概要
・サルコイドーシスは原因不明の全身性炎症性疾患である。
・40歳以下の成人、特に20歳代に好発するといわれていたが、近年では50~60歳代で診断される例も多くなってきている。
・発病時の臨床症状が多彩で、その後の臨床経過が多様であることが特徴の1つである。
・肺門縦隔リンパ節、肺、眼、皮膚の罹患頻度が高いが、神経、筋、心臓、腎臓、骨、消化器など全身のほとんどの臓器で罹患する。
(好発部位は肺、リンパ節、皮膚、眼)
・以前は検診で発見される無症状のものが多く自然改善例も多かったが、近年は自覚症状で発見されるものが増加して経過も長引く例が増えている。
・乾酪壊死を伴わない非乾酪性類上皮細胞肉芽腫の証明があれば組織診断群となるが、組織生検による診断が得られない場合には臨床診断群又は疑診群となる。
・肺、心臓、眼、神経、腎臓など生命予後・機能予後を左右する臓器・組織では、十分な治療と管理が必要である。
原因
・原因は不明とされているが、疾患感受性のある個体において、病因となる抗原によりTh1型細胞免疫反応(IV型アレルギー反応)が起こり、全身諸臓器に肉芽腫が形成されると考えられている。
・原因抗原としてプロピオニバクテリア(アクネ菌)、結核菌などの微生物が候補として挙げられており、遺伝要因としてヒト白血球抗原(HLA)遺伝子のほか、複数の疾患感受性遺伝子の関与が推定されている。
症状
・発病時の症状は極めて多彩である。検診発見の肺サルコイドーシスなど無症状のものもあるが、近年は有症状のものが増えている。
・サルコイドーシスの症状には、「臓器特異的症状」と「(臓器非特異的)全身症状」とがある。
・臓器特異的症状は、侵された各臓器に起こる咳・痰、ぶどう膜炎、皮疹、不整脈・息切れ、神経麻痺、筋肉腫瘤、骨痛などの様々な臓器別の症状であり、急性発症型のものと慢性発症型のものがある。
・全身症状は、臓器病変とは無関係に起こる発熱、体重減少、疲れ、痛み、息切れなどである。
・サルコイド肉芽腫細胞からビタミンDが分泌されるため高Ca血症や高Ca尿症、腎結石を認めることがある。
・類上皮細胞からACE(angiotensin converting enzyme)が分泌されるため、高ACE血症を認めることもある
検査所見
胸部X線
・両側肺門リンパ節腫脹
血液検査
・血清ACE高値
・血清リゾチーム高値
・血清可溶性IL-2R(sIL-2R)高値
2次検査
・気管支肺胞洗浄検査(リンパ球比率上昇、CD4/CD8比が3.5以上の上昇)
・Gaシンチグラフィー
・FDG-PET検査
・組織検査
診断
・診断は組織学的に乾酪壊死を伴わない非乾酪性類上皮細胞肉芽腫を証明することが重要。しかし特異的ではない
・があれば組織診断群となるが、組織生検による診断が得られない場合には臨床診断群又は疑診群となる。
治療
・現状では原因不明であり根治療法といえるものはなく、肉芽腫性炎症を抑える治療が行われる。
・症状軽微で自然改善が期待される場合には、無治療で経過観察とされる。
・積極的な治療対象となるのは、臓器障害のために日常生活が障害されている場合や、現在の症状が乏しくても将来の生命予後・機能予後の悪化のおそれがある場合である。
・全身的治療薬は、副腎皮質ステロイド薬が第一選択となる。しかし、再発症例、難治症例も多く、二次治療薬としてメトトレキサートやアザチオプリンなどの免疫抑制薬も使用されている。
・局所的治療は、眼病変、皮膚病変ときに呼吸器病変に対して行われる。
予後
・予後は 一般に自覚症状の強さと病変の拡がりが関与する。
・臨床経過は極めて多様であり、短期改善型(ほぼ2年以内に改善)、遷延型(2年から5年の経過)、慢性型(5年以上の経過)、難治化型に分けられる。
・無症状の検診発見例などでは自然改善も期待されて短期に改善することが多いが、自覚症状があり病変が多蔵器にわたる場合には、慢性型になり数十年の経過になることもまれではない。
・肺線維化進行例や拡張型心筋症類似例など、著しいQOLの低下を伴う難治化型に移行するものもある。
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