜から体内に菌が侵入することで感染します。
・大雨や洪水のあとは、汚染水がうっ滞したり、ネズミと接近する機会が増えるなどにより、感染の危険性が高くなるため注意が必要。
・まれですが、尿などを介したヒトからヒトへの感染の報告もあります。
症状
・潜伏期:通常は5~14日(まれに~3週間)
・レプトスピラ症は、感冒様症状(発熱、頭痛、筋肉痛)のみで軽快する軽症型から、黄疸、肝機能障害、出血、腎機能障害を伴う重症型まで多彩な症状を示します。
・潜伏期を経て、発熱、悪寒、頭痛、筋肉痛、腹痛、結膜充血、リンパ節腫脹、筋把握痛などが生じ、発症後4~6日目頃に黄疸が出現したり、出血傾向も強まります。
・特異的な症状がないため初期診断は困難。
・重症例(ワイル病)では「黄疸」「出血」「蛋白尿」の3主徴が認められ、発熱、肺胞出血やARDS、無菌性髄膜炎、DICを起こすこともある
・軽症型の予後は一般的に良好ですが、ワイル病では早期に適切な治療がなされない場合、死亡率は20~30%です。
検査所見、診断
・肝細胞障害による胆汁うっ滞型肝障害パターン
・尿細管間質障害から腎機能障害を認める
・高アミラーゼ血症や急性膵炎を起こすこともある
・臨床症状,病原体の確認(尿の暗視野顕微鏡観察,培養,PCR法),血液生化学検査(血中尿素窒素の上昇),抗体価の上昇を確認
・血液(発熱期),髄液,尿からの病原体分離
・ペア血清を用いた凝集反応による血清診断
・PCR法による遺伝子検査
Weil病(ワイル病)
・レプトスピラ症の重症例
・潜伏期は3〜14日(多くは5〜7日).
・前駆期:多くは突然発病する.全身倦怠感,頭痛,腹痛,食欲不振などを訴える.
・1期(発熱期):発熱期間は5〜10日続き,1〜2病日の体温が最も高く38〜40℃結膜の充血,筋肉の圧痛などが認められる.
・2期(発黄期):発熱が収まった後,第2病週に黄疸が増強し,3〜6週間持続する.また,皮膚の点状出血を始め吐血,血便,血尿,鼻出血などが見られる.
・3期(回復期):第3病週の後半になると黄疸は極期を過ぎ,出血傾向も消失
ワイル病では早期に適切な治療がされない場合,死亡率は20~30%である.
治療
・経口ではアモキシシリン(AMPC:サワシリン®)、ドキシサイクリン
・症状が強い場合はペニシリン、セフトリアキソンの点滴静注
・重症例(ワイル病)では「黄疸」「出血」「蛋白尿」の3主徴が認められ、発熱その他多彩な症状を起こすストレプトマイシンが著効,ゲンタマイシン,ペニシリンGも有効.
予防
ワクチンの接種.保菌動物の尿または汚染された水に直接ふれないようにする.保菌動物であるネズミの駆除.
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