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巨細胞性動脈炎(かつては側頭動脈炎)

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参考サイト

巨細胞性動脈炎|医療従事者向け 血管炎各疾患の解説|難治性血管炎の医療水準・患者QOL向上に資する研究
医療従事者向け 血管炎各疾患の解説のページ本班の目的は、全身性血管炎をより早く正確に診断し、有効な治療を行うための診療指針(ガイドライン)を作ること、この病気について、医療 に携わっている方々や患者さん、そして多くの国民の方々に知っていただ...

 

 

 

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疾患概要

・大型・中型の動脈に巨細胞を伴う肉芽腫を形成する動脈炎である。
・特に内頚、外頚、椎骨、鎖骨下動脈とその分枝が侵される。
50歳以上の高齢者に発症し、若年者に発症する高安動脈炎と対照的である。
・男女比はほぼ1:2~3で女性に多い。
・患者の40~50%にリウマチ性多発性筋痛症の合併を認め、リウマチ性多発性筋痛症の約15%~30%は巨細胞性動脈炎を合併する。両者は極めて近似した疾患と考えられている。
・地理的な偏り及び遺伝素因が認められ、欧米白人に多く、日本を含めアジア人には少ない。
本疾患は厚生労働省の指定難病(指定難病41)に指定されている

※しばしば側頭動脈を傷害するため、以前は「側頭動脈炎」と呼ばれていたが、現在は「巨細胞性動脈炎」と名称が変更された。

 

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原因

・原因は不明だが、ウイルスなど微生物感染などの環境因子の存在が疑われる
・遺伝要因としてHLA-DR*04遺伝子との相関が報告されている。

症状

両側性の側頭部や後頭部の拍動性の頭痛(約2/3の症例)

初発症状として最多

片側性は少ない

発熱(多くの場合は微熱、ときに弛張熱)

高齢者では不明熱の原因となる

・倦怠感(約40%)

・浅側頭動脈の前頭または頭頂枝に圧痛、肥厚、結節、発赤。触診にて脈の減弱、消失

・顎跛行(jaw claudication):約半数の症例(感度は低い)

・視力・視野異常

血管炎による血流低下・消失による虚血性視神経症のため、発症初期にを呈し、約20%が視力の完全又は部分性の消失を来す。

前駆症状として複視、一過性黒内障が約10%でみられ、その約半数が失明に至る

・複視(外眼筋麻痺による)

・体重減少

・頭皮の感覚異常(髪を櫛でとかすときの知覚過敏)

・PMR合併例では朝のこわばり、両肩挙上困難、寝返り困難

 

 

病変

・大動脈とその分枝部の病変は20%に認められる。
・大動脈瘤は胸部・腹部に起こる。発症初期に15%認めるが、ゆっくりと増大し、3~5年以上経てから発見される。
・巨細胞性動脈炎における胸部及び腹部動脈瘤は健常者のそれぞれ17倍、2.5倍多いと報告されている。
・画像診断上、約42%の患者に鎖骨下動脈や腋窩動脈の狭窄を認める
・また、下肢では、約37%に浅大腿動脈、腸骨動脈、膝窩動脈に病変を認める。多く両側性であり、女性に多く(84%)、巨細胞性動脈炎を疑う場合には、四肢・頸動脈の拍動を触診すること、血管雑音を聴取することが重要である。

 

浅側頭動脈

 

参照(このサイトより引用):https://visual-anatomy-data.net/circulatory-system/artery/index-superficial-temporal-artery.html

 

検査

血液検査

・ESR亢進(>50㎜/時)、CRP上昇

 

動脈エコー(側頭動脈、総頚動脈、腋窩動脈、鎖骨下動脈)

・高周波プローブ(>15MHz)で観察

・側頭動脈halo sign(dark halo sign)

血管壁の浮腫を反映した低エコー像

血管周囲に低輝度な全周性の広がりを示す所見。全身血管炎や巨細胞性動脈炎などでみられる。

 

US Color Doppler of the right distal third of the common superficial temporal artery in acute TA. Transverse plane. Very high-frequency transducer at 18MhZ (Esaote-My Lab 70). Hypoechoic dark area ( ” halo ” ) is indicated by the yellow arrows (right side). On the right side: the same arterial segment in the greyscale.

