概要
・「患者さんがどれくらい複雑な状況に置かれているか」との視点から症例を分類する評価法。状況・問題を大きく4つのドメインに分類する
分類
1. Simple(シンプル):単純
・問題の因果関係・構造が明確
・問題と答えが明確
2. Complicated(コンプリケーティッド):煩雑
・少し分析すれば、因果関係・構造が明確
・因果関係は明確なものの複数の因子が込み入っている
・Simpleな問題の組み合わせであり、個別の問題に還元できる。
・複数の視点で問題を把握し分析を行い,因果関係をひもときつつ介入の突破口を見つけることができる(このことをknowableと表現することもある)
3. Complex(コンプレックス);複雑
・因果関係が複雑、調査・探索が必要
・複数のComplexな問題には,因果関係論ではなく1つの介入がさざ波のように全体に及ぼす可能性を考える。まず全体を調査・把握し,変化に一つひとつ対応します。
・時には現在のバランスをあえて揺さぶるような介入点をずらした対応(例えば,担当者を変える,特定のプロブレムにあえて触れないなど)をしたり,そもそも介入を止めてみて,現在のシステムがどう変化するのか,一つの答えを変えるのではなく,全体にどう影響したかを自問自答したりする介入が有効かもしれません(このことをunknowableと表現することもある)
・complicatedな問題やSimpleな問題からなるが、個人的な問題や特定の状況に関する理解を必要とし、どちらにも還元できない、解決策には固有の歴史的な 観点からの検討や、社会の秩序や個人-集団関係の考慮を要し、予測も一般化もできない
・出来事に対し実験を繰り返して、正解パターンを探し出すというスタンス
4. Chaotic(カオス):混乱
・因果関係が不明確で、状況や問題を理解することも難しい
・制御できそうな問題はなく変化・混乱し続ける
・Chaosなレベルになると,問題をひとまず沈静化させるために比較的安全そうな何らかのアクションを起こしていくうちに,complexな状態に移行させるのが理想的です。
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5. Disorder(ディスオーダー):無秩序
・繁雑と混沌以外の無秩序
・直面する問題に適切な解決策がない
まとめ
不確実なものに対峙している自身の不安を受容しよう
不確実なものに対峙した時に,不安を感じたり,悪い結末を懸念したり,不確実性を患者に開示することに抵抗を感じ,過剰な入院や検査を行ったり,精神疾患・老年病・慢性疼痛などに陰性感情を抱いたりすることがあります。
エビデンスにも不確実性があることを認め,変化する優先順位や状況に暫定的に対応することが重要です。
ややchaosな状態からcomplexに移行する経験をすることで成長を実感できるようになりますので,一例ずつ経験を積み重ねていきましょう。
普段の診療で陰性感情を抱いた症例、モヤモヤを感じた症例などが当て はまると思います。ポリドクター、ポリファーマシー、マルチモビディティな患者さんや、 社会経済的問題が多い症例などがよい適応になるかと思います。
そして、複雑困難な症例を「複数の専門職を巻き込んで議論し、最適なケアを長期的視点で 行い、評価」することが必要になります。
多職種での話し合いに役立つツールとしては「 Jonsenの4分割表」が便利です。これは、患者の情報を「医学的適応」「患者の意向」「 QOL」「周囲の状況」の四項目にわけて列挙するフレームワークです。医師である我々は どうしても「医学的適応」に目がいきがちですが、「患者の意向」「QOL」「周囲の状 況」に関しては、看護師やソーシャルワーカー、医療事務などが、たくさんの情報をもって いることが多々あります。多職種の人とディスカッションをしながら、「最適なケア」を探 していくことが大切です。
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