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熱中症(定義、重症度分類)

熱中症(heat-related illness)の定義

職場における熱中症予防情報(厚生労働省)

熱中症の定義:

・「熱中症」とは、高温多湿な環境下において、体内の水分及び塩分(ナトリウムなど)のバランスが崩れたり、循環調節や体温調節などの体内の重要な調整機能が破綻するなどして発症する障害の総称です。
・症状として、めまい・失神、筋肉痛・筋肉の硬直、大量の発汗、頭痛・気分の不快・吐き気・嘔吐・倦怠感・虚脱感、意識障害・痙攣・手足の運動障害、高体温などが現われます。

・熱中症はその重症度や病型から、「熱痙攣(heat cramp)」、「熱失神(heat syncope)」、「熱疲労(heat exhaustion)」、「熱射病(heat stroke)」に分類されます。

 

熱中症が発生する生理学的な機序

暑熱環境下で作業を行うことにより体温が上昇すると、①発汗によって汗の蒸発による気化熱や、②皮膚の血流増加による気中への熱伝導によって体温調節が行われる。

ところが、多湿・無風などの条件では気化熱による体温調節が効果的に行えず、高温・無風の条件下では空気への熱伝導も効果的に行われないようになる。

そのため多量の発汗による水分消失(脱水症状)や塩分喪失による電解質バランスの障害が発生する。また、発汗や血流増加は、重要臓器への血流低下をもたらす。

これらの結果として、体の温度調節が破たんをきたすと熱中症が発症することとなる。

 

 

熱中症の重症度分類(熱中症診療ガイドライン 2024)

熱中症の新分類:

・従来、熱中症は症状によって「熱痙攣(heat cramp)」、熱失神(heat syncope)、「熱疲労(heat exhaustion)」、「熱射病(heat stroke)」に分類されていた。

・従来型(症状名)の「熱痙攣」「熱失神」「熱疲労」「熱射病」という分類は、医療現場や啓発資料では、症例説明や理解の補助として現在も使われています。

・医学的な症状名として利用されるものの、2024年のガイドラインでは重症度に応じた「Ⅰ度~Ⅳ度」の新分類が主となっています。

・これまでの重症度分類はⅠ(軽症)、Ⅱ度(中等症)、Ⅲ度(重症)の3段階であったが、従来のⅢ度には意識障害のみの症例から多臓器不全をきたす重篤な症例まで含まれ、臨床現場で治療方針を決定するうえで幅が広すぎるという問題点が指摘されていた。そこで2024年の「熱中症ガイドライン」の改訂により、「Ⅳ度(最重症)」が新たに定義された。

・併せて、早期発見のために深部体温を測らずに体表温度の測定だけでも迅速に対応するため「qⅣ度」(q:quick)という概念が導入され早期介入の重要性が指摘された。

・「qⅣ度(q:quick)」とは、深部体温を測定せずに、体表温度と意識レベルで重症度を判断する概念。

・具体的には、「体表温度が40.0℃以上、(もしくは皮膚に明らかな熱感あり)かつ意識障害(GCS 8以下、またはJCS 100以上)」がある場合を指します。

・現場ではまず、qIV度に該当する患者を迅速にスクリーニングするよう求めた。その上で、qIV度に該当した患者にはActive Coolingを早期開始しつつ、深部体温の測定を早急に行い「深部体温40.0℃以上かつGCS≦8」に該当すれば「IV度」、深部体温が39.9℃以下であれば「III度」に振り分ける流れとした。

・JCS≦1の場合はⅡ度と判断されるのであるから、意識障害が含まれないのは、Ⅰ度のみということになる。意識障害が少しでもあれば、医療搬送の必要がある。

・Ⅱ度(大量発汗の病歴、頻脈)以上では脱水症を伴うため、医療機関の受診が必要となる。

 

 

 

 

熱中症の重症度分類:Ⅰ度熱中症(かつての「熱痙攣」「熱失神」)

熱中症の重症度分類:Ⅰ度熱中症(かつての「熱痙攣」「熱失神」)

・めまい、立ちくらみ、生あくび、大量の発汗、筋肉痛、筋肉の硬直(こむら返り)など。

意識障害は認めない

 

熱痙攣とは:

・熱さで大量に汗をかき、水だけを補給した場合に起きる。血液の塩分(ナトリウム)濃度が低下する低ナトリウム症である。

・筋の興奮性が亢進するため、足、腕、腹部(腹筋)の筋肉に「こむら返り」(けいれんと痛み)が起きる。

・生理食塩水(0.9%食塩水)など、やや濃いめの食塩水を補給したり、医療機関で点滴することで回復することが多い。

熱失神とは:

・熱によって皮膚血管が拡張して下肢への血液貯留が起き、これによって血圧が低下して脳への血流が一時的に減少することにより起きる。

・炎天下で作業をした後等に起きるが、じっとしていたり、立ち上がった直後にも起きることがある。

・めまい、顔面蒼白、一時的な失神などの症状が見られ、脈拍が早くて弱くなる

・下肢を挙上し臥床させることにより多くは回復する。

 

