輸液の分類(晶質液と膠質液)
1)晶質液(crystalloid)
・細胞外液を自由に拡散できる小さな分子からなる電解質液のこと
・蒸留水と電解質、糖、乳酸などを混ぜてつくられた輸液製剤
・生食、3号液など
2)膠質液(colloid)
・分子が大きく拡散性の低い溶質を含有しておる電解質液のこと
・アルブミン、デキストランなどの高分子物質を混ぜてつくられた輸液製剤がメイン
・アルブミナー®、サリンヘス®など
1)細胞外液補充液
・水・電解質補給に用いられる輸液は、電解質濃度が血漿とほぼ等しい「等張電解質輸液」と、血漿よりも低い「低張電解質輸液」の2種類に大別される。
・「等張電解質輸液」は、電解質の浸透圧が体液とほぼ同じであるので、投与した輸液は細胞内へは移動せず、細胞外に分布して細胞外液量を増す。
・そのため「等張電解質輸液」は「細胞外液補充液」とも呼ばれ、血管内や組織間に水分・電解質を補給できる輸液である。
・等張電解質輸液には、「生理食塩液」「リンゲル液」「乳酸(酢酸・重炭酸)リンゲル液」などがある。
分類
1)生理食塩水
・血漿の電解質をNa154mEq/L, Cl154mEq/Lで代替したもの(0.9%NaCl)。
・計算上浸透圧は308mOsm/Lとなるが、NaClの解離度が0.93であるため、生体内では
154×2×0.93=286mOsm/L(285±5mOsm/L)となり、血液の浸透圧正常血漿浸透圧とと一致する。
・生理食塩水のはpH=7.0。
・しかし、実際の私たちの体のpH=7.40なので、生理食塩水はやや酸性に傾いている輸液製剤である(この意味では生理食塩水という名前であるが、「生理的」ではない)。
・実際に生理食塩水を大量に投与すると「AG非開大性代謝性アシドーシス」に至ることがある。
2)リンゲル液
・1882年に英国の生理学者Sydney Ringerが、カエルの心臓の灌流実験のために考案した。
・体液同様のイオン組成・浸透圧をもつ最初の生理的塩類溶液で、生理食塩水にカリウムやカルシウムを加えたもの。
・リンゲル液は生理食塩水同様にクロールイオンが過剰となる。酢酸や乳酸などを加えてクロールイオン量を抑えたものが酢酸リンゲル液、乳酸リンゲルである。
・緩衝材によってより生理的なpHに近づけることが目的で、入っている緩衝材によって「乳酸リンゲル液(乳酸が緩衝材)」、「酢酸リンゲル液(酢酸が緩衝材)」、「重炭酸リンゲル液(重炭酸がリンゲル液)」と名前が付いています。
・pHが人体に近く、Clも100mEq/L強と人体に近い組成であることが特徴です。
参照(このサイトより引用):https://www.otsukakj.jp/healthcare/iv/electrolytes/
維持輸液(維持補液)量、速度の算出(4-2-1ルール)
・体重0~10kg:
体重✕100mL/日 、4✕体重mL/時
(10kgで1000mL/日、40mL/ 時)
・体重10~20kg:
1000mL+(体重-10)✕50mL/日、40+2✕(体重ー10)ml/時
(20kgで1500mL/日、60mL/時)
・体重>20kg:
1500mL+(体重-20)✕20mL/日、60+1 ✕(体重ー20)mL/時
(30kgで1700mL/日)
※上限は2400mL/日とする
各補液、点滴製剤のNa、カロリー量
細胞外液
ラクテック 500mL
・Na 130mEq/L
・カロリー 52Kcal(2.6%ブドウ糖)
ラクテックG 500mL
・Na 130mEq/L
・カロリー 100Kcal(5%ソルビトール;25g)
ソルビトールはグルコースと異なりインスリン非依存的に肝細胞
に入り、肝細胞において活性の高いソルビトールデヒドロゲナーゼに
よりフルクトースに代謝され、フルクトースはフルクトキナーゼによ
り、フルクトース-1-リン酸となり、やがて解糖系において代謝され
るといわれている。
1号液
ソルデム1号 500mL
・Na 90mEq/L(500mLに45mEq=2.6g)
・カロリー 52Kcal(2.6%ブドウ糖;13g)
※ ここに
50%ブドウ糖(10g / 20mL / A;40kcal)を
1本加えると 合計 13g+10g=23g(92Kcal):4.6%ブドウ糖
2本加えると 合計 13g+20g=33g(132Kcal):6.6%ブドウ糖
3)3号液
ソルデム3A 500mL
・Na 50mEq/L(500mLに25mEq=1.5g)
・カロリー 86Kcal(4.3%ブドウ糖;21.5g)
ソルデム3AG 500mL
・Na 35mEq/L(500mLに17.5mEq=1.0g)
・カロリー 150Kcal(7.5%ブドウ糖;37.5g)
アクチット 500mL
・Na 45mEq/L(500mLに22.5mEq=1.3g)
・カロリー 100Kcal(5%マルトース25g)
マルトースは、ブドウ糖が2個結合した二糖類で、体内でブドウ糖に分解される。
そのため、理論的には同一浸透圧で2倍のエネルギーを投与できる。
インスリンを併用することなく細胞膜を通過できる
KNMG3号、フィジオ35 500mL
・Na 35mEq/L(500mLに17.5mEq=1.0g)
・カロリー 200Kcal(10%ブドウ糖;50g)
ビーフリード
・Na 35mEq/L(500mLに17.5mEq=1.0g)
・K 20Eq/L
・7.5 %ブドウ糖(37.5g):ソルデム3AGと同じ
・ソルデム3A(ソリタ3号)にブドウ糖とアミノ酸、ビタミンB1を追加したもの
・210Kcal / 500mLとエネルギーが高い
ナトリウム製剤による補正
・10%塩化ナトリウム注射液注(2g/20ml/A)
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