小脳の機能
・小脳はあらゆる運動に関して個々の筋同士の協調性を調節している。
小脳症状の種類
四肢の失調 (ataxia)
・微細な運動の障害。特に一側性、上肢末端部に強く現れる。 >>FN test, KH test
体幹失調(歩行障害)
・特に小脳虫部(PICA支配領域)の障害
・四肢失調や構音障害が目立たない場合があることに注意
(「歩けない眩暈患者は帰すな」の原則)
酩酊様歩行
・両足を広げて歩く(歩幅が広い)
測定障害障(dysmetria)
・運動の範囲、力を加減できない。 >>NF test (open and closed eyes)
変換運動障害 (adiadochokinesia)
・拮抗する筋群が強調しない。 >>回内回外試験 ,diadochokinesia test
跳ね返り現象 (rebound phenomenon)
・自分の拳を止めることができない >>rebound test
失調性構語障害 (dysarthyria)
・失調性=断綴性構語障害 ,scanning speech
筋緊張低下 (hypotonia)
・患側の筋が弛緩し、深部腱反射も低下する。
企図振戦 (intention tremor)
目的を実行するときに出現する振戦。
垂直性眼振
・特異度は高いが感度は低い(なくても否定できない)
身体診察
1.指鼻指試験 (finger-nose-finger test:FNF test)
・患者の鼻、検者の示指の先、患者の鼻、の繰り返し。
・患者の手が伸びる位置に検者の示指を置き、毎回位置を変えること。
2.手指回内回外試験(diadochokinesia test)
3.跳ね返り現象(rebound phenomenon)
・検者が抵抗しつつ、患者に60度くらいからさらに肘屈曲させる。検者が患者の手を持って維持し,患者に自分自身の胸に向かって力いっぱい手を引かせる.
・そして突然検者の手を離し抵抗を取ってしまう.
↓
・健常者では,自分の手で自分の胸を打つことはないが、小脳に異常があると自分の胸を強打してしまう(これを本現象陽性とする)
・健常者では,自分の手で自分の胸を打つことはないが、小脳に異常があると自分の胸を強打してしまう(これを本現象陽性とする)
・この現象は,手を胸に引くという動きを止める運動(拮抗筋:上腕三頭筋)の開始の障害(時間測定障害)と、筋のトーヌス低下による要素とが合わさって起きている現象と言われている。
・この検査のときは,患者が自分で自分を打って怪我をすることがあるため、検者が患者の手をブロックできるように構えておくことが重要である
4.指タップ試験(finger tapping test)
・示指の指先を母指DIP関節にタップする。この際できるだけ示指を高い位置から、かつ早くリズミカルにタップするよう指示する。
→正確な位置にタップできず、速度も遅い場合は小脳失調と錐体路障害が疑われる。
5.継ぎ足歩行(tandem gait )
・一直線上を歩くように、踵を反対側のつま先に当てるように歩く継ぎ足歩行を行う。
・小脳障害があると強調運動障害により歩行は失調性となる。
・バランスが取れず、歩行様式はwide-baseとなったり、バランスを崩してよろけてしまう。
6.肩揺さぶり試験(shoulder shaking test)
・立位で腕をだらっとさせ、検者が患者の体幹・肩を動かして腕を揺さぶる
・ 揺れすぎるか
7.踵膝試験(heel-knee test)
・仰臥位で、一側の踵で反対の膝に触れ、次に下腿前面をこすり降ろさせる
8.Romberg試験(ロンベルグ試験)
・両足のつま先をそろえて立たせ、開眼のままで身体が動揺しないかをしばらく観察した後、閉眼させる。
・閉眼により、体幹が動揺した場合を陽性(→脊髄性の運動失調を疑う)
9.Mann試験(マン試験)
・両足を前後に縦一直(前足の踵と後足のつま先をつける)にして立たせ、開眼のままで身体が動揺しないかを観察する
・体幹が動揺した場合を陽性(→脊髄性の運動失調を疑う)
・ロンベルグ試験に比べバランスをとるのが難しく、ロンベルグ試験に比べると高感度に深部感覚の異常を検出できる(高齢者では偽陽性になってしまうことがある)
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