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利尿薬(種類、使い分け)

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内服薬の力価の換算

フロセミド錠20㎎=アゾセミド(ダイアート®)30㎎=トラセミド(ルプラック®)4㎎

 

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ループ利尿薬

・フロセミド(ラシックス®)、アゾセミド(ダイアート®)、トラセミド(ルプラック®)など

・ヘンレループ(Henle係締)上行脚膨大部尿細管腔側のNa-K-2Cl共輸送体(NKCC2)阻害によるNa再吸収抑制

・Na排泄作用が最も強く、主として浮腫性疾患や進行した腎機能障害例での体液量増加時に使用する

・短時間で利尿作用を発揮するため、治療を急ぐ病態では第一選択となる

降圧効果はあまり強くない

・ループ利尿薬が心不全患者の予後を改善させるデータはなく、高用量のループ利尿薬の使用は生命予後の悪化を招く。

 

 

① フロセミド(ラシックス®)

・持続時間は6時間(lasting for six hours)

・心不全の際には腸管浮腫や腸管血流低下により吸収率が落ちるため、静注投与が望ましい。

・内服の吸収率は50%程度(静注から内服への切り替えの際は静注投与量の2倍量とする)

・高用量のループ利尿薬の使用は生命予後の悪化を招く。

・そんため、フロセミド40㎎以上のループ利尿薬が必要になる症例では、トルバプタンの併用を考慮した方がよい。

 

急性期治療

フロセミド(ラシックス®)

20~100㎎静脈注射 12時間~24時間毎

 

1回の最大投与量(静注)

・健常者:40㎎
・急性心不全:40~80㎎
・ネフローゼ症候群:120㎎
・中等度腎不全(GFR 20~50):120㎎
・重症腎不全(GFR<20):200㎎
※投与間に尿量が少ない場合は最大6時間毎までに投与回数を増やす(最大1日4回まで)

 

低アルブミン血症の場合:

20%アルブミン200ml+ラシックス60㎎混注

 

② トラセミド(ルプラック®)

・ループ利尿薬

・カリウム保持作用あり(フロセミドで低K傾向の場合に切り替えも考慮する)

 

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サイアザイド系利尿薬

・トリクロルメチアジド(フルイトラン®)、ヒドロクロロチアジド(ヒドロクロロチアジド®)、インダパミド(ナトリックス®)

・遠位曲尿細管腔側のNa-Cl共輸送体(NCC1)を阻害してNa再吸収を抑制

・降圧作用があり、主として外来での降圧治療に用いられる

・作用時間が長く、1日1回投与で十分

高血圧に対しては少量で有効(増量しても効果は変わりなく副作用が増す危険性があるため、少量投与が推奨されている)

・利尿作用は強くない

・腎機能障害時(eGFR<30mL/分)には効果が低い

・ループ利尿薬との併用により利尿効果が増大するため、浮腫性疾患や腎機能障害時にしばしば併用される

・使用目的

外来での高血圧治療

高カリウム血症の治療

利尿薬抵抗性の際のループ利尿薬との併用

・副作用として、低K血症

例)

トリクロルメチアジド(フルイトラン®) 1回1㎎ 1日1回朝食後

インダパミド(ナトリックス®) 1回0.5~2㎎ 1日1回

 

カリウム保持性利尿薬

・スピロノラクトン(アルダクトンA®)、エプレレノン(セララ®)

・皮質集合管の上皮型Naチャンネル(ENaC)を抑制し、Na利尿、K排泄抑制

・副作用として高K血症

 

スピロノラクトン(アルダクトンA®)

・第一世代

・高アンドロゲン作用、プロゲステロン様作用により女性化乳房やインポテンツ、生理不順の副作用がある

・利尿薬抵抗性の際にループ利尿薬と併用、利尿薬による低K血症の改善

・初期用量12.5㎎/日から開始。最大50㎎まで

 

エプレレノン(セララ®)

・ミネラルコルチコイド選択性が高く、性ホルモン作用の副作用が少ない

心機能が低下した心不全に対して使用(推奨クラスⅠ、エビデンスレベルA)

・初期用量25㎎/日から開始

 

ヒト心房性Na利尿ペプチド(human atrial natriuretic peptide;HANP)

・カルペリチド(ハンプ®)

