・中枢性運動麻痺の質的機能評価法
・脳血管障害による片麻痺の重症度を、上肢、手指、下肢体幹それぞれについて、ステージⅠ~Ⅵまで6段階で評価するスケール。
各ステージの概要
Ⅰ:随意運動なし(弛緩性麻痺)
Ⅱ:連合反応(痙性発現)
体の一部を強く動かすと、他の麻痺した部位まで筋収縮や運動が出現する
Ⅲ:共同運動(痙性著明)
屈筋、または伸筋の共同運動、またはその要素を随意的に起こしうる
Ⅳ:分離運動の一部出現
基本的共同運動から逸脱した運動(痙性やや弱まる)
共同運動の支配は残存しているものの、それぞれの関節が分離して動く
Ⅴ:分離運動が全般的に出現
基本的共同運動から独立した運動(痙性減少)
Ⅵ:協調運動ほとんど正常(痙性最小期)
分離運動が自由に可能
各論
上肢
Ⅰ:弛緩期(動きなし)
反射的にも随意的にも運動・筋収縮がない状態。
Ⅱ:痙性発現期(僅かな動き、連合運動)
多少の痙性と共同運動パターンの出現期で、連合反応あるいは随意的におこる筋収縮がみられる状態。
Ⅲ:痙性極期(共同運動:屈曲、または伸展pattern)
随意的に共同運動またはその一部の要素による運動を起こすことができる状態。
共同運動パターン(屈筋共同運動・伸筋共同運動)が最も強くなる時期。
Ⅳ:痙性(やや)減弱期(分離運動出現)
共同運動パターンから分離しはじめた状態で、下記の運動が可能となる。
1) 手を腰の後ろに回す
2) 腕を前方水平位に挙上する
3) 肘関節90°屈曲位で前腕を回内・回外する
Ⅴ:痙性減少期
共同運動パターンからかなり分離した運動ができる状態で、下記の運動が可能となる。
1) 肘伸展位、前腕回内位で肩関節90°外転
2)肘伸展位で 腕を頭上まで前方挙上可能
3) 肘関節伸展位で前方または側方水平位で腕を回旋する
Ⅵ:痙性最小期(ほぼ正常)
単一の関節運動が自由に可能となり協調運動もほとんど正常になる。
ほぼ正常な動作ができる状態。
手指
Ⅰ:弛緩状態
手指が全く動かない状態。
Ⅱ:痙性発現
自動的に手指の屈曲のみがわずかにできる状態。
Ⅲ:集団屈曲
随意的に全指同時握り(集団屈曲)や鉤握りができる状態。
しかし随意的な伸展はできない。
Ⅳ:横つまみ(lateral pintch)
集団伸展が一部可能となり、横つまみができる状態。
Ⅴ:対向つまみ(tip pintch)
集団伸展が充分にでき、対向つまみ・筒握り・球握りができる状態。
しかし動きは不器用で実用性は低い。
Ⅵ:指一本一本屈伸可能
全ての握りやつまみが可能となり、巧緻性も改善し完全な伸展ができる状態。
個別の手指の運動はできるが健側に比べ正確さは劣る。
下肢
Ⅰ:弛緩期(動きなし)
反射的にも随意的にも運動・筋収縮がない状態。
Ⅱ:痙性発現期(僅かな動き、連合運動)
多少の痙性と共同運動パターンの出現期で、連合反応あるいは随意的におこる筋収縮がみられる状態。
Ⅲ:膝伸展(共同運動)
痙性が最も強い状態。屈筋共同運動・伸筋共同運動パターンが最も強く現れる時期。
Ⅳ:SLR可能(分離運動)
痙性がやや減弱し、共同運動パターンから分離し始めた状態。下記の運動が可能となる。
1) 坐位での膝関節伸展
2) 坐位で膝関節を90°以上屈曲して足を床の後方へ滑らす
3) 坐位で踵を床から離さずに足関節を背屈する
Ⅴ:膝伸展位でのankle dorsiflex
さらに共同運動パターンから分離した状態。
下記の運動が可能になる。
1) 立位で股関節伸展位で膝関節を屈曲する
2) 立位で足を少し前方に出し、踵を床につけたまま足関節を背屈する
3) 坐位で股関節を内旋する
Ⅵ:ほぼ正常
協調運動がほぼ正常にできる状態。下記の運動が可能になる。
1) 立位で膝関節伸展位のまま股関節を外転する
2) 立位での足踏み
リハビリテーション医学・医療コアテキスト準拠 リハビリテーション医学・医療Q&A
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