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皮膚筋炎/多発性筋炎(検査、身体所見、診断基準)

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参照ガイドライン

多発性筋炎・皮膚筋炎診療ガイドライン(2020 年暫定版)

 

 

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疾患

・自己免疫により骨格筋の炎症と破壊をきたす疾患で、体幹や四肢近位筋優位の筋力低下をきたす。

・筋炎に加え、特徴的な皮膚症状を呈するものは「皮膚筋炎」とされ、封入体筋炎を併せて「特発性筋疾患(IIM:idiopathic inflammatory myopathy)と呼ぶ

・皮膚筋炎/多発性筋炎における主要な死因は「悪性腫瘍」「感染症」「心肺疾患」である。

・約半数に間質性肺炎を発症し、主要な予後規定因子である。

悪性腫瘍の合併

・悪性腫瘍は多発性筋炎の約15%、皮膚筋炎の約20%に合併する。この頻度は正常人の約5~7倍と高率で、ほかの膠原病に比べて極めて多い

・悪性腫瘍の合併は50~60歳代に多い

・悪性腫瘍の種類としては、肺癌、胃癌、大腸癌、女性における乳癌、子宮癌が多い。

 

 

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症状

・近位筋の筋力低下

(階段の昇降が困難になった、髪をとく時に腕が上がりにくい)

・首下がり現象

頚部筋が侵され頭を持ち上げるのが困難になること

・嚥下障害

・知覚は正常

・皮膚症状

 

自己抗体

疑った場合に提出する自己抗体項目

抗 Mi-2 抗体

・ステロイド反応性がよい

抗 ARS 抗体(抗アミノアシルtRNA合成酵素(aminoacyl-tRNA synthetase)抗体)

・この中の一つが抗Jo-1抗体(抗ARS抗体が陽性だった場合に提出)

・筋炎、間質性肺炎、レイノー現象、発熱を認める

・抗Jo-1はほぼ全例に間質性肺炎を認める

抗 MDA5(CADM-140)抗体(抗メラノーマ分化関連遺伝子5抗体)

・筋症状を欠くCADMを呈する

・予後不良の間質性肺炎を認める

・抗MDA5抗体陽性群は抗ARS抗体陽性群や抗体陰性群と比較して予後不良といわれる

抗 TIF-1γ抗体

・悪性腫瘍、嚥下障害の合併が多い

 

(ガイドライン):CQ2 自己抗体は有用な指標となるか

推奨文:筋炎特異(関連)自己抗体は筋炎の病型、病態、臨床経過、治療反応性と密接に関連しており、抗 Jo-1 抗体を含む抗アミノアシル tRNA 合成酵素(ARS)抗体だけでなく、可能であれば種々の特異自己抗体の検索を行うべきである。(推奨度 1)

解説:

筋炎に見出される筋炎特異抗体あるいは筋炎関連抗体の一部は筋炎および筋外合併症の治療反応性を予測できる可能性がある。
これらの自己抗体のうちで、抗 Mi-2 抗体、抗 U1RNP 抗体、抗 Ku 抗体陽性の症例は、比較的、副腎皮質ステロイド反応性が良好で生命予後も良いことが報告されている。ただし、後2者は筋炎オーバーラップ症候群で認められる 。

抗 Jo-1 抗体およびその他の抗 ARS 抗体(抗 PL-7、PL-12、EJ、OJ、KS 抗体を含む)は筋炎とともに高頻度に間質性肺炎を合併する(抗 ARS 抗体症候群)。一般にこれらの抗ARS 抗体陽性例の筋炎も間質性肺炎も初期の副腎皮質ステロイド治療には比較的良く反応するものの再燃率が高いことが報告されている。そのため、長期生命予後は必ずしも良好ではなく(10 年生存率約 80%)、呼吸機能が緩徐に増悪して呼吸不全を呈するためquality of life (QOL)も障害されうる。生命予後改善・再燃/進行抑制のために免疫抑制薬の併用が勧められる 抗 ARS 抗体の種類によっては臨床像・臨床経過・予後に若干の差違が報告されている。

抗 Jo-1 抗体陽性例では筋症状の頻度が多いのに対し、非 Jo-1 抗 ARS 抗体陽性例では筋症状が比較的少ない。予後も抗 Jo-1 抗体陽性例よりも非 Jo-1 抗 ARS 抗体陽性例の方が悪く、特に抗 PL-7 抗体が抗 ARS 抗体の中で最も予後不良因子であることが示唆されている。

抗 MDA5(CADM-140)抗体は皮膚筋炎に特異的な自己抗体であり、日本人においては臨床的無筋症性皮膚筋炎(CADM)に多く認められ、高頻度に間質性肺炎を合併する。特に急速進行性間質性肺炎を合併する頻度が高いため生命予後不良因子として数多く報告されている。同抗体陽性例では早期から高用量副腎皮質ステロイドとともに免疫抑制療薬を同時に導入することが勧められる。

抗 SRP 抗体と抗 HMGCR 抗体は筋生検像で筋線維の壊死再生像が著明だが炎症細胞浸潤に乏しい壊死性筋症を示しやすいことが報告されている。さらに抗 SRP 抗体は重症あるいは治療抵抗性、再発性筋炎のマーカーとされ、血清 CK 値も非常に高値を示しやすい。抗 SRP 抗体陽性筋炎は副腎皮質ステロイドに抵抗性で、早期から免疫抑制薬や免疫グロブリン大量静注療法を必要とする場合が多い