・集合管でのナトリウム、水再吸収阻害、腎輸入・輸出細動脈の血管拡張によるGFR増加にともなうNa利尿作用(腎血流温存)、全身血管拡張作用

・血圧の上昇および体液貯留を伴う急性心不全が適応

・副作用として血管拡張作用による低血圧に注意

例)

ハンプ2A+5%ブドウ糖40ml

1ml/時(0.1γ)で開始。収縮期血圧が100mmHg 以下にならないように調整しながら0.2γまで増量

 

バゾプレシンV2受容体拮抗薬(トルバプタン:サムスカ®)

トルバプタン(サムスカ®)

・集合管バゾプレシンV2受容体拮抗による自由水排泄作用

・他の利尿薬で効果不十分(フロセミド40㎎)な心不全および肝硬変による体液貯留に対し用いる

・腎機能を保ちながら利尿効果が期待できる

・副作用として、急激な高Na血症、肝障害

・入院下で投与開始すること。

「口渇を感じない、水分摂取ができない患者」には禁忌

(基本的には「目を開けていて、水が飲める患者」にのみ投与可能)。

・トルバプタンは自由水は排泄させるが、電解質の排泄は増加させないため、トルバプタン投与時はフロセミド等のナトリウム排泄型利尿薬(ループ利尿薬、サイアザイド系利尿薬)を必ず併用すること

・導入(再開)の場合は入院が必要

・実臨床では、既存利尿薬に抵抗性のうっ血性心不全に対して、長期予後の改善を目的にトルバプタンを15日以上投与する場合が少なくない。しかし、長期投与に関するエビデンスは乏しい。

 

※ 長期投与について (日本循環器学会・日本心不全学会合同ステートメント:バソプレシン V2 受容体拮抗薬の適正使用に関するステートメント)

国内治験では2週間以上の使用経験はなかったが、臨床現場では、やむを得ず継続する症例も散見され、入退院を繰り返す症例に長期処方されている。

・海外で行われた心不全患者を対象としたトルバプタンを用いた大規模試験である EVEREST Outcome trial において、長期予後改善効果は示されなかった 。

・したがって、予後改善を目指した長期投与は現段階では受け入れられていないが、患者のQOL 改善を目的として主治医の判断で長期投与する場合は、慎重な経過観察が要求される。

 

 

適応

①ループ利尿薬、サイアザイド系利尿薬等で効果不十分な心不全による体液貯留

・1回7.5㎎ 1日1回朝食後から開始(高齢者、やせ型の人では3.75㎎で開始)

・最大15㎎/日

・利尿が得られたら併用するループ利尿薬の減量を考慮する

・投与後は飲水制限をしないこと

・トルバプタンが奏功した場合、併用利尿薬を可及的に減量し、腎保護に努めること

 

②ループ利尿薬、サイアザイド系利尿薬等で効果不十分な肝硬変による体液貯留

・フロセミド20~40mg、スピロノラクトン25~50㎎/日を内服しても治療抵抗性の腹水を認める場合に併用

・3.75㎎/日から開始、1週間開けて最大7.5㎎/日まで

 

②常染色体優性多発性腎嚢胞の進行抑制

 

③SIADHにおける低Na血症の改善

 

定期検査(血清ナトリウム測定、肝機能)

血清Na値:

・投与開始4~6時間後

・投与開始8~12時間後

・その後1週間は、血清ナトリウム値を毎日測定

肝機能検査:

・開始前、開始2週間は頻回に

 

炭酸脱水酵素阻害薬

・アセタゾラミド(ダイアモックス®)

・近位尿細管での重炭酸(HCO3-)の吸収を阻害することにより、同時に吸収されるNaの再吸収を阻害

・Na再吸収阻害作用は弱く、Naを排泄させる目的(降圧や浮腫)以外に使用される

・緑内障、月経前緊張症、中枢性睡眠時無呼吸症候群、周期性四肢麻痺予防、サリチル酸やフェノバルビタールなどの薬剤排泄増加目的(重炭酸とともに投与して尿をアルカリ化して排泄促進)など

・副作用としてアニオンギャップ正常代謝性アシドーシス、低K血症

 

レジデントノート増刊 Vol.24 No.2 厳選! 日常治療薬の正しい使い方〜作用機序から納得! 外来・病棟の処方に自信がもてる30テーマ – 2022/3/23

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レジデントノート 2021年9月 Vol.23 No.9 治療効果が変わる! 利尿薬の選び方・使い方〜根拠をもって使うための基本知識と病態に応じた処方のコツを教えます

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