- 作業環境測定を行うべき作業所
- ※① 特定粉じん作業が行われる屋内作業場
- ② 暑熱、寒冷又は多湿の屋内作業場で、厚生労働省令で定めるもの
- ③ 著しい騒音を発する屋内作業場で、厚生労働省令に定めるもの
- ④ 坑内の作業場厚生労働省令で定めるもの
- ⑤ 中央管理方式の空気調和設備(空気を浄化し、その温度、湿度及び流量を調節して供給することができる設備をいう。)を設けている建築物の室内で、事務所の用に供されるもの
- ⑥ 放射線業務を行う作業場で、厚生労働省令で定めるもの
- ※⑦ 特定化学物質等(第1類物質または第2類物質)を製造し、または取り扱う屋内作業場
- ※⑧ 一定の鉛業務を行う屋内作業場
- 〇⑨ 酸素欠乏危険場所において作業を行う場合の当該作業場
- ⑩ 第1種有機溶剤または第2種有機溶剤を製造し、または取り扱う業務を行う屋内作業場
- 特別管理物質
作業環境測定とは
・作業環境中には、ガス・蒸気・粉じん等の有害物質や、騒音・放射線・高熱等の有害エネルギーが存在することがあり、これらが働く人々の健康に悪影響を及ぼすことがあります。
・これらの有害因子による職業性疾病を予防するためには、これらの因子を職場から除去するか一定のレベル以下に管理することが必要です。
・そのための第1歩が作業環境の実態を把握し、必要な対策のための情報を得ることであり、それが「作業環境測定」といえます。
単位作業場所とは
・「単位作業場所」とは、当該作業場の区域のうち労働者の作業中の行動範囲、有害物の分布等の状況等に基づき定められる作業環境測定のために必要な区域をいう。
作業環境測定の流れ
・労働安全衛生法(安衛法)では「作業環境測定」を「作業環境の実態を把握するため空気環境その他の作業環境について行う「デザイン」「サンプリング」及び「分析(解析を含む)」と定義しています(第2条第4号)
① デザイン
・「デザイン」とは、測定対象作業場の作業環境の実態を明らかにするために、当該作業場の諸条件に即した測定計画を立てることをいいます。
・その内容としては、生産工程、作業方法、発散する有害物質の性状その他作業環境を左右する諸因子を検討して、サンプリングの箇所、サンプリングの時間及び回数、サンプリングした資料を分析するための前処理の方法、これを用いる分析機器等について決定することをいいます。
② サンプリング
「サンプリング」とは、測定しようとする物の捕集等に適したサンプリング機器をその用法に従って適正に使用し、デザインにおいて定められたところにより試料を採取し、必要に応じて分析を行うための前処理、例えば、凍結処理、酸処理等を行うことをいいます。
③ 分析
「分析(解析を含む)」とは、サンプリングした資料に種々の理化学的操作を加えて、測定しようとする物を分離し、定量し、又は解析することをいいます。
作業環境測定の実施(行うべき作業所)
・「安衛法第65条第1項」では、作業環境測定を行うべき作業場として11種類が作業場規定されて
いる。
・気中有害物質の日間変動を考慮した評価を行うためには、連続する2作業日に測定することを行うことが望ましい
・事業者は、作業環境測定を行ったときは、その都度、評価日時、評価箇所、評価結果及び評価を実施した者の氏名を記録して保存しなければならない。
作業環境測定を行うべき作業所
※ は、作業環境測定士が行わなければならない
(放石鑑定士特有のなまりのじん)
〇 は、酸素欠乏危険作業主任者が行う
※① 特定粉じん作業が行われる屋内作業場
実施時期は6月を超えない期間ごとに1回、保存期間は7年
(7分で、30本のトクホ)
・陶磁器を製造する工程において、乾式で原料を混合する作業を常時行う屋内作業場
② 暑熱、寒冷又は多湿の屋内作業場で、厚生労働省令で定めるもの
・冷蔵庫、製氷庫、貯氷庫等で、労働者がその内部で作業を行うもの
③ 著しい騒音を発する屋内作業場で、厚生労働省令に定めるもの
・チッパーによりチップする業務を行う屋内作業場
④ 坑内の作業場厚生労働省令で定めるもの
イ.炭酸ガスが停滞する作業場(→1か月以内ごとに1回)
ロ.28℃を超える作業場
ハ.通気設備のある作業場
⑤ 中央管理方式の空気調和設備(空気を浄化し、その温度、湿度及び流量を調節して供給することができる設備をいう。)を設けている建築物の室内で、事務所の用に供されるもの
⑥ 放射線業務を行う作業場で、厚生労働省令で定めるもの
1月以内ごとに1回、5年間保存
イ.放射線業務を行う管理区域
※ロ.放射線物質を取り扱う作業室
ハ.坑内の核原料物質の掘採業務を行う作業
※⑦ 特定化学物質等(第1類物質または第2類物質)を製造し、または取り扱う屋内作業場
6月を超えない期間ごとに1回、保存期間は3年
