アミロイドーシスとは
・アミロイドーシス(amyloidosis)とは線維状蛋白であるアミロイドが心臓、腎臓、肝臓、脾臓、副腎、消化管(舌を含む)、末梢神経、皮膚、リンパ節、血管、滑膜、筋などの全身各組織に沈着する症候群である。
・特定の臓器に沈着する「限局性アミロイドーシス」と、全身諸臓器に沈着する「全身性アミロイドーシス」に分類される。
全身性アミロイドーシスについて
・「全身性アミロイドーシス」は、線維構造をもつ蛋白質であるアミロイドが、全身臓器に沈着することによって機能障害を引き起こす一連の疾患群である。
・アミロイドは、病理学的にアルカリコンゴ赤染色で橙赤色に染まり、偏光顕微鏡下で緑色の複屈折を示すものである。蛋白質が立体構造(コンフォメーション)を変化させてアミロイドとして凝集し疾患を引き起こすことから、コンフォメーション病の1つとして捉えられている。
原因
・これまでに31種類のアミロイドーシスが報告されており、それぞれにおけるアミロイドの形成、沈着機序に違いがあるものの、全てに共通すると考えられている
・アミロイド線維形成機序は、まずアミロイド原因(前駆体)蛋白質が産生され、次にそれがプロセッシングを受け、重合、凝集してアミロイド線維となるというものである。
症状
・アミロイドーシスの症状は、アミロイドの沈着による臓器・組織の障害に基づくもので、病型ごとに異なる臨床症状を示す。
・全身性アミロイドーシスで特に注目すべき症状は全身衰弱、貧血、心アミロイド沈着による心症状、消化器障害、腎症状(ネフローゼなど)、手足のしびれなどである。
・認知症の原因の過半数は脳にアミロイド沈着(老人斑)を起こすアルツハイマー病であること、また、高齢者では脳血管壁へのアミロイド沈着(アミロイドアンギオパチー)により、脳葉型の脳出血や皮質、皮質下に微小出血を引き起こすことも知っておくべき重要な知識である。
アミロイドの分類
・全身性アミロイドーシスは血中に存在するアミロイド前駆蛋白によって分類できる。
・最も頻度が高いのが原発性ALアミロイドーシスである
分類
① ALアミロイドーシス
・前駆蛋白:免疫グロブリンL鎖
・基礎疾患:原発性(最も高頻度)、多発性骨髄腫、原発性マクログロブリン血症
・ALアミロイドーシスを疑った時には、血清と尿の免疫電気泳動で血清中のM蛋白や尿中ベンスジョーンズ蛋白を同定する
② AAアミロイドーシス
・前駆物質:反応性のアミロイドA蛋白
・基礎疾患:慢性炎症(関節リウマチ、結核、クローン病、成人スティル病、家族性地中海熱など)
・腎臓を侵すことが多い
③ ATTRアミロイドーシス
・常染色体優性遺伝
・変異したトランスサイレチンが前駆物質
・基礎疾患:遺伝性(家族性アミロイドニューロパチー)、加齢(老人性全身性アミロイドーシスなど)
④ Aβ2Mアミロイドーシス
・前駆蛋白:β2ミクログロブリン
・基礎疾患:長期血液透析
症状
・腎腫大、蛋白尿、ネフローゼ症候群、腎不全
・吸収不良症候群、嘔気、嘔吐、イレウス、
・巨舌
・甲状腺機能低下症、甲状腺腫大、
・唾液腺腫大
・肝脾腫
・末梢神経障害(温痛覚が優位に障害される解離性感覚障害を示す:small fiber neuropathy)
・手根管症候群(特に男性、両側性)
・脊柱管狭窄症
・眼窩周囲紫斑(アライグマの眼サイン)
・強皮症様肥厚、紫斑、皮下出血、粘膜下出血、難治性潰瘍、発汗異常
心アミロイドーシス
・心アミロイドーシスとは、全身性アミロイドーシスにおいて心筋細胞間質にアミロイド蛋白が沈着し、形態的、機能的異常を来す病態を指す
・患者は男性が多く男女比は20~50:1とされ、70歳未満での発症はまれである。本邦では女性の比率はこれよりは高い
・手根管症候群が心病変に先行することが多い。
・超音波で心筋肥厚、高輝度エコー、拡張障害
・心電図で伝導障害、洞不全症候群、徐脈、低電位
検査所見
・ALP高値
・低アルブミン
・蛋白尿など
治療
・これまで対症療法が主体であったが、近年病気を治す療法が可能になりつつある。
・原発性ALアミロイドーシスに対して自己末梢血幹細胞移植を併用した大量化学療法あるいはボルテゾミブの単独治療、トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチー(Familial Amyloid Polyneuropathy:FAP)では肝移植が行われている。
・また、本症では抗炎症薬ジフルニサルを用いた治療を加えて、タファミジスがニューロパチーの進行を遅延させることが明らかになっている。
・透析アミロイドーシスの予防として透析膜が改良され効果を挙げている。
・AAアミロイドーシスでは抗リウマチ作用を示す様々な生物製剤に加えて、抗IL-6受容体抗体を用いた治療が有効であることが明らかになってきている。
・また、アルツハイマー病ではコリンエステラーゼ阻害薬である塩酸ドネペジルが用いられ、症状を軽減させ、進行を遅らせる効果を有することが明らかになってきている。
・さらに、アミロイドに対するワクチン療法等も現在治験が進行中である。
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