嚥下障害の評価
藤島の「摂食・嚥下能力のグレード」
「できる状態」の評価法
Ⅰ:重症(経口不可)
1 嚥下困難または不能、嚥下訓練適応なし
2 基礎的嚥下訓練のみの適応あり
3 条件が整えば誤嚥は減り、摂食訓練が可能
Ⅱ:中等度(経口と補助栄養)
4 楽しみとしての摂食は可能
5 一部(1~2食)経口摂取
6 3食経口摂取+補助栄養
Ⅲ:軽症(経口のみ)
7 嚥下食で、3食とも経口摂取
8 特別に嚥下しにくい食品を除き、3食経口摂取
9 常食の経口摂取可能、臨床的観察と指導を要する
Ⅳ:正常
10 正常の摂食、嚥下能力
藤島の「摂食嚥下障害患者における摂食状況のレベル」
「している状態」の評価法
経口摂取なし
Lv.1 :嚥下訓練を行っていない
Lv.2 :食物を用いない嚥下訓練を行っている
Lv.3 :ごく少量の食物を用いた嚥下訓練を行っている
経口摂取と代替栄養
Lv.4:1食分未満の嚥下食を経口摂取しているが代替栄養が主体
Lv.5:1-2食の嚥下食を経口摂取しているが代替栄養が主体
Lv.6:3食の嚥下食経口摂取が主体で不足分の代替栄養を行っている
経口摂取のみ
Lv.7:3食の嚥下食を経口摂取している代替栄養は行っていない
Lv.8:特別食べにくいものを除いて3食経口摂取している
Lv.9:食物の制限はなく、3食を経口摂取している
正常
Lv.10:摂食・嚥下障害に関する問題なし (正常)
参照:
藤島一郎, 他:「摂食・嚥下状況のレベル評価」簡便な摂食・嚥下評価尺度の開発.リハ医学43:S249,2006
http://www.healthy-food.co.jp/reaflet.pdf
短期と長期の二つのゴールの設定
・嚥下障害の改善には時間がかかる。あるいは嚥下リハの効果出現には時間がかかることがある
例)
短期ゴール:まずは自宅復帰に向けてミキサー食が可能になる
長期ゴール:家での生活が安定し肺炎も起こさない状態が確 認されたら、食形態のアップを試していく
薬剤による嚥下機能改善
・ACE阻害薬のイミダプリル(タナトリル®)
・脳梗塞後意欲低下に対するアマンタジン(シンメトレル®)
・抗血小板薬のシロスタゾール(プレタール®)
には「誤嚥性肺炎の予防効果がある」とされる
嚥下訓練
開始条件
・意識レベルJCS一桁
・酸素投与がカニューラ(マスクでは無理)
・呼吸数24回未満
参照:先生、誤嚥性肺炎かもしれません 嚥下障害、診られますか?
間接訓練
・義歯は数日間装着しないだけで歯槽骨などの形態変化が生じるため、昼間は装着を促すこと
直接訓練
嚥下の意識化
・環境調整により食事に集中(テレビを見ない、カーテンを閉める、など)
・食事が咽頭に流入するタイミングと嚥下反射惹起のタイミングがずれる場合(特に液体嚥下)で有効
体幹角度調整
・30°、45°、60°
・その際、頚部は前屈位にする
うつむき嚥下(頚部屈曲位)
・座位あるいは半座位で食事をする時は、誤嚥を防ぐために、顎が上がらないように枕で調節する
・顎と首の間に指3~4本(あるいはげんこつ)が入る程度に、ややうつむき加減で首を保つようにする。
参照(このサイトより引用):https://physioapproach.com/enge-keibukukkyoku.html
頸部回旋(横向き嚥下)
・患側(通過障害がある側)に頸を回旋させると、健側の梨状窩が開大し通過しやすくなる(回旋側の下咽頭は狭くなり、非回旋側の下咽頭が広くなる)
・作用:下記の作用で咽頭通過が良くなり残留の除去ができる.
①回旋と反体側に食塊を誘導
②伸展された咽頭壁の蠕動が強力になる
③食道入口部が開きやすくなる
対象:咽頭内残留の多い方,咽頭の通過が不良な方
方法:右下,左下 45°に頚部を回旋して嚥下する.「嚥下前に回旋」「嚥下後に回旋して空嚥下追加」の方法がある。
※ 30°リクライニング位の場合、頚部回旋だけでは食塊が回旋側に誘導されやすくなるため、一側嚥下と組み合わせることが必要。
一側嚥下(頚部回旋と併用する)
作用:咽頭の運動,食道通過に左右差が著明なとき,重力を利用して健側に食塊を集め有効に嚥下する
対象:球麻痺,食道の開きの悪い方
方法:健側が下の側臥位を取り,頚部を患側に回旋させた姿勢で摂食する
上向き嚥下
作用:口腔から咽頭への移送不良を、上を向き重力を利用する事で補う
対象:口腔の動きが悪く咽頭の動きが良い方
方法:頚部を伸展して口腔の食塊を咽頭に送った後,すばやく下を向いて嚥下する無意識に行っている場合がある
うなずき嚥下
作用:喉頭蓋谷の食塊残留の除去ができる
対象:咽頭内残留,特に喉頭蓋谷に残留を認める方
方法:リクライニング位で頭部を後屈させ喉頭蓋谷の残留物を咽頭後壁に落とす.
次に前屈してうなずくようにして嚥下すると残留物をクリアできる
完全側臥位法
完全側臥位とは咽頭側壁が真下になるようにコントロールされた姿勢
•食塊の咽頭通過を咽頭側壁に誘導し、咽頭残留物を喉頭侵入・誤嚥させないために咽頭側方や梨状窩を有効に活用
•咽頭、喉頭の動きに明確な左右差が無い場合は左側・右側のどちらでも活用ができる
•上肢に麻痺が無い場合は自力摂取も可能となる
•基本的にヘッドアップしない
・声門より下の咽頭側壁から梨状窩に、約20 ㏄ほど摂取した飲食物を一時的に溜めることができる。
・溜まっている飲食物は、嚥下反射が起きるまで、重力に逆らって気管に移動しない。
・喉頭侵入した飲食物や唾液は、気管から遠ざかるように重力が働く。
以上のことから、完全側臥位はむせずに口から食べられる可能性が高い姿勢です。
参照(このサイトより引用):https://www.easyswallow.jp/
・左写真の首の側面に沿った空間は、気管の入り口(声門)より下側に広がり誤嚥しない空間になる。
・この誤嚥しない空間には、15~20㏄ほど貯められる。
・右写真の仰臥位(ぎょうがい)気管の入口などに3㏄ほどしか貯められない。
・重力によって気管の入口に入る誤嚥リスクが常にある。
先生、誤嚥性肺炎かもしれません 嚥下障害、診られますか?〜診断から治療まで、栄養療法や服薬指導を含め全部やさしく教えます
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