・野球によるスローイング動作、特に成長期の投手に多く発生するオーバーユースに起因する肘関節の代表的スポーツ障害。
・10〜16歳の学童に多く発症する。
・障害部位は、投球側の肘の内側、外側、後側(肘頭)に分類される
・圧痛、腫張、投球時の肘痛、肘の可動域制限、時に小指側のしびれ感、ロッキング症状などの症状を呈する
障害部位
・投球動作の加速期(acceleration)には肘関節屈曲、外反、前腕回外位をとる。
・内側型は肘の内側の靱帯に回内屈曲筋による牽引力が加わり、回内筋群や内側側副靱帯、尺骨神経がストレッチされ、内側に微細損傷が発生する。
・重症例では上腕骨内側上顆が牽引力によって剥離骨折を起こす。
・外側型は逆に肘外側にある上腕骨小頭や橈骨頭に圧迫力が加わり、骨の壊死、欠損、遊離体などの離断性骨軟骨炎が発生する。
・後方型は減速期(follow-through)に肘伸展位で、尺骨肘頭に上腕三頭筋による「牽引力が加わり剥離や疲労骨折などの変化をきたす。
診断
上記症状に、レントゲンでの骨変化を認める。
・内側型:上腕骨内側上顆の骨肥厚、骨端線離開、回内筋部への骨遊離像
・外側型:上腕骨小頭や橈骨頭の骨変形、欠損、遊離骨片
・後方型:尺骨肘頭の亀裂骨折、疲労骨折像
治療・リハビリ
・投球フォームが肘下がりにならないように指導する
・バッティングフォームはバッドヘッドが下がらないように指導する
・主原因であるオーバースローのピッチング動作の休止を徹底。
・投球後のアイシングを徹底する
・骨変化が認められる場合は、3ヵ月以上のスローイング動作の休止が必要。
・骨に変化をきたしている場合は、最低1-3年ぐらいのフォローアップが必要。
・遊離骨片によって肘がロッキングしている場合は、骨片摘出手術が必要となります。
※ 注意点
・疼痛発症初期に投球動作を休止しないと骨に変化をきたし、結果的に数ヵ月から数年の投球禁止を余儀なくされる。
・ただしランニングやバッティングは可能であり、ポジション変更の検討を要す。
・成長期のため、骨端線を損傷する重症例では肘が外反(外側型)、内反肘(内側型)変形をきたすことがある。
コメント