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梅毒(身体所見、検査)

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疾患

・潜伏期約3週間

・他の性感染症の合併の可能性を考慮する(HIV、淋菌、クラミジア)

・最近はHIV合併例増えている

・HIV感染患者は神経梅毒に進行する率が高い(そのため神経症状の有無に関わらず髄液検査が推奨される)

・近年の傾向として、異性間性的接触による報告数の増加が認められている。また年齢分布については、男性は20~50代、女性は20代に多い。

感染症法における取り扱い

全数報告対象(5類感染症)であり、診断した医師は7日以内に最寄りの保健所に届け出なければならない。

 

 

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感染経路

・主に性交渉などの粘膜接触

・輸血

・針刺し事故

・胎盤を介した母子感染(近年は稀)

 

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病期ごとの臨床像

第 1 期梅毒

・曝露後10~90日

・感染後 3 週頃に T. pallidum が進入した局所(性器、肛門、口腔)に初期硬結を作り、速やかに潰瘍化する(硬性下疳)。

・典型的には無痛性

・「無痛性横痃」と呼ばれる所属リンパ節腫脹を併発することが多い。

 

第 2 期梅毒

・感染後 3 か月頃(T. pallidum が全身に広がる頃)

・検査での偽陰性が少なく、貴重な診断機会である

・発熱、咽頭痛、全身リンパ節腫脹などの全身症状が出現する。

・皮膚には梅毒性バラ疹、梅毒性丘疹、扁平コンジローマ、梅毒性脱毛粘膜疹(口腔内、直腸炎)を生じる。

・皮疹は色調(ピンク~褐色)や性状が多彩(落屑を伴う場合や膿疱や潰瘍を形成する場合もある)であることや、手掌や足底にも所見を認めることが特徴。
参照(このサイトより引用)https://www.earth-ikebukuro.com/syphilis
第3期梅毒 (3年〜10年)
・感染後3年ほど治療を受けずに経過すると、全身にえんどう豆大から鶏卵大のゴムのような弾力のある腫瘍(ゴム腫)や、しこり(結節性梅毒疹)ができて、皮膚に潰瘍を形成する。
(現在ではこの段階まで治療されない梅毒はほとんどみられない)
第4期梅毒 (10年以上)
・さらに治療を受けずに放置すると、感染後10年ほどで、大動脈瘤や大動脈炎といった心臓や血管の異常、および進行性のまひ、歩行障害(脊髄癆)や認知症の症状(神経梅毒)が出現する。
(抗生物質の投与が広く行われている昨今、このような病期の梅毒を見ることはまずない)

 

検査

・梅毒検査には,病原微生物の梅毒トレポネーマ(TP)を抗原とした「トレポネーマ抗原法(TP法)」と類脂質抗原を用いた「脂質抗原法(STS:Serologic test for syphilis)」の2種類がある。

・両法とも、梅毒感染により生体に産生される抗体を検出することで梅毒感染の有無を判定する手法である。

・TP法は梅毒の細菌そのものに対する抗体を検出するため、梅毒感染に特異的である。

・一方STS法は、梅毒により破壊された組織に存在するカルジオリピン様物質に対する一種の自己抗体を検出するものであり、梅毒感染以外の病態・感染症などでも陽性となることがある。

・STS法は感染初期から陽性となり、しかも治療により陰性化するため,治療効果判定の指標としても使用されている。

・そのため、脂質抗原法とトレポネーマ抗原法の両検査を行い、組み合わせて判定する

・梅毒の現在の活動性を反映するのはSTS法(RPRなど)であり、治療適応と治療効果判定にはRPRを用いる

 

TP法とSTS法の違い

TP法(トレポネーマ抗原検査:TPがつく)

梅毒の菌体そのものに対する検査(存在診断)

陽性の場合、梅毒菌が「現在いる」、または「過去にいた」ことを示す

・TPHA法

・FTA-ABS法

・TPI法

・TPLA法など

 

STS法(非トレポネーマ抗原検査:TPがつかない)

類脂質抗原を用いた脂質抗原法、活動性の検査

・補体結合反応(緒方法,Wassermann反応)

・RPR(rapid plasma reagin) 法

・梅毒凝集法

・ガラス板法(VDRL法)

 

参照)各検査の特徴

TPHA(treponema pallidum hemagglutination test)

