皮膚軟部組織感染症(検査、原因菌、鑑別疾患)
検査
※いずれも原因菌同定のため、「血液培養」を採取すること!
・基本的には「連鎖球菌」と「ブドウ球菌」だが、特殊な状況や曝露歴によって原因菌が異なることに注意
リスク因子による想定すべき菌
・繰り返しの入院:MRSA
・糖尿病:ブドウ球菌、GBS、嫌気性菌、GNR
・好中球減少症:緑膿菌を含めたGNR
・咬傷
ヒト:口腔内常在菌
ネコ:Pasteurella multicida
犬:Capnocytophaga canimorsus
ネズミ:Stereptobacillus moniliformis
・動物との接触:カンピロバクター属、Bartonella henselae、Francisella tularensis、Bacillus anthracis、Yersinia pestis
・水との曝露:ビブリオ属(Vibrio vulnificus)、Aeromonas hydrophila,Mycobacterium marimum,緑膿菌
・爬虫類との接触:サルモネラ属
非感染性疾患との鑑別
・接触性皮膚炎
・深部静脈血栓症
・結節性紅斑
・痛風発作
・うっ滞性皮膚炎(両側発症が特徴)
① 丹毒(溶連菌、真皮まで、境界明瞭)
・真皮を中心とした浅い感染症
・蜂窩織炎よりも浅い層の感染症のため紅斑の境界が明瞭
・急性発症の発熱、悪寒といった全身症状を伴いやすく、急激な経過を取りやすい。
・多くは顔面(特に頬部)に出現、その他下腿にも好発
・時に水疱を形成することがある(水疱性丹毒)
・皮下脂肪組織のない耳介にも及ぶ(Milian’s ear sign):
顔面の丹毒と蜂窩織炎の鑑別に用いられる徴候。
耳介に紅斑あり→丹毒
理由:耳介は真皮が薄く皮下脂肪を欠くため。蜂窩織炎は耳介に波及しない。
・鼻唇溝を越えない(SLEの蝶形紅斑と同じ)
・起炎菌はほとんどがA群β溶血性連鎖球菌(多くはStreptococcus pyogenes)、時に黄色ブドウ球菌も
・ASO(抗ストレプトリジンO)、ASK(抗ストレプトキナーゼ)検査も提出
② 蜂窩織炎(ブドウ球菌、β溶血性連鎖球菌、皮下脂肪組織、境界不明瞭)
・真皮深層から皮下組織まで及ぶ比較的深い皮膚・軟部組織感染症
・境界は不明瞭で、周囲と明確に区別できる非連続的な隆起はみられない
・原因菌は黄色ブドウ球菌(MSSA)が最多。他にβ溶連菌(A群、G群、C群、B群)や、両者同時感染など
・免疫能が低下した患者では腸内細菌や緑膿菌も起炎菌になりうる
治療:
※ 蜂窩織炎と丹毒の鑑別が難しい場合、黄色ブドウ球菌(MSSA)と溶連菌の両者に効果のある薬剤を選択
※ 7~10日間(軽症では5日程度、重症では14日間)
① 内服:最低でも5日以上必要
第1選択
・セファレキシン(CEX:ケフレックス®;第1世代セフェム)
1回2C(500mg) 1日3回
MSSA、連鎖球菌に有効(大腸菌にも感受性があり、膀胱炎にも使用可)
第2選択
・セファクロル(CCLケフラール®:第2世代セフェム)
(アレルギーの頻度が高いため、なるべく使用しない)
動物咬傷など、嫌気性菌の関与が疑われる場合
・アモキシシリン/クラブラン酸(オーグメンチン®)
375mg 1日3〜4回
典型的な丹毒の場合は、溶連菌を狙ってペニシリン系
AMPC(アモキシシリン:サワシリン®)500mg 1日3~4回
注)
・β-ラクタマーゼはβラクタム系抗菌薬(ペニシリン系、セフェム系など)のβラクタム環を加水分解し抗菌力を失わせる細菌産生酵素の一つであり, 「ペニシリナーゼ (ペニシリン分解酵素) 」と「セファロスポリナーゼ (セファロスポリン分解酵素)」 に大別される
・ブドウ球菌の多くは「ペニシリナーゼ」を産生し、ペニシリン耐性(ペニシリナーゼ産生)MSSAが多いため、第一選択はセフェム系とする
② 点滴:
・CEZ(セファゾリン)セファメジン®
1回2g 8時間毎
または
・ABPC/SBT
1回3g 6時間毎
・入院患者などで基礎疾患のある場合は、MRSAを考慮しVCM
③ その他:ペニシリン系、セフェム系にアレルギーがある場合
・クリンダマイシンやST合剤で代替
クリンダマイシン 900㎎ 分3
クリンダマイシン静注 600㎎ 8時間毎 1日3回
7~10日間(軽症では5日程度、重症では14日間)
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