健診で尿蛋白が陽性時のアルゴリズム
① 「早急な精査を要する病態」の鑑別
「早急な精査を要する病態」これ3つ
「急速進行性糸球体腎炎(RPGN)」
「ネフローゼ症候群」
1)急性腎炎症候群
・先行感染(10~14日前)
・血圧上昇
・急性腎障害
・尿蛋白
・低補体血症
2)ネフローゼ症候群
・高度蛋白尿(3+以上)
・浮腫
・低蛋白血症
・脂質異常症(高LDL-C血症)
3)急速進行性糸球体腎炎
・全身症状
・糸球体性血尿
・腎機能障害
・炎症反応上昇
確認事項
・血尿を伴っている場合は精査へ
・問診事項
内服歴(漢方、サプリも含む)
腎疾患の家族歴
嘔気嘔吐、呼吸苦、浮腫、体重減少の有無
自己免疫疾患、悪性腫瘍を示唆病歴や身体所見の有無
② 再検査
※外来で再度尿定性提出:
・陰性なら「一過性尿蛋白」として終了
・陽性なら「持続性蛋白尿」の診断で③へ
一過性蛋白尿の原因
・運動後
・発熱
・低温
・尿路感染症
・体位性蛋白尿(ナットクラッカー現象)
③ 持続性蛋白尿のうち、まずは起立性蛋白尿の検索
※ 早朝第一尿を採取
早朝第一尿で尿蛋白(ー)の場合
・「体位性(起立性)蛋白尿」の診断で、以降健診フォロー
・小児、青年期に多く見られ、30歳以上ではまれとされる
早朝第一尿で尿蛋白(+)の場合
・病的蛋白尿と考えらえる
→精査(尿定性検査、血液検査)が必要
→④へ
④ 病的蛋白尿の検索(尿定性検査、血液検査)
・健康人でも尿中に40~80㎎/日の尿蛋白が排泄されている
・150㎎/日(0.15g/日)(30mg/日のアルブミン尿に相当)を超えた場合、「病的意義がある」(蛋白尿)と判断
・1g/日以上の蛋白尿は治療の対象となるため、腎生検による精査を行う。
※ 尿蛋白が1g/日未満の場合には、通常は腎生検を行わない。0.5~1.0g/日で腎生検を行うのは、血尿を伴うIgA腎症、SLEなどの膠原病関連腎炎などである。
腎生検の適応
「蛋白尿と血尿の両方」を認める症例
・蛋白尿と血尿の両方を認める症例に対しては,腎生検を検討する。
・CKD G4 ~ 5で腎機能低下が進行した症例では慎重さを要する。
『蛋白尿を伴う顕微鏡的血尿は末期腎不全のハイリスク群であり,腎生検による病理診断に沿った適切な管理を行うことで腎機能予後の改善が期待されるため,腎生検を考慮する(推奨グレード C1)。』
「蛋白尿単独(isolated proteinuria)」症例に対する腎生検
「蛋白尿単独症例のうちネフローゼ症候群を呈する場合には,腎生検を検討する」
「蛋白尿1 g/日以上(または尿蛋白/クレアチニン比1.0 g/gCre以上)を呈する場合には,腎生検を検討する」
「蛋白尿1 g/日未満(または尿蛋白/クレアチニン比1.0 g/gCre未満)0.5 g/日以上の場合には,良性蛋白尿(一過性蛋白尿や起立性蛋白尿)を除外する。特にCKD G1 ~ 3に対して,病態の把握,腎予後,治療介入のため腎生検を検討する」
「蛋白尿0.15 ~ 0.5 g/日でCKD G1 ~ 3の場合は慎重さを要する」
「遺伝性腎炎や異常蛋白(M蛋白や尿細管性蛋白)を伴う場合には,腎生検を検討する」
以下の所見があれば腎臓内科へ紹介
・0.5g/日(0.5g/gCr)以上、または2+以上の蛋白尿
・尿蛋白と血尿がともに(1+)以上
・eGFR<50
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