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結核性髄膜炎

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病態

・結核性髄膜炎は全結核の約1%(結核は1万人当たり1.2人)

・全年齢で起こり得る。特に小児やHIV未治療の患者に多い

・病歴で結核の既往がある症例は全体の20%程度

・全身性の結核感染症の結果として生じるよりも、単独に髄膜炎を起こすことが多い

 

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臨床症状

・経過は基本的に亜急性~慢性

(小児やHIV共感染では急激に進行する傾向がある)

・発熱、頭痛など非特異的な症状で発症することも多い

・髄膜刺激徴候を認めないこともあり、項部硬直は病初期には認めにくい

・CRPなどの炎症反応の上昇は認めないことが多い

・時に病巣付近の血管炎を生じ、2次的に血栓症(脳梗塞)の原因となる

・脳底部の炎症が強いため、脳神経(Ⅱ、Ⅵ)の障害が多いという報告もあるが、多発脳神経麻痺を呈することもある(その他下垂体、視床下部)

・臨床経過が増悪する(ウイルス性髄膜炎の経過に合わない)

 

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検査所見

・CRP、ESRが基準値内のことが多い

・髄液検査での抗酸菌塗抹、培養は陰性が多い

・T-SPOT陰性

髄液検査所見

・リンパ球優位の細胞数上昇

・糖低下

・髄液ADAが診断に有用(4U/L以上の場合は結核性が否定できない)

 

画像検査

・頭部造影MRIにて脳底槽の軟膜優位に造影効果を認めることがある

 

 

結核性髄膜炎の診断基準

参照:

標準的神経治療:結核性髄膜炎
編集:日本神経治療学会治療指針作成委員会

 

臨床症状

(下記の1つ以上)
頭痛,易刺激性,嘔吐,発熱,項部硬直,痙攣,局所神経症状,意識障害,嗜眠

結核性髄膜炎の臨床的分類

definite

(AまたはBを満たす)

A)臨床症状に加えて下記の検査項目のうち1項目以上認める.

① 髄液の塗抹での抗酸菌陽性

② 髄液の培養での結核菌同定

③ 髄液のPCRによる結核菌遺伝子の検出

B)臨床症状と髄膜炎を示唆する髄液所見または肉眼所見(剖検)があり,組織学的に病変部位に抗酸菌を認める.

probable

• 臨床症状に加えて,診断スコアが10点以上(脳画像所見が得られていない場合),または12点以上(脳画像所見が得られている場合)ある.

• ただし,少なくとも2点以上の髄液所見または画像所見の診断スコアが必要.

possible

• 臨床症状に加えて,診断スコアが6~9点(脳画像所見が得られていない場合),または6~11点(脳画像所見が得られている場合)あり,さらに他疾患が除外されている.

• ただし,髄液検査または画像検査を施行してpossibleかどうか判定する.
(Marais S et al : Lancet Infect 10 : 803-812, 2010より引用)

 

注)結核性髄膜炎診断スコア

臨床症状の基準(合計の上限6点)

• 症状が5日間以上持続:4点
• 次の症状が1つ以上ある:2点

体重減少(小児なら体重増加に乏しい)、寝汗、2週間以上持続する咳嗽

• 1年以内の肺結核患者との接触(10歳未満患者のみ):2点
• 局所神経障害(脳神経障害以外):1点
• 脳神経障害:1点
• 意識障害:1点

 

脳脊髄液の基準(合計の上限4点)

• 外観透明:1点
• 細胞数10 ~ 500/mm3:1点
• 単核球優位(50%以上):1点
• 蛋白l00mg/dl以上:1点
• 髄液糖/血糖比0.5未満:1点

 

脳画像所見の基準(合計の上限6点)

• 水頭症:1点
• 脳底部髄膜の造影剤増強効果:2点
• 結核腫:2点
• 脳梗塞:2点
• 単純CTでの脳底部脳槽部の高吸収域:2点

 

脳以外の結核所見の存在(合計の上限4点)

• 胸部画像所見:肺結核2点 / 粟粒結核4点 : 2点/4点
• CTまたはMRIまたは超音波による他組織の結核性病変:4点

• 他組織からの抗酸菌染色または培養での結核菌同定(喀痰,胃液,リンパ節,尿,血液培養など):4点
• 他組織からの髄液のPCRによる結核菌遺伝子の検出:4点

 

除外疾患

• 細菌性髄膜炎,クリプトコッカス髄膜炎,梅毒性髄膜炎,ウイルス性髄膜脳炎,脳マラリア,寄生虫または好酸球性髄膜炎,脳トキソプラズマ,脳膿瘍,悪性腫瘍(悪性リンパ腫など)
(Marais S et al : Lancet Infect 10 : 803-812, 2010より引用)

 

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