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肺癌、肺がん

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組織分類

「非小細胞癌」と「小細胞癌」

・肺癌は、「非小細胞癌」(約80%)と「小細胞癌」(約20%)に大きく分けられる

(治療法が小細胞がんの場合とそれ以外の場合とで大きく異なるため)

・「非小細胞肺癌」は副作用や効果の面から、「扁平上皮癌」と「非扁平上皮癌」に分けられる。

・さらに「非扁平上皮癌」は「腺癌」と「大細胞癌」にわけられる。

・頻度は「腺癌」「扁平上皮癌」の順に多い

 

小細胞癌

・小細胞癌は、進行が早く悪性度が高いが、化学療法や放射線療法が効きやすい特徴を持つ。

・小細胞癌は細胞が小さいため血管内に入り込みやすく、早い段階から血行性転移をしやすいため、発見された時には手術適応例が少ない。

 

扁平上皮癌

・喫煙との因果関係が強い

・肺の中枢気管支に発生することが多く、「肺門型肺がん」と呼ばれる

・リンパ節転移や血行性の遠隔転移は比較的遅い。

・症状は肺門型がんが多いため、進行すると咳や血痰などの症状が現れやすい

・扁平上皮癌の腫瘍マーカーとしてはSCC、CYFRAがある

扁平上皮癌では遺伝子異常は検査せず、最初からPD-L1染色で陽性細胞の割合を確認して治療方針を決定する。

・タバコ癌である扁平上皮癌や小細胞癌は複数の遺伝子傷害、変異によって発生するため、EGFR遺伝子変異やALK遺伝子変異などのピンポイントの変異は認められない。そのため肺癌化学療法においては、まず小細胞肺癌や扁平上皮癌を除外して、その他の癌に対して遺伝子異常を検討する。

扁平上皮癌では遺伝子異常は調べず、最初からPD-L1染色で陽性細胞の割合を確認し、免疫チェックポイント阻害薬の適応を決める。

 

非扁平上皮癌(=腺癌、大細胞癌)

・「腺癌」と「大細胞癌」のこと

・まず遺伝子検査を行い変異の有無を調べる(EGFR、ALK、ROS1、BRAF)

・遺伝子変異があれば、各々に対する分子標的薬を使用する

・遺伝子変異がなければ、免疫チェックポイント阻害薬の可能性を探るため、PD-L1染色を行う。

 

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血管内皮細胞増殖因子(VEGF)阻害薬

・がん細胞はVEGF (vascular endothelial growth factor)という血管新生を誘導する物質を産生したり、EGF (epidermal growth factor)というがん自身の増殖を促す物質を産生したりしてがんを増大させている。

・これらの物質に対する受容体は血管内皮細胞やがん細胞自身が持っていて、これらの物質が受容体と結合することにより受容体自身がリン酸化(活性化)され、その結果細胞内に増殖や遊走など様々な命令が伝達される。

・この受容体のリン酸化を阻害することで細胞内の伝達を阻害し、血管新生阻害、さらに抗がん効果を示すことが期待できます。

・ベバシズマブ(アバスチン®)はVEGF-Aに対するヒト化モノクローナル抗体であり、大腸がん、腎がん、および非小細胞性肺がんなどに対する有効性が示されています。

 

 

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上皮成長因子受容体チロシンキナーゼ阻害薬(epidermal growth factor receptor- tyrosine kinase inhibitor :EGFR-TKI)

薬の効果と作用機序

・細胞増殖のシグナルを伝達する上で重要となるチロシンキナーゼという酵素がある。皮膚の表面の細胞では上皮成長因子受容体(EGFR)というチロシンキナーゼ活性をもつ受容体に上皮成長因子が結合し、チロシンキナーゼが活性化され、細胞増殖がおこる。

非小細胞肺がんなどのがんではこの受容体(EGFR)に変異がおこり、常に活性化した状態になることで無秩序な細胞の増殖が行われる。

・「上皮成長因子受容体チロシンキナーゼ阻害薬(epidermal growth factor receptor- tyrosine kinase inhibitor :EGFR-TKI)」は、チロシンキナーゼ活性を選択的に阻害することで、がん細胞の増殖を抑制する分子標的薬である

・EGFR遺伝子変異がある癌に対し、分子標的薬であるゲフィチニブ(イレッサ®)の効果が高い

・本剤による治療における問題の一つに治療への抵抗性(薬剤耐性)がある。耐性が確認された症例の多くにT790M変異というEGFR遺伝子変異が存在することが確認されている。

・オシメルチニブ(商品名:タグリッソ)はそれまでのEGFR-TKIとは異なる構造(分子構造)を持つ薬剤で、ゲフィチニブなどのEGFR-TKIにおける治療に抵抗性を示すEGFR T790M変異があるEGFRチロシンキナーゼの活性を阻害する作用をあらわす。

