基準値
pH :7.40 ± 0.05(7.35~7.45)
代償の目安
1)代謝性異常の場合の呼吸性代償性変化
・代謝性アシドーシス
HCO₃- ↓1mEq/L ➡ PaCO2 ↓1.2㎜Hg
・代謝性アルカローシス
HCO₃- ↑1mEq/L ➡ PaCO2 ↑0.7㎜Hg
2)呼吸性異常の場合の腎性代償性変化
・呼吸性アシドーシス
急性:PaCO2 ↑10㎜Hg ➡ HCO₃- ↑1mEq/L
慢性:PaCO2 ↑10㎜Hg ➡ HCO₃- ↑3.5mEq/L以上
・呼吸性アルカローシス
急性:PaCO2 ↓10㎜Hg ➡ HCO₃- ↓2mEq/L
血液ガスの見方 「 4 steps + 2 steps 」
Step1:アシデミアなのかアルカレミアなのか?(pH 正常値:7.35~7.45)
Step2:呼吸性か代謝性か?
Step3:代償は適切か?
Step4:代償が適切でなければ、他の異常は何か?
Step5:Anion Gapを計算
Na+ ー(Cl-+HCO₃-):12 ± 2 mEq/L
Step6:AG>12なら、隠れた酸塩基平行異常はないか?
二つの代謝性酸塩基平衡異常併存を判断
補正HCO₃-またはΔAG / ΔHCO₃-を計算
※ 補正HCO3-
・代謝性アシドーシスをきたしたアニオンギャップ増加分(ΔAG)がなかったと仮定した場合の血清HCO3-濃度のこと
・アニオンギャップが増加しない代謝性アシドーシスや代謝性アルカローシスが混在していないかを確認することができる
・HCO3-減少分=アニオンギャップ増加分(ΔAG)
・[補正HCO₃-]=[実測HCO₃-] + ΔAG
→これが正常値(24 mEq/L)より高いか低いか?
→24より高ければ、代謝性アルカローシスの併存を考える。
※ ΔAG/ΔHCO3-
・ΔAG=実測AGー12(AG上昇分)、ΔHCO3-=24ー実測HCO₃-(HCO₃-低下分)
・1mEq/Lの酸負荷で血清HCO₃-が1mEq/L低下し、AGが1mEq/L上昇するため、
通常はΔAG/ΔHCO₃-は1となる。
・これが0.8より小さい場合は、実測HCO₃-が予想以上に少ない
→代謝性アシドーシスの合併を考える
・これが2より大きい場合は、実測HCO₃-が予想以上に多い
→代謝性アルカローシスの合併を考える
※ 低アルブミン血症による補正
・「測定できない陰イオン」(UA)であるアルブミンが低下すると、ア二オンギャップ(AG=UAーUC)も低下する。
・アルブミン1g/dL低下に対して、アニオンギャップは2.5mEq/L低下する。
[補正AG]=[AG] +(4ーAlb) ✖ 2.5
アシデミア、アルカレミアの病型
⓵ 代謝性アシドーシス
1)アニオンギャップ開大性アシドーシスの原因
『I SLUMPED』
I:iron(鉄) INH(イソニアジド)
S:salicylate※(アスピリン)、sulfide(硫化水素)
L:lactic acidosis(乳酸):循環不全、壊死、メトホルミン
U:uremia(尿毒症)
M:methylalcohol(メチルアルコール中毒)carbon monoxide(一酸化炭素)
P:paraaldehyde(パラアルデヒド)
E:ethl aicohol(アルコール、アルコール性ケトアシドーシス)ethylene glycol(エチレングリコール)
D:diabetec ketoacidosis(糖尿病性ケトアシドーシス、絶食、飢餓)
※アスピリン(サリチル酸)中毒
・サリチル酸は「酸化的リン酸化反応を脱共役させる」ことにより、
細胞呼吸を障害するため代謝性アシドーシスを引き起こす。
・またサリチル酸は延髄の呼吸中枢を刺激して、
一次性呼吸性アルカローシスを引き起こす。
2)アニオンギャップ非開大性アシドーシスの原因
高Cl血症性代謝性アシドーシスになる
原因(『消化器2つ、泌尿器2つ、薬物2つ』と覚える)
1)消化器2つ
・下痢(便へのHCO₃-喪失)
・膵瘻
2)泌尿器2つ
・呼吸性アルカローシスの腎代償(尿へのHCO-喪失)
・尿細管性アシドーシス(Ⅱ型:HCO₃-再吸収障害、Ⅰ、Ⅳ型:H+排泄障害)
3)薬剤2つ
・アセタゾラミド(ダイアモックス®)(尿細管でHCO3-再吸収を阻害)
・生理食塩水の大量投与(Cl-過剰により、電気的中性を保つために尿中へHCO3-排泄増加)
② 代謝性アルカローシス
1)消化管からのH+喪失
・嘔吐、胃管からの吸引
2)腎からのH+排出
・原発性アルドステロン症
・クッシング症候群
・利尿剤
・低Mg血症
・高Ca血症
3)H+の細胞内移動
・低K血症
参照:低カリウム血症になると何故アルカローシスになるのか?
酸塩基平衡:
H₂O+CO₂ ⇔ H₂CO₃ ⇔ H+ +HCO₃-
において、H+を喪失すると酸塩基平衡は右側の方向に傾き、 HCO₃-が増加してアルカローシスとなる。
何らかの原因で大量のK+が失われて低カリウム血症となると、K+が細胞内から細胞外に移行。すると電気的中性を維持するためにH+が細胞外液から細胞内へ移行しアルカローシスとなる。
また、遠位尿細管のNa–K交換部位でも、Kの代わりにH+が排泄されやすくなります。その結果、細胞外のH+は減少し、アルカローシスが起こる。
4)循環血漿量の減少
③ 呼吸性アシドーシス
・呼吸中枢機能低下
・神経筋疾患
・胸郭、横隔膜の損傷
・慢性呼吸不全
・死腔量増加(気管支喘息、COPD急性増悪)
④ 呼吸性アルカローシス
・アスピリン中毒(呼吸中枢刺激)
・疼痛、発熱や交感神経亢進
・低酸素血症(肺炎、肺水腫、肝肺症候群)
※ 静脈血による血液ガス分析
・pH、HCO3-は動脈血と同等に考えてよい。
(その他のPO2、PCO2、乳酸値、は静脈血で代替できない)
・一方、
「PvCO2≦45TorrならばPaCO2<50Torrである感度が100%」
「乳酸値は静脈血が正常なら動脈血の乳酸値の上昇はほとんどない(陰性尤度比0.1)」
↓
動脈血でなければならないのは「呼吸不全時の低酸素血症の評価」
(実際にはSpO2で代用できることも多い)
参照:レジデントノート 2021年6月号 Vol.23 No.4 血液ガス読み方ドリル
参考: 乳酸値
・敗血性症ショックでは血清乳酸値が 2mmoL/L(18mg/dL)を超える状態。
参考: 手関節部での橈骨動脈穿刺法
※ 第1選択は「橈骨動脈」
2本の指で動脈拍動を触れる
↓
人差し指の直下で拍動を触れる
その際、拍動を示指爪橈側負荷点で「点」として感じることが重要
↓
ペンホールド、45~60°の角度で穿刺
実際の手技の動画:
:https://www.youtube.com/watch?v=-xfXUOVJI5k
:https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMvcm0803851
:https://www.youtube.com/watch?v=l404ti6HAuk&t=29
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