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ブロムワレリル尿素による中毒(ブロム中毒)

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概念

・「ブロムワレリル尿素」を含む市販頭痛薬の過量内服もしくは依存により,急性ないし慢性中毒が生じます.

・「ブロモバレリル尿素」は一部の市販の鎮痛薬に含まれています.非常に依存が生じやすいので避けたほうが安全です.米国などではすでに医薬品としては禁止されていますが,日本はどういうわけか簡単に手に入ります.

・具体的には「ナロン錠」(大正製薬)、「ナロンエース」(大正製薬)、「ウット」(伊丹製薬)など

・「ブロムワレリル尿素」は有機臭素化合物です.暴露後,直ちに臭化物イオンに代謝され中枢神経に影響を及ぼします.

・場合によっては悪心,嘔吐,傾眠,せん妄,錯乱,興奮が生じ,精神疾患と誤診されることがあります.重篤になると昏睡,痙攣重積発作,呼吸抑制・停止が生じます.

・頻脈と紅斑様皮疹を認めることがあります.

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原因

・高濃度の臭素イオンにより神経細胞の細胞膜が傷害されて神経伝達が阻害されるのが原因である

・体内における臭素の半減期は9-12日と長いため連用により体内に過剰に蓄積されやすく、日量0.5-1グラムの投与で臭素中毒が起こり得る。

・臭素中毒による神経・精神および皮膚や消化器の障害は時に重篤なものとなるが、臭素中毒により死亡することは希である[2]。

・臭素中毒による精神症状は臭素の神経毒性効果によるもので、傾眠、精神障害、てんかん性発作やせん妄を引き起こす

・ブロムワレリル尿素自体は半減期が2.5時間と短いですが、代謝産物のブロムは12日と長いため、連日内服することで体内に蓄積されます。

・ブロムは1価の陰イオンであり、体内のClと置換して中枢神経系に作用することで症状がでる等の機序が推定されています。

 

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症状

神経症状

不安、易怒性、運動失調、混乱、幻覚、精神障害、虚脱、昏迷などの他、重症例では昏睡に陥ることもある。あるいは聴力障害

消化器症状

急性症状として悪心や嘔吐、慢性症状として食欲不振や便秘が現れる[2]。

皮膚症状

チェリー血管腫やざ瘡様皮疹、膿瘍および紅斑を生じる。

腎機能障害

急性腎不全

電解質異常

アシドーシス、偽性高クロール血症

 

 

・検査では,臭化物イオンが塩化物イオンに置換されるために生じる「偽性高クロール血症」が診断のヒントになります.

・Clなどの電解質の検査にはイオン選択電極法(ISE法)が用いられています。血液検査で血中Clを計測する際、1価の陰イオンへの反応を利用するのですが、Cl以外の1価陰イオンであるブロムイオンやヨウ素イオンも同じ様に反応してしまいます。ブロムやヨウ素が血中に含まれると、実際の血中Clより高値となる、つまり偽高値となってしまいます。

・確定診断には血中ブロムの濃度が必要なのですが、測定できる施設や設備が限られているため実際に行うことは現実的ではありません。その代替として普段臨床で使用している血中Clを用います。

 

画像

・また腹部単純X線で薬の塊を認めることがあります(X線透過性が低いため).

・頭部MRIで脳の萎縮(特に小脳)、両側視床内側,被殻,中脳水道周囲灰白質,小脳歯状核病変の異常信号を呈し,Wernicke脳症(ビタミンB1欠乏)が当初疑われたる(視床血流の増加と大脳皮質血流の抑制を認めることや,血液脳関門破綻による浸透圧の変化がWernicke脳症と共通の病態機序ではないかと議論されてい).

・市販頭痛薬の常用,精神症状,偽性クロール血症等から本症を疑い,なるべく早期に治療開始することで後遺症の軽減を図る必要があります.具体的には臭化物濃度の低下を目的に,生食負荷と利尿剤投与,血液透析を行います.

 

治療

薬物の中止になります。基本的には入院は必要ありませんが、自宅療養が困難な場合には入院を考慮した方がいいと考えられます。

 

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