伝染性紅斑(Erythema infectiosum)
・ヒトパルボウイルスB19(human parvovirus B19:PVB19)感染症
・頬に出現する蝶翼状 の紅斑を特徴とし、小児を中心にしてみられる流行性発疹性疾患である。
・両頬がリンゴのよう に赤くなることから、「リンゴ病」と呼ばれることもある。
・年齢分布(5歳毎)では5〜9歳での発生がもっとも多く、ついで0〜4歳が多い。
・成人が罹患した場合、皮疹は非定型的で、しばしば診断が困難となる
・第5類感染症
症状
・感染経路はほとんどが鼻、喉などの気道分泌物による飛沫感染ないし接触感染
・7~11日の潜伏期間の後、頬に境界鮮明な紅い発疹(蝶翼状、リンゴの頬、平手打ち様紅斑)が現れ、 続いて手・足に網目状・レ−ス状・環状などと表現される発疹がみられる。
・胸腹背部 にもこの発疹が出現することがある。
・これらの発疹は1 週間前後で消失するが、なかには長引いたり、一度消 えた発疹が短期間のうちに再び出現することがある。
・頬に発疹が出現す る7〜10日くらい前に、「微熱」や「感冒様症状」などの前駆症状が見られることが多いが、この時期にウイルス血症をおこしており、ウイルスの排泄量ももっとも多くなる。
・発疹が現れたときにはウイルス血症は終息しており、ウイルス の排泄はほとんどなく、感染力はほぼ消失している。
・通常は飛沫または接触感染であるが、ウイルス血症の時期に採 取された輸血用血液による感染もある。
成人におけるパルボウイルスB19感染症の特徴
・小児からの鼻咽腔を介した飛沫感染、または接触感染で感染する(小児と接する機会の多い母親や幼稚園、学校教師、病院職員など)
→「小児との接触歴の確認」が重要。
・1~2週間の潜伏期の後、血中にウイルスが出現し、まず発熱、頭痛、悪寒、筋肉痛などの「インフルエンザ様症状」がみられる。
その7~10日後からIgM抗体の出現とともに皮疹や関節炎がみられる(2峰性の経過)
・成人では関節痛や関節炎などの関節症状が目立つ(小児では関節症状は稀)。
そのため「早期RA」との鑑別を要したり、様々な自己抗体が一過性に陽性となることもあり、
「SLE疑い」と診断されることもある(SLE mimickerとして有名)。
・成人では皮疹は約20%に認める(成人では典型的な皮疹を呈することは少ない)
・関節症状は「急性発症の多関節炎」「左右対称性」が特徴。PIP,MCP関節に多く、次いで膝、手関節、足関節。
・関節炎症状により1〜2日歩行困難になることがあるが、ほとんどは合 併症をお こすことなく数週間以内に自然に回復する。
・妊婦に感染すると約20%で経胎盤感染がおこり、そのうち約10%で流産あるいは死産となる。
・診断はHPV B19 -IgM抗体を測定する
・治療はNSAIDsによる対症療法が基本となる
・一度感染すると終生免疫を獲得するため一般的に再感染を起こすことはない
コメント