疾患
・「全身性エリテマトーデス(SLE)」はDNA-抗DNA抗体などの免疫複合体の組織沈着により起こる全身性炎症性病変を特徴とする自己免疫疾患である。
・症状は治療により軽快するものの、寛解と増悪を繰り返して慢性の経過を取ることが多い。
・SLEは若い女性に多く発症し、男女比は1対9前後とされる。
・発症年齢は20~40歳が最も多く、特に20歳代が全体の40%を占めまる。
・10歳代と30歳代がこれに次いで多く、25%前後とされる。
高齢発症SLE
・50歳以上で発症するSLE
・全体の3~18%
・若年発症に比べて皮疹が少なく、漿膜炎や関節炎の割合が高くなる
原因
症状
全身症状:
全身倦怠感、易疲労感、発熱などが先行することが多い。
皮膚・粘膜症状
蝶形紅斑とディスコイド疹が特徴的である。
日光暴露で増悪する(日光過敏)
ディスコイド疹は顔面、耳介、頭部、関節背面などによくみられ、当初は紅斑であるが、やがて硬結、角化、瘢痕、萎縮をきたす。
その他、凍瘡様皮疹、頭髪の脱毛も本症に特徴的である。
筋・関節症状
・筋肉痛、関節痛は急性期によくみられる。
・左右対称性で、2か所以上の末梢関節に生じる「非びらん性」関節炎が特徴。
・関節炎もみられるが、骨破壊を伴うことはないのが特徴
<Jaccoud関節症>
・SLEの他、Sjögren症候群、成人発症Still病にも伴うことが知られており,「骨破壊を伴わない整復可能な関節亜脱臼」と表現される。
・滑膜炎ではなく関節包、靭帯、腱など関節周囲組織の炎症性弛緩が原因と考えられている。
・MP関節の屈曲変形と尺側偏位が最も多くみられ、スワンネック変形、PIP関節や母指IP関節の過伸展もよくみられる。MP関節の屈曲変形が生じると、同関節の自動的屈曲運動は保たれるが、自動的伸展運動は失われる
腎症状
糸球体腎炎(ループス腎炎)は約半数の症例で出現し、放置すると重篤となる。
神経症状
中枢神経症状を呈する場合は重症である(CNSループス)。
うつ状態、失見当識、妄想などの精神症状と痙攣、脳血管障害がよくみられる。
神経精神症状を呈する SLE(neuropsychiatric SLE;NPSLE)
心血管症状
肺症状
胸膜炎は急性期によくみられる。このほか、間質性肺炎、細胞出血、肺高血圧症は予後不良の病態として注意が必要である。
消化器症状
腹痛がみられる場合には、腸間膜血管炎やループス腹膜炎に注意する。
ループス腸炎
・ループス腸炎はSLEの0.2~9.7%に合併する比較的稀な臓器障害である。別名ループス腸間膜血管炎とも呼ばれ,血管炎による腸管虚血が穿孔や出血を引き起こす場合は致死率が高くなる。
・症状は一般的な感染性腸炎と同様に,嘔気・嘔吐・腹痛・下痢などを呈するため,症状のみでは確定診断に至ることが困難である。
・SLEの好発年齢である20~30歳代の女性で,1週間以上持続する,もしくは再発する腹痛・下痢を認める場合は,ループス腸炎を考慮する必要がある。また,SLEの消化器病変ではループス腸炎のほかに,蛋白漏出性胃腸症や偽性腸閉塞が知られているが,これらの病理所見でもループス腸炎と同様の所見を認める場合も多く,一連の疾患概念と考えられる1)。
・腹部CT検査で出現頻度の高い所見は,腸管浮腫(94.8%),腹水(55.7%),target sign(83.5%),comb sign(100%),腸管拡張(86.6%)である
血液症状
溶血性貧血、白血球減少や血小板減少も認められ、末梢での破壊によると考えられている。
その他
アメリカリウマチ学会による診断基準(1997年改訂)
⑤ 関節炎
・2関節以上の末梢関節で非破壊性
⑥ 漿膜炎
・胸膜炎あるいは心膜炎
⑦ 腎病変
・0.5g/日以上の持続的蛋白尿か細胞性円柱の出現
⑧ 神経学的病変
・痙攣発作あるいは精神障害
⑨ 血液学的異常:以下のいずれか
a)溶血性貧血
b)白血球減少(<4000/μLが2回以上)
c)リンパ球減少(<1500/μLが2回以上)
d)血小板減少(<100000/μL)
⑩ 免疫学的異常:以下のいずれか
a)抗2本鎖 DNA 抗体陽性
b)抗 Sm 抗体陽性
c)抗リン脂質抗体陽性(抗カルジオリピン抗体、ループスアンチコアグラント、梅毒反応偽陽性)
治療法
ドロキシクロロキン(HCQ)
HCQはSLEの再発抑制効果や生命予後改善効果の可能性が示唆されるため、禁忌がなければすべての患者で使用を考慮することがガイドラインでは記載されている。
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