インフルエンザウイルス
・インフルエンザウイルスは、ウイルス表面に、2種類の糖タンパク質を発現している。
・1つは、ヘマグルチニン (hemagglutinin: HA)といい、ウイルスが細胞に感染するとき、細胞表面に吸着する働きをもつ。
・もう1つは、ノイラミニダーゼ(neuraminidase:NA)で、感染細胞内で子孫ウイルスが複製され、ほかの未感染細胞に出芽(飛び出していく)する際、もとの細胞に接着せず遊離しやすくする働きをもつ。つまり、HAはウイルスを細胞に接着するノリの役割があり、NAは子孫ウイルスが感染細胞から遊離するハサミの役割がある。
・NA 阻害薬を使用すると、子孫ウイルスが感染細胞から遊離できず元の感染細胞周囲に塊となる。
・細胞に感染したインフルエンザウイルスは、エンドサイトーシスにて細胞内にとり込まれ、ウイルスス遺伝子は細胞質に放出される。
・子孫ウイルス遺伝子の転写・複製はウイルス自身のRNAポリメラーゼ(合成酵素)とともに、別途、プライマーも必要になる。インフルエンザウイルスは、マイナス鎖RNAウイルスのため自らブライマーを複製できない。そこで、感染細胞に存在するキャップ依存性エンドヌクレアーゼ(cap-dependent endonuclease:CEN)を使ってプライマーを作らせるが、CEN阻害薬は、このプライマー合成を阻害する。つまり、ウイルスRNAからmRNAへの転写を阻害することで、子孫ウイルスの遺伝子複製を阻害する。
感染経路
・飛沫→マスク
・接触感染→手指衛生(手洗い、アルコール)
重症化しやすいハイリスクグループ(CDC見解)
① 5歳以下の小児(特に2歳以下)
② 65歳以上の高齢者
③ 妊婦および産後2週間以内の褥婦
④ 慢性疾患患者(気管支喘息を含む呼吸器疾患、高血圧を除く心血管疾患、腎疾患、肝疾患、血液疾患、内分泌疾患、神経疾患)
⑤ 免疫不全患者
⑥ 施設入所者
感染性のある時期
・潜伏期間1~3日(平均1.5日)
・発症1~2日前から発症後5~7日間は感染性あり(5~10日間)
・小児や高齢者における排出期間は成人より長く10日以上続くといわれている
症状
・発熱、咳、倦怠感、頭痛、関節痛(鼻汁、咽頭痛もあり)
・嘔気、下痢などの消化器症状を呈することもある(特にB型)
・「咳、発熱、突然発症」の陽性尤度比は1.7~5.1と診断に有用
診断
迅速検査
・感度62.3%、特異度は98.2%
→検査陽性ならインフルエンザだが、陰性だからと言って否定できない
(インフルエンザでも3人に1人は検査陰性!)
抗インフルエンザ薬
種類・作用機序
・抗インフルエンザ薬は、大きく分けて、「ノイラミニダーゼ (neuraminidase: NA)阻害薬」と、「キャップ依存性エンドヌクレアーゼ (cap-dependent endonuclease: CEN)阻害薬」の2種類がある。
・NA阻害薬は、内服薬であるオセルタミビル(タミフル®), 吸入薬であるザナミビル(リレンザ®) とラニナミビル(イナビル®)、点滴静注薬であるペラミビル(ラピアクタ®)の4種類がある
・ノイラミニダーゼ(neuraminidase:NA)は、感染細胞内で子孫ウイルスが複製された後、未感染細胞に出芽(飛び出していく)する際、もとの細胞に接着せず遊離しやすくする働きをもつ。そのためNA 阻害薬を使用すると、子孫ウイルスが感染細胞から遊離できず元の感染細胞周囲に塊となる。
・CEN阻害薬は内服薬のパロキサビルマルボキシル (ゾフルーザ®)のみである。
細胞に感染したインフルエンザウイルスは、エンドサイトーシスにて細胞内にとり込まれ、ウイルスス遺伝子は細胞質に放出される。
・子孫ウイルス遺伝子の転写・複製はウイルス自身のRNAポリメラーゼ(合成酵素)とともに、別途、プライマーも必要になる。インフルエンザウイルスは、マイナス鎖RNAウイルスのため自らブライマーを複製できない。そこで、感染細胞に存在するキャップ依存性エンドヌクレアーゼ(cap-dependent endonuclease:CEN)を使ってプライマーを作らせるが、CEN阻害薬は、このプライマー合成を阻害する。つまり、ウイルスRNAからmRNAへの転写を阻害することで、子孫ウイルスの遺伝子複製を阻害する。
抗インフルエンザ薬の使い分け
内服薬
・内服薬はオセルタミビル(タミフル®)とパロキサビルマルボキシル(ゾフルーザ®)の二つ
・オセルタミビルは剤形がカプセル以外にもドライシロップがあり、低年齢の乳幼児にも処方しやすい
・パロキサビルは単回内服で治療が完結する
・パロキサビルは錠剤のみで、直径が5mm程度ある。1歳から使用可能であるが、錠剤を内服した経験のある3~4歳あたりからの処方を考えた方が無難である。
吸入薬
・吸入薬にはザナミビル(リレンザ®)とラニナミビル(イナビル®)がある
・ラニナミビルは単回吸入で治療が完結するが、初めての吸入で失敗してしまった場合、再度処方が必要になる
・ザナミビルの場合、1日2回吸入を5日間行うが、吸入に失敗しても前倒しで薬剤を使えるため、初めて吸入を行う患者には安心できる
点滴静注薬
・ベラパミル(ラピアクタ®)は単回投与で治療が完結する。
・基本は入院での使用
・単回投与でも解熱しない場合、患者の臨床症状により連日投与可能である。
症状がつよい場合の使い分け
・嘔気嘔吐や、下痢が強い場合は吸入薬を選択した方がよい
・激しい咳嗽や呼吸苦など、下気道症状が強い場合は吸入薬は禁忌であり、内服薬を処方する
院内感染対策
感染した職員の対処
・発症後5~7日間は職場に来てはいけない(歩くバイオテロ)
・本来7日間休業が理想だが、現実的には5日間か(院長に判断を任せる!)
隔離解除の判断
・暴露後5日間無症状(潜伏期間1~5日だから)
・発症後5~7日間(入院患者は7日間で!)
・継続的な監視を行っても新規の症例発症が一定期間*認められなかった場合には、アウトブレイクの終息と判断して良い。
(*一定期間: 非常在性の病原体の場合は、一般的には潜伏期間の 2 ~ 3 倍の期間)
・アウトブレイクの終息が確認された後、感染源、感染経路に関しての調査結果を参考に、 一時的に強化していた種々の対策を継続可能な対策に切り替えていく。
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