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日本紅斑熱

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疾患

・ダニ(マダニ)媒介によるリケッチア感染症(※ツツガムシ病もリケッチア感染症)

・紅斑熱群リケッチアの一種 Rickettsia japonica を起因病原体とし、野山に入りマダニに刺咬されることにより感染する。

・媒介ダニは、キチマダニ(Haemaphysalis flava)、フタトゲチマダニ(Haemaphysalis longicornis)、ヤマトマダニ(Ixodes ovatus) などのマダニであることが強く示唆されている。

・野山に入ったときにこれらのマダニに刺咬されることで感染する。

・しかし全てのまダニがリケッチアをもつわけではなく、リケッチアをもつまダニ(有毒ダニ)に刺咬されたときだけ感染する。

・リケッチアはダニからダニへと継卵感染により受け継がれる。

・症例数は1994 年まで年間10 〜20 名程度であったが、1995 年頃より増加に転じ、1999〜2001 年には年間40名近くになった。

・発生地域は、1998年以前は鹿児島県、宮崎県、高知県、徳島県、兵庫県(淡路島)、島根県、和歌山県、三重県、神奈川県、千葉県などであったが、1999 年以降拡大し、広島県、長崎県、静岡県でも発生がみられるようになった。

・今後も発生地域およびその周辺では発生する可能性が十分あり、注意が必要である。

・また、本症を媒介するマダ ニは広くわが国に生息しており、発生地域が主に太平洋側の温暖な地域に限局している理由については不明である。

・発生時期をみると、1998年以前は7〜9 月をピークに 4〜11月の間に発生がみられ、夏を中心に発生するといわれていた。しかし、1999 年以降は4月〜10月に継続して多くの発 生がみられ、さらに3月、11月および12月にも発生がみられた。

・今後は、発生時期に地域差がみられるものの、その年の天候などの影響も受けるので、全国的に春〜秋の長い間注意が必要である。

・本症はわが国特有の疾患であるが、同様の紅斑熱群リケッチア症は広く世界に分布しており、輸入感染症としても重要である。

・全数報告対象(4類感染症)であり、診断した医師は直ちに最寄りの保健所に届け出なければならない

ツツガムシ病との鑑別

・ツツガムシ病との臨床的な鑑別は困難である。 しかし詳細に観察すると、ツツガムシ病では発疹が主に体幹部にみられるのに対し、本症で は体幹部より四肢末端部に比較的強く出現する

・発症までの日数は、ツツガムシ病では10~14日に対し、本症では2~8日と短い

・刺し口(痂疲)はツツガムシ病に比べ、刺し口の中心の痂皮部分が小さい(5mm前後)などの特徴がある(ツツガムシは10㎜前後と大き目)

・ツツガムシ病の皮疹は、体幹が優位でありリンパ節腫脹を認めることが多いが、本症ではリンパ節腫脹はあまり見られない

・日本紅斑熱の皮疹は、体幹より四肢優位で、特に手掌、足底にも認められることが多い。

 

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病原体

・本症の病原体はリケッチアの一種リケッチ ア・ジャポニカ(Rickettsia japonica )であり、細胞外では増殖できない偏性細胞内寄生細菌で ある。

・ロッキー山紅斑熱など他の紅斑熱群リケッチア症の病原体と同じ属である。

 

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臨床症状

・病歴ではダニとの接触がある環境や山歩き、季節は夏場(春~秋)を確認する

・潜伏期は2〜8日(ツツガムシ病の10〜14日に比べやや短い)

発熱、倦怠感、頭痛、嘔気嘔吐、筋肉痛、意識障害など、感冒症状から重篤な意識障害まで多彩な症状を呈する

「発熱」「発疹」「刺し口(痂疲)」が主要三徴候であり、ほとんどの症例にみられる。

・発疹は通常は痒みのない淡い紅斑(米粒大~小豆大)が体幹

ツツガムシ病との臨床的な鑑別は困難である。 しかし詳細に観察すると、ツツガムシ病では発疹が主に体幹部にみられるのに対し、本症で は体幹部より四肢末端部に比較的強く出現する

・刺し口(痂疲)はツツガムシ病に比べ、刺し口の中心の痂皮部分が小さい(5mm前後)などの特徴がある(ツツガムシは10㎜前後と大き目)

 

検査所見

・白血球減少

・血小板減少

・肝機能障害

・低ナトリウム血症

・尿潜血、尿蛋白陽性

などを認めることがある

 

病原診断

・病歴から疑った場合は、ペア血清PCR検査のための検体(血清と痂疲)を採取する

・確定診断は主に、間接蛍光抗体法による血清診断で行われている。紅斑熱群リケッチアは種間で血清学的交差反応が強く、R. japonica を抗原として用いれば全ての紅斑熱群リケッチア症の診断が可能であるため、輸入感染症にも対応できる。

・また、類似疾患の鑑別のため、ツツガムシ病リケッチアの抗原を併用することが望ましい。
・また病原体診断としては、末梢血中からのリケッチアDNA 検出が行われている。ツツガムシ病の場合と同様にEDTA 加全血からbuffy coat 分画を単離し、DNAを抽出、PCR法による検出を行っている。リケッチアの分離はマウスや培養細胞を用いて行われるが、P3 実験施設が必要であり、時間がかかるので診断には実用的ではない。

・痂疲検体を採取

べりっと剥がしてとる

 

 

治療・予防

・ダニ媒介性リケッチア症の一般的な治療および予防法に準じて行う。

・治療には、本症を早期に疑い適切な抗菌薬を投与することが極めて重要である。

・第一選択 薬はテトラサイクリン系(ドキシサイクリン内服)。

・また、ニューキノロン系薬が有効であるとの報告もある(ツツガムシ病には無効)。

※βラタム系の抗菌薬は全く無効である。

 

軽症の場合

ミノサイクリンもしくはドキシサイクリン(ビブラマイシン®)内服でも可。

疑った時点で投薬を開始。

Rp) ビブラマイシン錠(100mg)

成人:2錠 分2 12時間ごと 7~14日間

小児(体重<45kg):1回2.2mg/kg 12時間ごと 7~14日間

 

重症の場合

・疑った時点で、ミノサイクリン100mg、12時間おき点滴静注を開始

(重症例では、初回投与のみミノサイクリン200mgでLoadingを行うことを推奨する)。

・頭痛が強いときや髄膜炎を疑われるときは、ミノサイクリン点滴静注とする(ドキシサイクリンは髄液移行性が悪いため)。

Rp)

ミノマイシン点滴静注用(100mg)

成人:ミノマイシン100mg 1回100mg、12時間ごと点滴静注 7~14日間

小児(体重<45kg):1回2.2mg/kg、12時間ごと点滴静注 7~14日間

 

 

 

 

予防

・ワクチンは利用できず、ダニの刺咬 を防ぐことが極めて重要である。

・発生時期および発生地を知り、汚染地域に立ち入らないこと

・農作業や森林作業でやむを得ず立ち入る際には、(1) 皮膚の露出を少なくしダニの付着を防ぐ、(2) ダニ忌避剤を使用する、(3) 作業後入浴し、注意深く付着ダニの除去を行う。

・感染を防ぐためダニを指でつぶさず、頭部をピンセットなどで摘んで除去する(マダニは口器が長く 皮膚に深く 刺咬していて、入浴だけでは除去できない可能性がある。)

 

感染症法における取り扱い(2012年7月更新)

全数報告対象(4類感染症)であり、診断した医師は直ちに最寄りの保健所に届け出なければならない。

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