近年抗 SRP 抗体陽性の治療抵抗性例に対してリツキシマブの有効性が報告されている 。

抗 HMGCR 抗体陽性筋炎の一部はスタチン内服との関連が示唆されている 。

抗 TIF-1γ/α(p155/140)抗体は DM に検出され、悪性腫瘍に強く関連する 。但し、その関連は 40 歳以上の成人症例において当てはまる 。同抗体陽性例の筋炎診断時には悪性腫瘍の徹底した検索が推奨され、発症時に悪性腫瘍が見つからない場合も病初期 3 年以内は慎重な経過観察を行うことが示唆される 。また同抗体陽性例は嚥下障害とも関連する。

抗 NXP2 抗体も DM に検出され、皮膚石灰化 、嚥下障害 、悪性腫瘍 との関連が示唆され、間質性肺炎は少ないとされる 。

抗 SAE 抗体も DM に検出され、全身の紅斑、嚥下障害、間質性肺炎、悪性腫瘍との関連が示唆される 。

 

臨床的無筋症性DM(clinical amyopatic dermatomyositis;CADM)

・特徴的な皮疹を有するも、筋症状やCK上昇などの検査異常をほとんど認めない病型

・抗MDA-5抗体が高率に陽性となる

急速進行性間質性肺炎の合併が多く、予後は悪い

 

抗ARS抗体症候群

・抗ARS(aminoacyl-tRNA synthetase)抗体はアミノアシルtRNA合成酵素に対する自己抗体である。

・抗ARS抗体陽性の患者は,筋炎、間質性肺炎、発熱、レイノー現象、関節炎を共通する臨床症状として有することから,抗ARS抗体症候群と呼ばれている。

・また共通する皮疹としてメカニクスハンド(手指(母指と示指)側縁の角化性皮疹)が知られる。

・抗ARS抗体はこれまでに抗Jo-1抗体、抗EJ抗体、抗PL-7抗体、抗PL-12抗体、抗OJ抗体、抗KS抗体、抗Ha抗体、抗Zo抗体の8種類が報告されている(このうち,抗Ha抗体,抗Zo抗体は1例報告)。

・抗Jo-1抗体はが代表格で、筋炎特異的抗体として知られている。

・抗ARS抗体は90%以上で間質性肺炎を合併するが,皮疹や筋症状,関節炎の合併率は抗体ごとに少し異なっている。

・臨床的に皮膚筋炎と診断される頻度は抗Jo-1抗体,抗EJ抗体,抗PL-7抗体で高い。

・一方,抗KS抗体陽性患者の多くは皮疹,筋炎ともに合併せず,間質性肺炎と診断されている。

・抗PL-12抗体も筋炎を合併する頻度は低い。

・合併する間質性肺炎の大部分は慢性型であるが,一部で急速に進行する症例があり,注意が必要である。

・治療反応性と再燃も抗体ごとに違いがある。抗PL-7抗体は初期治療に対する反応が不十分で追加治療を要することが多く,再燃する割合も高い。

 

皮膚症状

機械工の手(mechanic hand)

・利き手に限らず通常は対称的、母指尺骨側面と他の指の橈側側面(最も顕著に人差し指と中指)生じる亀裂や細かい皮むけfine scalingの伴う角化性紅斑

参照(このサイトより引用):https://www.dermatol.or.jp/qa/qa7/s2_q07.html

・親指の尺側面や人差し指の橈側面に皮疹が出やすため、まるで工具をよく使う機械工の手荒れに似ているため、命名された。

参照(このサイトより引用):https://www.ishiyaku.co.jp/magazines/ayumi/AyumiArticleDetail.aspx?BC=923901&AC=10737

 

 

 

 

 

 

 

 

Gottron徴候

・手指関節背面の盛り上がった紫紅色の丘疹

参照(このサイトより引用):https://www.dermatol.or.jp/qa/qa7/s2_q07.html

 

 

 

ヘリオトロープ疹

・上眼瞼部の紫紅色の腫れぼったい紅斑

参照(このサイトより引用):https://www.dermatol.or.jp/qa/qa7/s2_q07.html

 

 

Vネックサイン、ショールサイン

首~前胸部の紅斑をVネックサイン、首から肩の後ろにかけて出現する紅斑はショールをかける部位なのでショールサインという。

 

診断基準

1.診断基準項目

(1)皮膚症状
(a)ヘリオトロープ疹:両側または片側の眼瞼部の紫紅色浮腫性紅斑
(b)ゴットロン丘疹:手指関節背面の丘疹
(c)ゴットロン徴候:手指関節背面および四肢関節背面の紅斑

(2)上肢又は下肢の近位筋の筋力低下

(3)筋肉の自発痛又は把握痛

(4)血清中筋原性酵素(クレアチンキナーゼ又はアルドラーゼ)の上昇

(5)筋炎を示す筋電図変化

(6)骨破壊を伴わない関節炎又は関節痛

(7)全身性炎症所見(発熱、CRP上昇、又は赤沈亢進)

(8)抗アミノアシルtRNA合成酵素抗体(抗Jo-1抗体を含む)陽性

(9)筋生検で筋炎の病理所見:筋線維の変性及び細胞浸潤

2.診断のカテゴリー

皮膚筋炎 : (1)の皮膚症状の(a)~(c)の1項目以上を満たし、かつ経過中に(2)~(9)の項目中4項目以上を満たすもの。
なお、皮膚症状のみで皮膚病理学的所見が皮膚筋炎に合致するものは、無筋症性皮膚筋炎として皮膚筋炎に含む。
多発性筋炎 : (2)~(9)の項目中4項目以上を満たすもの。

3.鑑別診断を要する疾患

感染による筋炎、薬剤誘発性ミオパチー、内分泌異常に基づくミオパチー、筋ジストロフィーその他の先天性筋疾患、湿疹・皮膚炎群を含むその他の皮膚疾患

 

 

総合診療 2021年 2月号 特集 肺炎診療のピットフォール COVID-19から肺炎ミミックまで

 

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