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POEMS症候群(Polyneuropathy, Organomegaly, Endocrinopathy,M-Protein, and Skin Changes Syndrome)

参考:

 

 

1.概要

・形質細胞の単クローン性増殖が基礎に存在し、形質細胞が産生する血管内皮増殖因子(VEGF)による血管透過性亢進が引き金となって多彩な臨床症状が出現する稀な疾患(人口10万人あたり0.3人)

・現在、本邦においては「クロウ・深瀬症候群」、欧米では「POEMS症候群」と呼ばれることが多い。

POEMSとは、

多発性神経炎(Polyneuropathy)

臓器腫大 Organomegaly)

 内分泌異常(Endocrinopathy)

M蛋白(M-Protein)

皮膚症状 (Skin Changes)の頭文字を表している。

・1997年に、本症候群患者血清中の血管内皮増殖因子(VEGF)が異常高値となっていることが報告されて以来、VEGFが多彩な症状を惹起していることが推定されている。

 

2.疫学

 

・深瀬らの報告以来、我が国において多くの報告がある。発症に地域特異性はなく、全国に広く分布している。また、発症は20歳代から80歳代と広く分布している。
・平均発症年齢は男女ともに48歳であり、多発性骨髄腫に比較して約10歳若い。

・2004年の厚生労働省難治性疾患克服研究事業「免疫性神経疾患に関する調査研究班」による全国調査では、国内に約340名の患者がいることが推定された。

・欧米からの報告は少なく、日本においてより頻度の高い疾患であるとされている。

 

原因

 

・本症候群の多彩な病像の根底にあるのが形質細胞の増殖であり、恐らく形質細胞から分泌されるVEGFが多彩な臨床症状を惹起していることが実証されつつある。
・VEGFは強力な血管透過性亢進および血管新生作用を有するため、浮腫、胸・腹水、皮膚血管腫、臓器腫大などの臨床症状を説明しやすい。
・しかし、全例に認められる末梢神経障害(多発ニューロパチー)の発症機序については必ずしも明らかではない。
・血管透過性亢進により血液神経関門が破綻し、通常神経組織が接することのない血清蛋白が神経実質に移行することや神経血管内皮の変化を介して循環障害がおこるなどの仮説があるが、実証には至っていない。

・約半数の患者は、末梢神経障害による手や足先のしびれ感や脱力で発症し、この症状が進行するにつれて、皮膚の色素沈着や手足の浮腫が出現する。

・残りの半数では、胸水・腹水や浮腫皮膚症状、男性では女性化乳房から発症する。これらの症状は未治療では徐々に進行して行き、次第に様々な症状が加わってくる。

 

 

症状

・末梢神経障害はほぼすべての患者に認め(98~100%)、約半数で初発症状となる

・血管透過性亢進から「胸腹水」「心嚢液貯留」「全身浮腫」を認める

「しびれて痛い全身性浮腫」の場合に疑う。

・皮膚の肥厚、多毛、色素沈着

・内分泌異常は「耐糖能異常」や「甲状腺機能低下症」が多い

 

検査所見

診断は末梢神経障害や骨病変の精査、血液検査によるM蛋白の検出や血管内皮増殖因子の高値などに基づいてなされる。

・血清VEGF上昇

・単クローン性タンパク質(特にλ軽鎖、血清蛋白電気泳動では同定できない可能性があり)

・血小板増多

・神経生検、神経伝導速度(CIDPとの鑑別)

治療法

 

・標準的治療法は確立されていない。
・少なくとも形質細胞腫が存在する症例では、病変を切除するか、あるいは化学療法にて形質細胞の増殖を阻止すると症状の改善を見ること、血清VEGF値も減少することから、形質細胞腫とそれに伴う高VEGF血症が治療のターゲットとなる。

 

(1)孤発性の形質細胞腫が存在する場合は、腫瘍に対する外科的切除や局所的な放射線療法が選択される。しかし、腫瘍が孤発性であることの証明はしばしば困難であり、形質細胞の生物学的特性から、腫瘍部以外の骨髄、リンパ節で増殖している可能性は否定できず、局所療法後には慎重に臨床症状とVEGFのモニターが必要である。
(2)明らかな形質細胞腫の存在が不明な場合又は多発性骨病変が存在する場合は、全身投与の化学療法を行う。同じ形質細胞の増殖性疾患である多発性骨髄腫の治療が、古典的なメルファラン療法に加えて自己末梢血幹細胞移植を伴う大量化学療法、サリドマイドあるいはボルテゾミブ(プロテアソーム阻害剤)などによる分子標的療法に移行していることに準じて、本症候群でも移植療法、サリドマイド療法が試みられている。副腎皮質ステロイド単独の治療は一時的に症状を改善させるが、減量により再発した際には効果が見られないことが多く、推奨されない。

予後

 

・有効な治療法が行われない場合の生命予後は不良である。
・全身性浮腫による心不全、心膜液貯留による心タンポナーデ、胸水による呼吸不善、感染、血管内凝固症候群、血栓塞栓症などが死因となる。
・2000年頃から行われ始めた自己末梢血幹細胞移植を伴う大量化学療法の中期(治療後数年)予後は良く長期寛解が期待されているが、移植後5年以上経過すると一定の頻度で再発が見られ、長期予後については今後の検討が必要である。
・本邦から9症例におけるサリドマイド療法の有効性を示す報告がなされている、2015年3月に、サリドマイド療法に関する多施設共同ランダム化群間比較の医師主導治験が終了し承認申請に向けて準備中である。

 

 

 

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