・トレポネーマ抗原系の抗体検査
・すでに治癒した過去の感染でも陽性となり、一度陽性化すると生涯陰性化しない

 

TPLA(treponema pallidum latex agglutination)、FTA-ABS(fluorescenttreponemal antibody absorption)

・T. pallidum 特有の抗原を用いる特異的な検査であり、陽性であれば梅毒の存在、あるいは梅毒既感染の可能性が高い。ほぼ生涯にわたり陽性となるため、梅毒の既往を知るには有用である。
・その反面、治癒後も陽性を保つため、治療効果の判定には数値が低下する RPR が適している。
・約 1%に生物学的偽陽性が起こることがあり、発熱時や予防接種投与、他のトレポネーマ感染症(T.caratenum 他)などが原因として知られている(生物学的偽陽性 0.1~0.5%)。・TPLA はラテックス比濁法の原理に基づき、リコンビナント TP 抗原を用い、光学的に血清中の抗 TP 抗体を検出・定量測定する。陽性化には 4~6 週間程度を要する。
・FTA-ABS は T. pallidum の菌体成分ではなく T. pallidum そのものを用いて間接蛍光抗体法により測定する。よって、TPLA 法よりも感度がよく鋭敏である。
・FTA-ABS 法は IgM とIgG を測定する方法の 2 種類がある。FTA-ABS(IgG)は感染してから約 2~3 週間で陽性となるため、早期での梅毒感染の確定診断に用いられる。手技や操作に熟練を要するだけでなく、蛍光顕微鏡が必要となることから TPLA ほど普及はしていない。

 

RPR(rapid plasma reagin)
・ cardiolipin-cholesterol-lecithin 抗原(非トレポネーマ抗原)に対する抗体を調べる非特異的な検査
・SLE などの膠原病や慢性肝疾患、伝染性単核球症、関節リウマチ、結核、HIV 感染、血液製剤投与(Ig 含む)、妊婦、高齢者などでも上がることがある(生物学的偽陽性 5~20%)。
・RPR は梅毒感染初期(2~3 週間)に陽性化し、臨床経過と相関するため、治療効果の判定に用いられる。

・梅毒の現在の活動性を反映するため、治療適応と治療効果判定にはRPRを用いる(Re-checkのRと覚える)

・通常、RPRが8倍以上で治療適応と考え、RPRが治療開始前の1/4に下がれば治療成功と考える

 

 

TP法とSTS法の解釈

・梅毒感染症の検査に2種類の抗体法を併用するのは,TP法とSTS法とで異なる特徴があるためである。
・STS法はTP法より早期に陽性化し,治療により陰性化する。
・実際、STS法では感染後3-4週間で陽性となるのに対し,TPHA法ではそれより2週間ほど遅れて陽性となることが多い。
・STS法だけが陽性となる場合は,感染初期または生物学的偽陽性(BFP)が考えられる。
・BFPは20-30歳の女性に多く出現する。出現頻度は約1.6%とされ,妊娠,肝疾患や膠原病・自己免疫疾患(SLEでは診断基準の1つ)で高率に出現する。
・BFPの抗体価は一般的に低値で,疾患の経過とともに陽性となったり、陰性となったりすることが多いのが特徴である。
・TP法とSTS法が陽性であれば梅毒感染と診断可能だが、治療を特に行わなくても長時間経過した場合にもSTS法は陰性となる。
・なおTPHA法でも偽陽性反応があり、ハンセン病、伝染性単核球症、異好抗体あるいは梅毒TPと共通抗原を持つTPによる感染でも陽性となりるが頻度は極めて低く、他の検査を参考にして診断することが可能である。
STSとTPHAの検査結果解釈

TPHA(+):梅毒がいる/いた

STS(+):その活動性がある

 

治療

・日本では、梅毒の世界的な標準治療薬であるベンジルペニシリンベンザチン筋注製剤が使用できない状況が長年続いていたが、2021年9月に国内での販売製造が承認された。同製剤は早期梅毒、後期梅毒、早期先天梅毒に適応があるが、神経梅毒の治療には使用されないことに注意が必要である。

・神経梅毒を合併している場合

ペニシリンG静注

・神経梅毒を合併していない場合

アモキシシリン内服

 

「性感染症 診断・治療 ガイドライン 2020」の梅毒の項を一部改訂しました (2023.06.13)

 

 

 

 

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