・アクリロニトリル(第2類特定化学物質)
※⑧ 一定の鉛業務を行う屋内作業場
〇⑨ 酸素欠乏危険場所において作業を行う場合の当該作業場
・海水が滞留したことのあるピットの内部において作業を行う場合の当該作業場
⑩ 第1種有機溶剤または第2種有機溶剤を製造し、または取り扱う業務を行う屋内作業場
実施時期は6月を超えない期間ごとに1回であり、保存期間は3年
ノルマルヘキサン(第2種有機溶剤)
特別管理物質
6月を超えない期間ごとに1回、保存期間は30年(7分で、30本のトク ホ)
・ベンゼン(特定第二類物質、特別管理物質)
労働安全衛生法に基づいて実施する作業環境測定の測定対象、測定頻度及び測定結果の記録の保存期間
・空気中の放射性物質の濃度 :1月以内ごとに1回: 5年間保存
・空気中の特定化学物質の濃度: 6か月以内ごとに1回: 3年間保存
・空気中の有機溶剤の濃度: 6か月以内ごとに1回: 3年間保存
語呂
・半つ気
(暑熱、寒冷(冷蔵庫)、多湿、抗内通気量)
・ガス栓は1か月に1回
(抗内炭酸ガス、放射線業務)
・特有うるさい石渡じん
(特定化学物質(第1類、第2類)、有機溶剤、騒音、石綿、特定粉じん)
・なまりは1年中
作業環境測定士による測定が義務付けられているもの
(放石鑑定士特有のなまりのじん)
・
A測定とB測定
A測定
・A測定とは、単位作業場所における有害物質の気中濃度の平均的な分布を知るために行う測定である。
・気中有害物質の空間的、時間的な変動、平均的な状態を把握する。
・測定点は、単位作業場所の床面上に6m以下の等間隔で引いた縦の線と横の線との交点とし、単位作業場所について5点以上の測定点を選択する。
・過去に実施した作業環境測定の記録で、単位作業場所における空気中の有害物質の濃度がほぼ均一であることが明らかな場合、A測定の測定点を6メートルを超える等間隔で引いた縦の線と横の線との交点とすることができる
(過去において実施した作業環境測定の記録により、測定値の幾何標準偏差がおおむね 1.2 以下である場合には、測定点を6mを超える等間隔で引いた縦横の線の交点とすることができる)
・測定を行う高さは、交点の床上50cm以上150cm以下の位置(A測定,B測定共通)
・試料空気の採取時間は、 1つの測定点について、10分間以上の継続した時間採取する。
・1作業単位場所において順次サンプリングする方法でA測定を行う時は、最初の測定点でのサンプリング開始から最後の測定点でのサンプリング終了までの時間が、1時間以上になるようにする。
・単位作業場所の範囲は平面的な場所だけではなく、有害物質の発生場所を取り巻くように設置された作業足場のような立体的なものとなる場合もある。
・測定値が管理濃度の10分の1に満たない測定点があったときは、管理濃度の10分の1を当該測定点における測定値とみなして、管理区分の決定を行うことができる。
・測定値が定量下限の値に満たない測定点があったときは、当該定量下限の値を当該測定点における測定値とみなして、管理区分の決定を行う。
幾何平均(相乗平均)
・「幾何平均」(Geometric Mean)とは、n個あるデータの各数値を全て掛け合わせた積(総乗値)のn乗根を取ることである。幾何平均は「相乗平均」とも呼ばれる。
・算術平均は「足し算の平均」であり、幾何平均は「掛け算の平均」とイメージするとよい。
・幾何平均は比率やパーセンテージの平均を求める際に特に有効で、各数値が同じ比率で増減する場合の平均的な増減率を求めることに適している。
・作業環境測定の基礎理論では、作業場の気中濃度の分布は「対数正規分布」となることになっている。
・1日のみのA測定の結果から当該単位作業場所の評価を行う場合、M1(第1日日の幾何平均値)をM(評価値の計算に用いる幾何平均値)として扱う。
対数変換のイメージ
濃度のバラツキや平均を評価するために、幾何平均・幾何標準偏差を用います。
大きなバラツキがある場合には、通常の算術平均では大きな値に引きずられて正しく評価できないためです。
極端な例)
10 , 100 , 1000 の3つのデータ
算術平均 → (10 + 100 + 1000) ÷ 3 = 370 ➡ 1000に寄った値になる
幾何平均 → (10 × 100 × 1000) ^ (1/3) = 1000000 ^ (1/3) = 100 = 10^2
➡ (log10 + log100 + log1000) ÷ 3 = (1 + 2 + 3) ÷ 3 = 2(=各測定値の対数の平均値)
➡ 10^2の指数2と一致する
各測定値の対数の平均値を計算し、その平均値の指数をとったものが幾何平均になります。
幾何標準偏差
