慢性肺血栓塞栓症
・器質化した血栓により肺動脈が閉塞し、肺血流分布及び肺循環動態の異常が6か月以上にわたって固定している病態を「慢性肺血栓塞栓症」という。
・中高年女性(男1:女3、平均年齢66±13歳)
・また、慢性肺血栓塞栓症において、平均肺動脈圧が25mmHg以上の肺高血圧を合併している例を「慢性血栓塞栓性肺高血圧症(chronic thromoboembolic pulmonary hypertension:CTEPH)」という。
・急性肺血栓塞栓症からの移行は少ない(2~4%)。またDVTの合併率も低いことから、急性例からの移行とは異なった発症機序も考えられている
・平均肺動脈圧が30mmHg以下は予後がよい
・CTEPHでは肺動脈閉塞の程度が肺高血圧症の要因として重要で、多くの症例では肺血管床の40%以上の閉塞を認めるとされている。
・血栓塞栓の反復と肺動脈内での血栓の進展が病状の悪化に関与していることも考えらる。
症状
・肺高血圧症の自覚症状としては、労作時呼吸困難、易疲労感、動悸、胸痛、失神などがみられる
・いずれも軽度の肺高血圧では出現しにくく、症状が出現したときには、既に高度の肺高血圧が認められることが多い。
・また、高度肺高血圧症には労作時の突然死の危険性がある。さらに進行例では、頸静脈怒張、肝腫大、下腿浮腫、腹水などがみられる。
・その他、肺高血圧症の原因となる基礎疾患に伴う様々な身体所見がみられる。
検査
・感度、特異度とも高いのは換気・血流シンチグラフィー(感度100%、特異度86%)
・造影CTは感度76%、特異度96%で血栓を明らかに認めない場合も多い
・胸部X線:
肺門部肺動脈陰影の拡大(左第Ⅱ弓突出、右肺動脈下降枝の拡大)
心陰影の拡大
肺野血管陰影の局所的な差(左右または上下肺野)
・心電図
右軸偏位および右房負荷
V1でのR≧5mm、またはR/S>1、V5でのS≧7mmまたはR/S≦1
治療法
・肺動脈血栓内膜摘除術
・カテーテルを用いた経皮経管的肺動脈拡張術(BPA又はPTPA)
・可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激薬であるリオシグアト。
・CTEPHの治療方針では、まず正確な確定診断と重症度評価を行うことが必要である。次いで、病状の進展防止を期待して、血栓再発予防と二次血栓形成予防のための抗凝固療法を開始する。
・抗凝固療法が禁忌である場合や抗凝固療法中の再発などに対して、下大静脈フィルターを留置する場合もある。
・低酸素血症対策、右心不全対策も、必要ならば実施する。
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