・治療適応を決めるため、EGFR遺伝子変異検査が推奨される

 

一般的な商品とその特徴

ゲフィチニブ(イレッサ®)

・がん細胞の自滅を誘導する作用や血管内皮増殖因子の産生抑制により腫瘍内での血管新生阻害作用などももつ

・腺癌、非喫煙者、女性、東洋人、EGFR変異癌に対して有効
・胃酸が減少している場合、本剤の吸収が低下する可能性があり注意が必要

タルセバ

細胞周期のG1期(DNA合成準備期)停止やがん細胞の自滅を誘導する作用をもつ
非小細胞肺がんの他、治癒切除不能な膵がんへ使用する場合もある
服用方法に関して
通常、1日1回、食事の1時間以上前または食後2時間以降に服用する
高脂肪、高カロリーの食事後に服用した場合、体内の薬物量が増加する場合がある

ジオトリフ

EGFR以外の受容体型チロシンキナーゼ(HER2 など)の活性を阻害する作用ももち、これらの作用によりがん細胞の増殖を抑制する
服用方法に関して
通常、1日1回、食事の1時間以上前または食後3時間以降に服用する(空腹時の服用)
本剤を服用中における下痢に関する注意
下痢は比較的高頻度であらわれるとされ、下痢止め(止瀉薬)を常に携帯するなど適切な対応を行う

タグリッソ

既存の同系統薬における治療に抵抗性を示す遺伝子変異(EGFR T790M変異)に対して効果が期待できる薬剤

ビジンプロ

EGFRの他、HER2やHER4に対しても阻害作用をあらわす
EGFR遺伝子変異(Exon19欠失又はL858R変異)陽性に対する有用性が考えられている

 

ALK陽性肺がん

・ALK(未分化リンパ腫キナーゼ:anaplastic lymphoma kinase)は細胞の増殖にかかわる酵素で、
正常な状態では、ALKは必要に応じて細胞分裂をうながし、細胞が異常に増殖することはない。

・ALK遺伝子が、何らかのきっかけで別の遺伝子と融合してしまうと、「ALK融合遺伝子」という異常な遺伝子になり、ALK融合タンパクが作られるようになる。このALK融合タンパクが細胞の異常な増殖を引き起こし、がんが発生する。

・「ALK融合遺伝子」という遺伝子異常が原因の肺がんを「ALK陽性肺がん」という。

・非小細胞肺がんの約2~5%がALK陽性肺がんであるといわれ、特に腺がんに多くみられることが知られている。

・ALK陽性肺がん患者さんの平均年齢は50歳代半ばと、その他の肺がんに比べて10歳程度若い傾向がみられます。喫煙者より非喫煙者に多く、男女差は明らかではありません。

・ALK融合遺伝子が検出されたら、ALK阻害剤で治療を行う

・ALK阻害剤は、ALKのチロシンキナーゼという部位に作用して、細胞増殖を促す信号の伝達を止め、がん細胞を死滅させます。

 

PD-L1

・PD-L1(Programmed cell Death ligand 1)とは細胞の表面に発現しているタンパク質である。

・PD-L1は免疫細胞であるT細胞の表面にあるPD-1(Programmed cell Death 1)と呼ばれるタンパク質に結合し、免疫細胞の働きを抑制して「攻撃をしないように」と免疫の働きにブレーキをかける。

肺がんとPD-L1の関係性

・一部のがん細胞には細胞表面にPD-L1をたくさん発現させることによって、免疫の働きにブレーキをかけていると考えられています。そのため、がん細胞は免疫細胞に攻撃されることなく、どんどん増え広がります。

免疫チェックポイント阻害薬

・本来の免疫の働きを取り戻すために開発されたのが、抗PD-1抗体と抗PD-L1抗体です。

・これらの抗体は、PD-1とPD-L1の結合を阻害することで、免疫のブレーキを解除します。

・これらの薬剤は「免疫チェックポイント阻害薬」と呼ばれ、抗CTLA-4抗体とともに「免疫チェックポイント阻害療法」として肺がん治療に用いられています。

・免疫療法は、免疫の働きを高めることによって正常な細胞や臓器を攻撃してしまう可能性があり、抗がん剤とは副作用の種類や程度が異なる点に注意が必要とされています。

 

適応の判断

・非小細胞癌・非扁平上皮癌では、まずは遺伝子異常を調べ、その阻害薬が使えない、もしくは使えなくなった時にPD-L1染色免疫組織化学染色検査:IHC)を行い、陽性細胞の割合を確認して、免疫チェックポイント阻害薬が使えるかどうか検討する

扁平上皮癌の場合は遺伝子異常は調べず、最初からPD-L1染色で陽性細胞の割合を確認して治療方針を決定する

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