・1日のみのA測定の結果から当該単位作業場所の評価を行う場合、1日目の幾何標準偏差σ1をそのままσとして用いるのではなく、
llog2σ=log2σ1+0.084
によって、修正するわけである。要は、経験的にみて測定したσ1よりバラツキが大きくなるので、若干高い数値を用いるわけである。
B測定
・B測定は、局所的、間欠的な有害物質の発生源があり、発散源に近接する場所における作業がある時に行われる、A測定を補完するための測定である。
・労働者が曝露し得る最高濃度を把握するための測定である。
・測定は、作業者の曝露が最大と考えられる場所と時間で測定する。
・測定時間は10分間の継続した時間で測定する。
・2か所以上の測定点においてB測定を行った場合には、そのうちの最大値を記入すること。
第1評価値と第2評価値
第1評価値(EA1)
・単位作業場所のA測定における全ての測定点の作業時間における気中有害物質の濃度のうち、高濃度側から5%に相当する濃度の推定値。
・第1評価値とは、この作業場では「高く見積もってもこのくらいだろう」という濃度を示す。
第2評価値(EA2)
・単位作業場所のA測定における気中有害物質の算術平均濃度の推定値
・第2評価値は、この作業場では「平均してこれくらいだろう」という濃度を示す。
※ 第1評価値EA1、及び第2評価値EA2の計算式:
M1:A測定の測定値の幾何平均値
幾何平均:データの各数値を掛け合わせた積のn乗根(nはデータ数)を取った値
参照(このサイトより引用):https://laoffice.jp/3521/#toc-2
管理区分の決定
第1評価値(EA1)・第2評価値(EA2)を「管理濃度」比較することで、「管理区分」を決定する。
「管理濃度」とは
・作業環境測定結果から管理区分を決定するための指標。
・労働安全衛生法第65条の2「作業環境測定結果の評価等」に基づく「作業環境評価基準」の別表に掲げられている。
士石、岩石、鉱物、金属又は炭素の粉じんの管理濃度の算定
E :管理濃度(単位 mg/m3)
Q :当該粉じんの遊離けい酸含有率(単位 %)
例)
Q= 0(%):E=3.0 ÷(1.19×0+1)= 3.0mg/m3
Q=100(%):E=3.0 ÷(1.19×100+1)= 0.025mg/m3
作業環境管理区分
・作業環境測定では、作業環境の状態を第1管理区分、第2管理区分、第3管理区分に区分して評価する。
作業環境管理が適切にできている状態
濃度分布の高濃度側5%もしくはそれ以下のみが管理濃度を超える(95%以上の場所で管理濃度を超えない)場合で、適切といえる管理状態。
作業環境管理に改善の余地がある状態
第1管理区分と第3管理区分の間で、改善の余地のある状態。
作業環境管理が適切でない状態
濃度分布の平均値(推定値)が管理濃度を超えてしまっており、改善を要する状態。
参照(このサイトより引用):https://kenkou-anzen.jp/work-environment-measurement/
A測定のみを行った場合の管理区分
第一管理区分:第一評価値が管理濃度に満たない場合
第二管理区分 :第一評価値が管理濃度以上であり、かつ、第二評価値が管理濃度以下である場合
第三管理区分 :第二評価値が管理濃度を超える場合
A測定およびB測定を実施した場合
作業環境測定結果の評価に基づく措置
第1管理区分
・単位作業場所のほとんどの場所で有害物質濃度が管理濃度を越えない状態である
・第1管理区分に区分された場所については、作業環境管理が適切であると判断されるため同区分理の継続に努める。
第2管理区分
・単位作業場所の有害物質濃度の平均値が管理濃度を越えない状態である。
・第2管理区分に区分された場所については、設備、作業方法等の点検を行い、その結果に基づき設備等の設置、作業方法等の改善その他作業環境を改善するために必要な措置を講ずるよう努めなければなりません。
第3管理区分
・第3管理区分に区分された場所については、直ちに設備、作業方法などの点検を行い、その結果に基づき、作業環境を改善するために必要な措置を講じ、当該場所の管理区分が第1管理区分または第2管理区分となるようにしなければなりません。
・必要な措置を講じたときは、その効果を確認するため、有害物質の濃度について測定・評価を行わなければなりません。
・また、第3管理区分に区分された場所については、労働者に有効な呼吸用保護具を使用させるほか、健康診断の実施その他、労働者の健康を図るために必要な措置を講じなければなりません。
労働者への周知
・事業者は、作業環境測定の結果の評価の結果、第2管理区分及び第3管理区分に区分された場所については、当該作業環境測定の結果の評価の記録を、常時各作業場の見やすい場所に掲示する等の方法によって労働者に周知しなければならない。