 

・compression sign

プローブで血管を圧迫した際に、通常は消失するはずの血管壁が観察される所見

・腋窩動脈内・中膜肥厚(IMT)≧1㎜

 

FDG-PET CT

・感度80%、特異度79%

 

 

診断基準

・診断基準としては、1990年米国リウマチ学会(ACR)分類基準が広く用いられており、厚生労働省の特定疾患個人調査票もこの基準に準拠している。

・しかし、この基準では大型血管炎を有する巨細胞性動脈炎の診断感度が低いため、ヨーロッパリウマチ学会(EULAR)/ACRから2022年に新たな分類基準が報告された。この基準は、中型または大型血管炎のいずれかであると診断され、血管炎と紛らわしい他の疾患は除外した上で、巨細胞性動脈炎を判別するために適応することに留意する。診断時の年齢50歳以上が絶対条件とされ、USやPET/CTを含む画像検査による動脈病変の項目が追加された点が大きな変更点である。

・なお、本疾患は厚生労働省の指定難病(指定難病41)に指定されている。

 

2022年ACR/EULARによる巨細胞性動脈炎の分類基準 (文献8より引用改変)

本基準の適応を考慮する条件

・中型血管炎または大型血管炎のいずれかであると診断した時に、患者が巨細胞性動脈炎であると分類するために以下の分類基準を適応する。
・本基準を適応する前に血管炎と紛らわしい他の診断は除外すること。

絶対的必要条件

・診断時の年齢 ≧ 50歳

臨床的な項目

血液,画像,病理検査の項目

上記10項目の点数を合計し、6点以上が巨細胞性動脈炎の分類に必要である。

(註釈)
*1. 診察における側頭動脈の脈拍の消失または減弱、圧痛、または硬い索状の外観。
*2. 血管炎に対する治療開始の前のESRまたはCRPの最大値。
*3. 側頭動脈生検における明らかな血管炎、または側頭動脈エコーにおけるhalo sign。側頭動脈生検における血管炎確診例を定義する特段の病理組織学的基準はない。DCVAS(Diagnostic and Classification for Vasculitis)コホートにおいて、巨細胞の存在、単核白血球浸潤、内弾性板の断片化は、それぞれ独立した血管炎を支持する病理組織学的所見と解釈されていた。halo signは、超音波検査における均一で低エコーの壁肥厚の存在と定義される。
*4. 両側腋窩動脈病変は、CT血管造影、MR血管造影、カテーテル血管造影、エコーにおける血管内腔の傷害(狭窄、閉塞または瘤)、またはエコーにおけるhalo sign、またはPETにおけるFDGの取り込みによって定義される。
*5. 胸部下行大動脈と腹部大動脈を合わせた領域全体の動脈壁への異常なFDGの取り込み(視覚的に、肝への取り込みよりも強いもの)

 

治療

・経口ステロイド(プレドニゾロン)
・失明の恐れがある場合には、ステロイドパルス療法を含むステロイド大量療法を行う。
・経口ステロイドは4週間の初期治療の後に漸減する。
・副腎皮質ステロイド維持量を必要とする症例が多く、漸減は更に慎重に行う。
・ステロイド抵抗性の症例、ステロイドの漸減に伴い再燃する症例においては、メトトレキサート(MTX)を中心とした免疫抑制薬の併用を検討する。
・トシリズマブ(IL-6阻害薬)
・失明や脳梗塞を予防するために低用量アスピリンによる抗凝固療法を併用する必要がある。

 

予後

最も留意すべき点は失明に対する配慮であるが、早期からのステロイド治療により防止が可能である。巨細胞性動脈炎患者では胸部大動脈瘤の頻度が高く、平均7年後に認められる。定期的画像診断(単純X線、CT angiography、MRA、超音波、FDG-PET CT scanなど)によって、大動脈径の変化を追跡する。

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