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高齢者、認知症患者の頻尿(原因、対策、治療薬)

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『フレイル高齢者・認知機能低下高齢者の下部尿路機能障害に対する診療ガイドライン2021』

『フレイル高齢者・認知機能低下高齢者の下部尿路機能障害に対する診療ガイドライン2021』
日本サルコペニア・フレイル学会、国立長寿医療研究センター(編集)

 

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認知症による頻尿の原因

1.過活動膀胱

・認知症がごく軽度であるにもかかわらず,頻尿・尿失禁(過活動膀胱,overactive bladder:OAB)がみられる場合がある

・そのような患者に対して膀胱機能検査を行うと,「排尿筋過活動」がしばしばみられます。いわば,膀胱が,患者の意思と無関係に勝手に,「トイレに行きたい」と言っているような状態です。

・OABは,健常成人の12.4%にみられ,高齢者に多く,認知症の原因疾患の中では無症候性脳梗塞,レビー小体型認知症で多く,アルツハイマー病でも中程度にみられます 。

・その機序として,膀胱抑制的に働く前頭前野,大脳基底核の病変が推定されています。

・さらに,高齢患者一般に,前立腺肥大症,腰椎症,糖尿病性ニューロパチーなどの合併疾患による残尿が少なからずみられます。

2.残尿

・残尿があると,有効膀胱容量が減り,二次的に頻尿をきたします。

・高齢患者の残尿量の評価には,超音波残尿測定器(「ブラッダースキャン」)のほか,貼付型持続超音波残尿測定器(「ゆりりん」)も有用です。

 

3.他の原因

・ほかの原因として,夜間多尿(1日尿量の50%が夜間に出る),女性の腹圧性尿失禁(咳をすると漏れる),尿路感染症などがあります。

・少数派ですが,認知症の有無にかかわらず神経症に伴う心因性頻尿(残尿がないのに1時間に5回以上トイレに行く)がみられることもあります。

・排尿を含めた様々なことにこだわるヒステリー症状,イライラ,緊張性頭痛などがしばしば同時にみられます
・これが認知症とともにみられる場合,BPSDの一部と考えられ,ほかのBPSDと同様の対処が必要と思われます。

 

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治療(過活動膀胱に対して)

① 過活動膀胱治療薬

・認知症患者のOABは,中枢移行の少ない抗コリン薬など(OAB治療薬)を選ぶことにより,ある程度の改善が期待できる

・過活動膀胱の薬には、大きく分けて二つの種類がある。膀胱の過剰な収縮を抑制する抗コリン薬(ベシケア、トビエースなど)と、膀胱の筋肉をほぐすβ3受容体作動薬(ベタニス、ベオーバ)。いずれも膀胱を柔らかくして、尿をためやすくするのが目的だ。

・ただ、長年治療薬として使われてきた抗コリン薬には認知機能への影響が危惧されている。

・健康な人では問題ないが、明らかな認知機能低下が見られる高齢者や、別の病気で既に抗コリン薬を処方されている人、高齢の男性には『β3受容体作動薬(ベオーバⓇ(ビベグロン)とベタニスⓇ(ミラベグロン))が望ましい』とガイドラインで推奨されている。

フレイルの人も、処方はβ3から始めるべきだという考え方が主流となっている。

 

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ベオーバ:第一選択

(50㎎) 1錠 1×食後(いつでも可)

・第一選択

・ベタニスと違って禁忌項目が少ない

 

ベタニス

ベタニスには、重大な副作用として高血圧(頻度不明)があります。収縮期血圧180mmHg以上、又は拡張期血圧110mg以上に至った症例も報告されています。

50mg 1日1回食後に飲みます。肝臓や腎層の悪い人は、半量の25mgからスタート

 

② 睡眠障害を有する夜間頻尿患者に対して推奨される睡眠薬

参照ガイドライン:

夜間頻尿診療ガイドライン[第2版](2020年5月25日)

編集:日本排尿機能学会、日本泌尿器科学会

 

原則

不眠症状がみられる場合は不眠に対する治療が必要であると考えられるが,まずは非薬物療法から試みる。非薬物療法により不眠症状の改善がみられない場合に対して,睡眠薬の投与が推奨される

・ただし,ベンゾジアゼピン系睡眠薬は第一選択としては推奨されない。

・入眠困難,中途覚醒,早朝覚醒といった不眠の症状に合わせて睡眠薬を選択し処方することが推奨される

・睡眠薬以上に不眠そのものが転倒・骨折のリスク因子となることも指摘されているため,非薬物療法で改善がみられない場合は,不眠を放置するのではなく薬物療法による治療が推奨される。

・ベンゾジアゼピン系睡眠薬はその筋弛緩作用による転倒および骨折のリスクを上げる不利益がある点を指摘し,第一選択には推奨しない見解が示されている。

・また,非ベンゾジアゼピン系睡眠薬においてもゾルピデム,ゾピクロンが強い選択性をもつ GABAA 受容体サブユニットのω1受容体は小脳に多く分布するため,平衡機能障害という別の転倒誘発リスクになることが指摘されている。

・いずれの薬剤においても高齢者では成人より副作用が出やすく半減期が長くなりやすいことや,肝機能および併用している薬剤等についても十分に考慮した上で処方を行うことが求められる

 

推奨される睡眠薬
① エスゾピクロン(ルネスタ®)

エスゾピクロンはω1受容体への親和性が低く,また半減期が約 5 時間程度であるため,入眠困難だけでなく夜間頻尿に多くみられる中途覚醒に対しても有効である。

 

② スボレキサント(ベルソムラ®)

早朝覚醒を伴う場合はさらに半減期の長いスボレキサント(ベルソムラ®)が推奨される

・スボレキサントは GABAA 受容体に作用しないことから筋弛緩作用は少ない

・投与後の排尿回数の有意な改善効果も報告されている

 

③ ラメルテオン(ロゼレム®)

・明らかに夜間頻尿が不眠よりも先行しており,元々の睡眠には問題がなかったという場合は,半減期が短く抗利尿ホルモンの増加に伴う夜間排尿量の減少も期待できるラメルテオン(ロゼレム®)がよいと考えられる。

・ラメルテオンはメラトニン受容体作動薬であるが,メラトニンは膀胱容量の増加や抗利尿ホルモンの夜間分泌の亢進といった効果もある

・ラメルテオン投与前後の睡眠と夜間排尿を検討した報告では,投与 4 週後,不眠は改善し夜間排尿量の有意な低下と夜間膀胱容量の有意な増加が報告されている

 

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