疾患
・「強直性脊椎炎」「反応性関節炎」「乾癬性関節炎」「炎症性腸疾患に伴う関節炎、」「分類不能型脊椎関節炎」および「小児の脊椎関節炎」を含めた炎症性関節炎の総称
・家族内集積があり、HLA-B27遺伝子との関連性が高いとされる
・リウマチ因子は陰性で、腱や靱帯、関節包、筋膜の骨への付着部の炎症が特徴のひとつである。
・しばしば眼、皮膚、消化器、心臓などに関節外症状を伴う
「体軸性」と「末梢性」による分類
・仙腸関節や脊椎などの体軸関節に炎症を来たす「体軸性脊椎関節炎」と、四肢関節やDIP関節などに炎症をきたす「末梢性脊椎関節炎」に分類される。
1)体軸性脊椎関節炎を呈しやすい疾患:
強直性脊椎炎
2)末梢性脊椎関節炎を呈しやすい疾患:
乾癬性関節炎
反応性関節炎
炎症性腸疾患関連関節炎など
疑うポイント
・腰痛を呈することがあるが、通常の筋骨格系由来の腰痛とは異なり、こわばりが朝に強く、安静で増悪し運動で軽快する(炎症性腰痛)
・45歳未満で3ヶ月以上続く腰背痛を有する患者では、体軸性脊椎関節炎基準を考慮する
・腰背部痛はないが関節炎、付着部炎、指趾炎など末梢所見のみがある場合は末梢性脊椎関節炎基準を考慮する。
診断基準
1)体軸性脊椎関節炎のASAS分類基準(2009年)(感度82.9% 特異度84.4%)
45歳未満で3ヶ月以上続く背部痛を有する患者で以下を考慮。
仙腸関節炎の画像所見と一つ以上の脊椎関節炎の特徴があるか、HLA-B27陽性と二つ以上の脊椎関節炎の特徴がある場合、体軸性脊椎関節炎と分類する。
<画像所見とは>
1) MRI所見:
脊椎関節炎によると考えられる骨髄浮腫や骨炎を伴う仙腸関節の活動性炎症性病変。
2 )X線所見:改訂ニューヨーク基準による両側のgrade 2-4、あるいは片側のgrade 3-4の仙腸関節炎
grade 0:正常
grade 1:疑わしい変化
grade 2:軽度の変化や小さな限局性の侵食像や硬化像
grade 3:侵食像や硬化像の拡大や関節隙の幅の変化
grade 4:著しい変化や強直
<脊椎関節炎の特徴とは>
1 )炎症性背部痛:40歳未満での発症、潜行性の発症、運動による改善、安静で改善しない、夜間の痛み、の5項目中4項目存在する場合。
2) 関節炎:過去/現在の活動性滑膜炎
3) 踵の付着部炎:過去/現在のアキレス腱や踵骨部の足底筋膜の自発痛、圧痛がある場合。
4) ぶどう膜炎:過去/現在の眼科医に確認された前部ぶどう膜炎(虹彩炎や虹彩毛様体炎)。
5) 指趾炎:過去/現在に医師によって確認されたもの。
6) 乾癬:過去/現在に医師によって確認されたもの。
7) 炎症性腸疾患:Crohn病または潰瘍性大腸炎。
8) NSAIDsの効果良好:内服後1?2日後に背部痛が改善する場合。
9) 脊椎関節炎の家族歴:姪甥まででの強直性脊椎炎、乾癬、急性ぶどう膜炎、反応性関節炎、炎症性腸疾患のいずれかを認める場合。
10) HLA-B27
11 )CRP高値:背部痛を有しており他の原因が除外されていること。
2)末梢性脊椎関節炎のASAS分類基準(2011年)(感度77.8% 特異度82.9%)
・関節炎、付着部炎、又は指趾炎が現在あり、以下の一つ以上がある(ぶどう膜炎・乾癬・炎症性腸疾患・感染症の先行・HLA-B27・X線またはMRIで仙腸関節炎)、あるいは以下の二つ以上がある(関節炎・付着部炎・指趾炎・過去の炎症性背部痛・脊椎関節炎の家族歴)。
<前提として以下のいずれかを現在有する>
関節炎: 脊椎関節炎に合う末梢関節炎。通常は非対称で下肢の関節が多い。
付着部炎: 医師によって診断された付着部炎。
指趾炎: 医師によって診断された指趾炎。
<以下のひとつ以上がある>
1 )ぶどう膜炎:過去/現在の眼科医によって確認された前部ぶどう膜炎。
2) 乾癬:過去/現在の医師によって診断された乾癬。
3) 炎症性腸疾患:過去/現在のCrohn病または潰瘍性大腸炎。
4) 感染症の先行:関節炎/付着部炎/指趾炎の発症1ヶ月以内での尿道炎/子宮頚管炎や下痢。
5) HLA-B27
6) 画像上の仙腸関節炎:X線で改訂ニューヨーク基準による両側のgrade 2-4あるいは片側のgrade 3-4の仙腸関節炎。あるいは、MRIで脊椎関節炎によると考えられる骨髄浮腫や骨炎を伴う仙腸関節の活動性炎症性病変。
<あるいは以下の2つ以上がある>
1) 関節炎:過去/現在の脊椎関節炎に合う末梢関節炎。通常は非対称性で下肢の関節が多い。
2) 付着部炎:過去/現在の付着部の自発痛や圧痛。
3) 指趾炎:過去/現在の医師によって診断された指趾炎。
4) 過去の炎症性背部痛:過去にリウマチ医によって診断された炎症性背部痛。現在炎症性背部痛がある場合は体軸性SpAの分類基準を考慮するべきである。
5) 脊椎関節炎の家族歴:姪甥まででの強直性脊椎炎、乾癬、急性ぶどう膜炎、反応性関節炎、炎症性腸疾患のいずれかを認める場合。
疾患
1)強直性脊椎炎
・15~45歳の青年~中年男性に多い
・HLA-B27遺伝子との関連が高い
・潜行性に仙腸関節(ほぼ必発)による腰臀部痛から始まり、次第に脊椎を上行し、背部痛、項部、頚部痛を訴える
・腰臀部痛やこわばり(>30分)は朝に強く、運動で軽減する
・付着部炎による膝や肩、踵、手指、足趾などの痛みで発症することもある。
・進行例では前縦靱帯と後縦靱帯の骨化を認め、骨のように固くなり脊椎の可動域制限を認める(骨性強直)
・脊椎X線では、脊椎が竹のように見える(bamboo spine)
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