概要
・反復する発熱と腹膜炎、胸膜炎、関節炎などの漿膜炎症状を特徴とする常染色体劣性遺伝を示す自己炎症性疾患。
・MEFV遺伝子の異常による単一遺伝子病
・本邦でおよそ500人の患者の存在が推定されている。
・その名の通り地中海沿岸のユダヤ系民族を中心に、トルコ、アルメニア、アラブの人々に多発する周期性発熱症候群であり、発熱時間が6~96時間と比較的短く、漿膜の無菌性炎症による腹痛・胸痛・関節痛を伴う事を特徴とする。
modified from Masters SL et al Annu Rev Immunol 2009
・炎症経路のひとつであるインフラマソームの働きを抑えるパイリンの異常で発症する自己炎症性疾患である。
・発作性の発熱や随伴症状として漿膜炎による激しい疼痛を特徴とする。
原因
・MEFV遺伝子変異による炎症性カスケードの調整障害と考えられているが、その発症メカニズムは明らかになっていない。
・また、浸透率が高くないことや典型的な家族性地中海熱の症状を呈しながらもMEFV遺伝子に疾患関連変異を認めない症例が少なくないことから、発症には他の因子も関与していると考えられている。
症状
・「繰り返す発熱」と「漿膜炎」「滑膜炎」が特徴
・周熱期間は1~3日と短い
・胸痛、腹痛、関節痛などが起こる
・ストレス、手術などによる侵襲、月経、感染を契機として発作を起こす
(「若年女性が、1~2日間の前駆症状の後に、38℃以上の発熱および腹痛(もしくは胸痛、単関節痛)を生じ、12時間~3日で治まることを繰り返すという病歴の場合、本症を疑う)
・典型例では突然38℃以上の高熱を認めるが、短期間(半日から3日程度)で消失する。
・発熱間隔は、1週間~数年と様々(1~3か月毎が多い)。
・発作には症状の全くない「発作間欠期」がある
・随伴症状として漿膜炎による「激しい腹痛」や「胸背部痛」「関節痛(膝や足関節などの下肢の単関節炎)」を訴える。
・胸痛によって呼吸が浅くなることがある。
・また「筋痛症」「心外膜炎」「無菌性髄膜炎」「丹毒様紅斑」も発症することがある
検査所見
・発作期にCRPがわずかに上昇を認める程度。間歇期に劇的に陰性化する。
・血清アミロイドA(急性期蛋白の一つ)の上昇を認める
治療法
・根治療法はない。
・治療の目的は発熱や疼痛などの症状改善と、続発するアミロイドーシスの予防である
・発作の抑制にはコルヒチンが約90%以上の症例で奏効する。
・コルヒチンは腎アミロイドーシスの予防効果があり、治療は永続的に必要
・根治療法はない。副腎皮質ステロイド薬は無効。
・コルヒチンの無効例では高IL-1療法(カナキヌマブ)やTNF-α阻害剤(インフリキシマブ、エタネルセプト)、サリドマイドなどが有効であると報告されている。
予後
・無治療で炎症が反復するとアミロイドーシスを合併することがある。
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