「尿路感染症」に含まれる疾患
・腎膿瘍
・急性巣状細菌性腎炎(acute focal bacterial nephritis:AFBN)
・腎盂腎炎
・膀胱炎
・尿道炎
・前立腺炎
・精巣炎、精巣上体炎
原因菌
・大腸菌が75~95%を占める
・その他、クレブシエラ、プロテウスなどのグラム陰性桿菌
・複雑性では緑膿菌、腸球菌、ESBL産生腸内細菌など
尿検査所見
・「尿白血球検査」と「尿亜硝酸塩試験」を併用することで診断的意義が高まる
・感度は低いが、特異度は高い
・両者がともに陽性のとき,尿路感染症,特に主原因菌であるグラム陰性菌感染である確率は高い.
亜硝酸塩試験
基準値(-)
・尿路感染症(細菌尿)で陽性
・食物の代謝産物である硝酸塩は、大腸菌・腸内細菌科に属する細菌などによって還元され、亜硝酸塩となる。
・尿中亜硝酸塩は細菌による硝酸塩の還元によってのみ生成されるため、細菌尿の診断に用いられる。
・膀胱内にて停滞している時間が短い場合(4時間以内)は、陽性にならないことがある
・硝酸塩還元能を持たない菌(腸球菌や緑膿菌)の場合は、陽性にならない
・絶食状態では、硝酸塩が尿中に存在しないため、陰性になることがある
白血球反応(別名:尿白血球検査、尿白血球反応、尿エステラーゼ活性、尿エステラーゼ反応、WBC(尿)、尿Griess反応)
基準値(-)
・好中球(一部の試験紙は単球も)のエステラーゼ活性を測定する
単純性尿路感染症(=閉経前女性)
※起因菌は9割が大腸菌
・腎盂腎炎
・膀胱炎
膀胱炎(大腸菌カバーを考える)
症状
頻尿、排尿時痛、残尿感、尿混濁
(基本的に発熱はない)
起因菌
・大腸菌が9割、その他クレブシエラ
抗菌薬
起因菌は大腸菌がほとんど(9割)
過去の培養結果、アンチバイオグラムも参考になる
【処方例】
・オーグメンチン 1錠 1日3回 3日間
・セファレキシン 500mg 1日3回 7日間(第一選択)
その他:
・レボフロキサシン 500mg 1日1回 3日間
催奇形性あり、大腸菌耐性増加(約3割耐性)、副作用多数
・バクタ 2錠 1日2回 3日間
催奇形性あり、ピル効果低減、血球減少、低K
単純性腎盂腎炎
・発熱
・腰痛、CVA叩打痛
・嘔吐することあり
・悪寒戦慄(菌血症を示唆)
複雑性(有熱性)尿路感染症
起因菌:PEK(プロテウス、大腸菌、クレブシエラ)
・だだし起因菌であるPEKは耐性化していることが多く、その施設のアンチバイオグラムを参考に所k治療薬を選択(第2~第3セフェム)
・全身状態が悪い場合は、ESBL産生菌の可能性を考慮し初期治療はカルバペネム系で開始。
1)腎盂腎炎
・腎部叩打痛(CVA knocking pain)(陽性尤度比1.7、陰性尤度比0.9)
→なくても否定できない
・腎臓周囲の脂肪織濃度上昇(perinephritic fat stranding:PFS)を認めることがある
(感度72%、特異度58%)
→PFSがある場合は、菌血症のリスクが高くなる
・起炎菌は大腸菌が8~9割を占める
抗菌薬 ※基本は入院して点滴静注治療
【内服】10~14日
セファレキシン 500mg 1日3回 7日間(第一選択)
バクタ 2錠 1日2回 14日間
シプロキサン 500㎎ 1日2回 7~10日間
タリビット 400㎎ 1日2回 7~10日間
クラビット 750㎎ 1日1回 7~10日間
【点滴静注】点滴での治療期間:7~10日(または14日)間
第一選択:CTRX
耐性菌リスクあり:
メロペネム1g 8時間ごと
セフォチアム(CTM:第2世代)点滴
ゾシン
MEPM
2)前立腺炎
・直腸診での圧痛
抗菌薬
・内服
シプロキサン500㎎ 1日2回 14日間
クラビット 500㎎ 1日1回 14日間
バクタ 2錠 1日2回 14日間
・重症で腸球菌の関与が考慮される場合
ABPC(ビクシリン)2g 1日4回+ゲンタマイシン1~1.5㎎/kg 1日3回
3)精巣上体炎
・陰嚢部発赤、疼痛
無症候性細菌尿
・頻尿、排尿時痛、発熱などの症状がみられないけれども、尿に多数の細菌がみられる状態のこと
・女性に多くみられる疾患であり、加齢にともない頻度は増加する。
・治療の必要はなし(抗菌薬で駆除したとしても、1年もすれば約半数で無症候性細菌尿となってしまうため)
・ただし、妊婦と泌尿器科手術前の患者では無症候性細菌尿でも治療適応となる。
・無症候性細菌尿の妊婦を無治療のままにしておくと、腎盂腎炎のみならず、早産、低体重児、周産期死亡になる危険性が高くなります。泌尿器手術前の患者さんに無症候性細菌尿が見られると術後に菌血症になることがあります。
コメント