疾患
・セロトニン作動性薬剤の過剰(SSRI、SNRIなど)によりセロトニンが増え、自律神経系、筋骨格系、中枢神経系に異常を来す急性疾患
・薬剤投与または増量してから多くは24時間以内の急性発症する(↔悪性症候群は数日~数週の経過)
セロトニンとは?
・5-hydroxytryptamine(5-HT)のこと
・モノアミン神経伝達物質の1つ
原因薬剤
・SSRI(デプロメール®、パキシル®、ジェイゾロフト®)
・SNRI(サインバルタ®、レスリン®、イフェクサー®)
・三環系抗うつ薬(アミトリプチン、ノリトレン®)
・双極性障害治療薬(リチウム)
・鎮痛薬(フェンタニル、トラマドール、ペンタゾシン)
・鎮咳薬(デキストロメトルファン:メジコン®)
・パーキンソン病治療薬(L-DOPA、ブロモクリプチン)
・抗てんかん薬(バルプロ酸、カルバマゼピン)
・制吐剤(メトクロプラミド(プリンペラン®))
・片頭痛薬(スマトリプタン、エルゴタミン)
・抗菌薬(リネゾリド(ザイボックス®))
・合成麻薬(MDMA、LSD、コカイン)
など
症状
3徴:
「意識障害(興奮)」
「自律神経障害(瞳孔散大、頻脈、高血圧、高体温、発汗、呼吸数増加、腸蠕動亢進)」
「神経・筋異常(振戦、ミオクローヌス、痙攣、腱反射亢進)」
※ 発熱は46%にしか認めない
Dr.林の『セロトニン症候群言ってみて:NAME』
N:neuromuscular symptom(神経筋症状)
ミオクローヌス、眼球ミオクローヌス、腱反射亢進、振戦、悪寒、アカシジア(不安、焦燥、ソワソワして落ち着かない、不眠)、筋固縮
A:autonomic dysfunction(自律神経症状)
高血圧、頻脈、頻呼吸、発熱(約60%)、散瞳、発汗
M:mental status change(意識変容)
興奮、軽躁、昏睡
E:enteric symptom(消化器症状)
嘔気、嘔吐、下痢、腹痛(腸蠕動亢進による)
診断
・診断のための単独の臨床症状や検査に決定的なものはない
・他の疾患(感染、悪性症候群、内分泌疾患、その他の薬物中毒など)を除外し、原因となる薬剤を内服していないかを疑うのが診断の要点
・血中濃度はあてにならない(約85%は治療域の血中濃度で発症するため)
Hunter criteria
下記の①かつ②を認めれば診断
(感度84% 特異度97% QJM. 2003 Sep;96(9):635-42.
① セロトニン作動薬の内服歴
② 以下の症候のうち1つ以上
1.自発的なミオクローヌス
2.誘発クローヌスに加え、興奮状態または発汗
3.眼球クローヌスに加え、興奮状態または発汗
4.振戦かつ深部腱反射亢進
5.筋強剛
6.体温が38℃以上に加え、眼球クローヌスまたは誘発クローヌス
悪性症候群との鑑別(鑑別は困難)
悪性症候群の特徴
・ドーパミン遮断薬の開始やドパミン作動薬の急激な中断が原因(制吐薬でも発症)
・経過が数日~数週の単位
(↔ セロトニン症候群は薬物開始・変更から24時間以内の急性発症)
・悪性症候群ではミオクローヌスや腱反射亢進は出ず、筋硬直が特徴的
(↔ ミオクローヌス、腱反射亢進、興奮、消化器症状、振戦はセロトニン症候群に特徴的)
・悪性症候群では意識低下が特徴的
治療
・原因薬剤の中止
・全身クーリング(解熱薬は代謝亢進を引き起こすため禁忌)
・ベンゾジアゼピン(交感神経鎮静化、筋固縮軽減)
・シプロヘプタジン(ペリアクチン®)
※原因薬剤中止後24~72時間で軽快
※ダントロレンは無効
レジデントノート 2022年3月 Vol.23 No.18 一般外来 処方ドリル〜症例で鍛える! 慢性疾患・コモンプロブレムへの上手な薬の選び方・使い方
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