作業環境測定結果が第三管理区分の事業場に対する措置の強化(令和6年4月以降)
(1)作業環境測定の評価結果が第三管理区分に区分された場合の義務
① 当該場所の作業環境の改善の可否及び可能な場合の改善方策について、外部の作業環境管理専門家の意見を聴くこと。
② 当該場所の作業環境の改善が可能な場合、作業環境管理専門家の意見を勘案して必要な改善措置を講じ、当該改善措置の効果を確認するための濃度測定を行い、その結果を評価すること。
(2)上記①で作業環境管理専門家が改善困難と判断した場合、及び上記②の測定評価の結果なお第三管理区分に区分された場合の義務
① 個人サンプリング法等による化学物質の濃度測定を行い、その結果に応じて労働者に有
効な呼吸用保護具を使用させること。
② ①の呼吸用保護具が適切に装着されていることを確認すること。
③ 保護具着用管理責任者を選任すること。
④ 上記措置を講じたときは、遅滞なく当該措置の内容について所轄労働基準監督署に届け出ること。
個人サンプリング法
・従前の作業環境測定は、「場所」による測定(A 測定:単位作業場内で原則 5 点以上、B測定:最も高濃度ばく露の作業者の位置)という手法のみでしたが、作業者が発散源とともに移動する場合や、気中への発散の変動が大きいときは適切な評価とならない場合があることから、「人」(労働者)の身体に装着する試料採取機器等を用いて行う「C 測定」とそれを補完する「D 測定」という手法が追加されました。
C測定、D測定
・単位作業場所における気中有害物質の平均的な状態を把握するための「C測定」と、有害物質の発散源に近接する作業など、C測定の結果を評価するだけでは作業者の有害物質への大きなばく露を見逃すおそれがあると考えられる作業が存在する場合に、当該単位作業場所について行うC測定を補完するための測定を「D測定」といいます
・C測定は、単位作業場所(作業場の区域のうち労働者の作業中の行動範囲、有害物の分布等の状況等に基づき定められる作業環境測定のために必要な区域)における気中有害物質の平均的な状態を把握するための測定
・D測定は、 C測定の結果を評価するだけでは労働者が有害物質への大きなばく露を受ける可能性を見逃すおそれのある作業が存在する場合に、有害物質の発散源に近接する場所における作業について測定を行う
管理濃度と許容濃度
管理濃度
・作業環境管理の良否を判断する管理区分を決定するため、行政的に決めた数値
許容濃度
・当該物質の空気中濃度がこの数値以下であれば、ほとんど全ての労働者に健康上の影響が見られない濃度(1日8時間、週40時間)
「作業環境結果報告書」とは
・作業環境測定士は、作業環境測定の結果と、作業環境測定の結果の評価について、作業環境結果報告書(証明書)を作成し、事業者に提出する
・報告書の作成には基本的に、所定の様式(モデル様式)を用いる
・「モデル様式」には「A.粉じん用」と「B.特定化学物質、鉛、有機溶剤、石綿用」の2種類がある
・「事業場記入欄」があり、そこに「(1)当該単位作業場所における管理区分等の推移(過去4回)」「(2) 衛生委員会、安全衛生委員会又はこれに準ずる組織の意見」「(3) 産業医又は労働衛生コンサルタントの意見」「(4) 作業環境改善措置の内容」を事業場の責任において記入する必要がある。
作業環境測定結果報告書を読むポイント
① 「測定を実施した作業環境測定士」
・作業環境想定法施行令第1条で定める「指定作業場」では、作業環境測定士による測定が義務付けられている
② 「測定対象物質」
・測定対象物は該当作業場で使用されている物質であるか?
③ 「サンプリング実施日時」
・サンプリングは作業が行われている時間帯に実施されたか
・休憩時間帯や休業日、定期修理日では意味がない
④ 「単位作業場所等の概要」
⑤「全体図、単位作業場所の範囲、主要な設備、発生源、測定点の配置等を示す図面(粉じん用のみ)」
・単位作業場所の設定は妥当であるか
⑥ 測定データの記録(A測定データ、B測定データ)」
・測定点の数は十分か
⑦ サンプリング実施時の状況
・測定結果を見るうえで考慮すべき状況はなかったか
・データのばらつきはあるか
⑫ 評価
・A測定、B測定それぞれの管理区分は?
「安全衛生委員会、産業医またはコンサルタントの意見」の記載例
「グラインダーに局所排気装置を設置すること」
「塗装位置にプッシュプル型換気装置を設置すること」
「速やかに局所排気装置の性能を点検すること」
「給気が不足しているため、給気口の設置を検討すること」
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