疑うべき時は?
患者の呼吸不全を説明可能な聴診所見や胸部画像所見に乏しい場合は、肺血栓塞栓症(Pulmonary thromboembolism: PTE)を鑑別に挙げる必要がある。
症状:下記の症状を認める場合は一度はPEを疑うこと!
・呼吸困難
・胸痛
・失神
・動悸
・咳嗽
・原因がはっきりしない頻呼吸、頻脈
・低酸素
診察所見
・Ⅱ音亢進、単一Ⅱ音(肺高血圧による)
・左傍胸骨抬起(たいき)
胸骨左縁第4~5肋骨周囲拍動を触知すること
胸骨裏面にある右室の拡大所見
右室収縮圧の著明な上昇(50~60mmHg以上)で起こる
・三尖弁逆流
右室圧上昇による
吸気時に増悪する左傍胸骨収縮期雑音
検査
<心電図>
・移行帯左方移動(時計回転)
・SⅠQⅢTⅢ(Ⅰ誘導で深いS波、Ⅲ誘導にQ波と陰性T波)
・V1~V3陰性T波(と軽度ST上昇)
・V1、2、Ⅲ、aVF 陰性T波(右心負荷所見)
※ACSとの鑑別として、PTEではACSに比べて頻脈になることが多い
参照(このサイトより引用):https://www.kango-roo.com/learning/2097/
<心エコー>
参照:RUSH (Rapid Ultrasound inShock)、POCUSとしてのPUMP(心エコー)
・右室拡大(右室/左室比>0.9)、左室D-shape
<胸部造影CT>
ゴールドスタンダード
D-dimer
D-dimerのカットオフ値:
・通常500ng(0.5µg)/mL以上を陽性。
・ただし50歳以上では、年齢×10ng(年齢×0.01µg)/mLをカットオフとする。
診断手順
PRRC(pulmonary embolism rule-out criteria)
下記の8項目がすべて陰性なら、肺血栓塞栓症の可能性は低い(D-dimerは不要)
1項目でも陽性なら、Wellsクライテリア計測へ進む
・心拍数≧100/分
・SpO2<95%(94%以下)(room air)
・4週間以内の外傷、手術
・喀血
・ホルモン療法、エストロゲン製剤使用者
・片側性の下肢腫脹
・DVTかPTEの既往あり
modified Wells criteria:検査前予測スコア
・他の診断が見当たらない(3点)
・頻脈>100回/分(1.5点)
・過去4週間以内の手術や固定、3日以上の長期臥床(1.5点)
・深部静脈血栓症や肺血栓塞栓症の既往(1.5点)
・血痰(1点)
・がん(治療中、6か月以内に治癒、緩和治療中)(1点)
5点以上ならPEの可能性が高く、造影CTの適応
4点以下ならD-dimer(Dダイマー)を測定し、陰性ならPEは否定的、陽性なら造影CTへ
D-dimerのカットオフ値
・通常500ng(0.5µg)/mL以上を陽性。
・ただし、50歳以上では、年齢×10ng(年齢×0.01µg)/mLをカットオフとする。
治療
・ヘパリン80単位/㎏静注し、18単位/㎏/時で持続静注
※ヘパリン持続静注の作り方:
ヘパリンNa(1000単位/10mL)1A+生食40ml
(1000単位/50mL=200単位/1ml)
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