熱中症の重症度分類:Ⅱ度熱中症(かつての「熱疲労」)

熱中症の重症度分類:Ⅱ度熱中症(かつての「熱疲労」)

・頭痛、嘔吐、倦怠感、虚脱感、集中力や判断力の低下

JCS1程度の軽度意識障害を伴う

医療機関での診察が必要

・検査:電解質(Na、K、Mg、Ca)、腎機能、肝酵素、CK(CK≧1000で労作性横紋筋融解症を疑う)、凝固系(PT-INR、FDP/D-dimer、血小板:DICの検索)

 

熱疲労とは:

・熱さで大量に汗をかき、一方で水分の補給が追いつかない場合に脱水によって起きる。

・全身倦怠感、脱力感、悪心・嘔吐、頭痛、めまい、集中力・判断力の低下などの症状が起き、ごく軽い意識障害を伴うことがある。

・体温はそれほど上昇しない。

・スポーツドリンクや0.2%食塩水などで、水分と塩分を補給することで回復することが多い。

 

熱中症の重症度分類:Ⅲ度熱中症(かつての「熱射病」)

熱中症の重症度分類:Ⅲ度熱中症(かつての「熱射病」)

・「中枢神経症状(意識障害JCS2、小脳症状、痙攣発作)」、「肝・腎機能障害(入院経過観察、入院加療が必要な程度の肝または腎障害)」、「血液凝固異常(急性DIC診断基準[日本救急医学会]にてDICと診断)」の3つのうちいずれかを含む場合、Ⅲ度と診断

・Ⅲ度以上では入院治療の上、Active Coolingを含めた集学的治療を考慮する。

熱射病とは:
・熱によって体温調節が破たんして体温が上昇し、中枢機能に異常をきたした状態。脱水が背景にあることが多い。
・脱水症状、顔面の蒼白化、全身倦怠感、めまい、吐き気や嘔吐、頭痛
意識障害を伴う
・呼びかけや外部の刺激への反応に異状がみられ、言動の不自然さ、全身のけいれん、ふらつきが伴うことがある。重症になると、昏睡に至る。
・明らかな体温上昇。高体温を伴い、触ると熱いほどになることもある
・意識障害、けいれん、手足の運動障害が起きる。
・重症の場合は、血液凝固障害、肝機能以上、腎機能障害など全身の多臓器障害を合併して死亡することもある。
・意識障害が少しでもあれば、様子を見ることはせず、直ちに救急車を要請し、できるだけ早く身体を冷やす。

熱中症の重症度分類:Ⅳ度熱中症(最重症)

熱中症の重症度分類:Ⅳ度熱中症(最重症)
・深部体温40.0℃以上かつGCS≦8の場合
・Active Coolingを含めた集学的治療を行う。

 

日本救急医学会『熱中症診療ガイドライン2024』

・これまでⅢ度(2015)としてきた重症群の中に、さらに注意を要する最重症群があり、この最重症群を「Ⅳ度」(最重症)として同定し、Active Cooling を含めた集学的治療を早急に開始することを提唱することとした。

・併せて、早期発見のために深部体温を測らずに体表温度の測定だけでも迅速に対応するため「qⅣ度」(q:quick)という概念を導入して早期介入の重要性を訴えている。

 

qⅣ度(q:quick)

熱中症のqⅣ度:

・深部体温を測定せずに、体表温度と意識レベルで重症度を判断する概念。

・具体的には、「体表温度が40.0℃以上、(もしくは皮膚に明らかな熱感あり)かつ意識障害(GCS 8以下、またはJCS 100以上)」がある場合を指します。

・現場ではまず、qIV度に該当する患者を迅速にスクリーニングするよう求めた。その上で、qIV度に該当した患者にはActive Coolingを早期開始しつつ、深部体温の測定を早急に行い「深部体温40.0℃以上かつGCS≦8」に該当すれば「IV度」、深部体温が39.9℃以下であれば「III度」に振り分ける流れとした。

 

 

Active CoolingとPassive Cooling

Passive Cooling

・冷蔵庫に保管していた輸液製剤を投与することや、クーラーや日陰の涼しい部屋で休憩すること。

 

Active Cooling

・何らかの方法で、熱中症患者の身体を冷却すること。

・「体温管理」「体内冷却」「体外冷却」「血管内冷却」「従来の冷却法(氷囊、蒸散冷却、水 冷 式 ブ ラ ン ケ ッ ト )」「 ゲ ル パ ッ ド 法 ( Arctic Sun® ,Medivance)」「ラップ法(水冷式 冷却マットで体幹および四肢を被覆する;Gaymer Medi-Therm® , Gaymar)」など

 

 

 

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