HPV(human papillomavurus)
・ヒトにのみ感染する2本鎖DNAウイルス
・性交渉によって感染
・多くは12か月以内にウイルスは消失する。
・しかしそれ以上に感染が持続した場合に、数年の経過でがんを発症することがある
・HPVには200種類以上のジェノタイプがあり、ジェノタイプによって発症する疾患とリスクが異なる。
・子宮頸がんの発症リスクが高いのは16、18型(この2型で約70%)、その他31、33、45、52、58型(この5型で約20%)
ワクチン
・子宮頸がん予防、尖圭コンジローマ予防効果あり
・9価ワクチン(16、18、6、11、31、33、45、52、58)で子宮頸がんの原因の約90%が予防できる
・対象は小学6年~高校1年生相当の女性(10~14歳)、3回接種、筋肉注射
種類
・2価:サーバリックス®(GSK)
・4価:ガーダシル®(MSD)
・9価:シルガード9®(MSD):任意接種
の3種類が発売されている
・現在定期接種は2価、4価。9価は任意接種。
HPVワクチン接種後の多様な症状
日本プライマリ・ケア学会による声明
ヒトパピローマウイルスワクチン接種の積極的勧奨の即時再開を求める要望書
厚労省・HPVワクチンに関する情報提供資材
HPVワクチンに関するリーフレット(令和4年(2022年))
「本邦ではこれまでに HPV ワクチン接種後に報告された「多様な症状」が問題になっています。これについて、国内外において多くの解析が慎重に行われてきましたが、現在までに HPV ワクチンとの関連性を証明する科学的・疫学的根拠は示されておりません 。ただ、これは HPV ワクチンと「多様な症状」との間に因果関係が完全に否定されるものでもありません」
「なお HPV ワクチンによる副反応疑い報告の頻度は 0.08%(2,584 人/被接種者約 338 万人)、副反応疑い報告で確認できている未回復の割合は 0.005%(186 人/被接種者約 338 万人)であり 、海外での大規模比較試験では、接種者と非接種者間に副反応発生率に差はありませんでした 」
「HPV ワクチン接種後に、からだのあちこちに起きる痛み、手足の動かしにくさ、不随意運動(動かそうと思っていないのに体の一部が動いてしまうこと)などの有害事象が報告されました。ここで
は「多様な症状」と表現します。こうした「多様な症状」について、国内外において多くの解析が慎重に行われてきましたが、現在までに HPV ワクチンが「多様な症状」の原因であるという因果関係を証明する科学的・疫学的根拠は示されておりません。ただしこの解析結果は、因果関係を完全に否定するものでもありません」
「しかし実際には、マスコミ報道の過熱や、ワクチンに対して考えが違う人々の感情的な言動などから、HPV ワクチンをめぐって大きな断絶が起こり、その溝は埋まるよりも固定化しているようです」
身体機能性症状
厚労省:医療従事者の方へ ~HPVワクチンに関する情報をまとめています~
概念
●何らかの身体症状はあるものの、画像検査や血液検査を受けた結果、その症状に合致する異常所見が見つからないことがあります。このような状態を、「機能性身体症状」と呼んでいます。
●症状としては、①知覚に関する症状(頭や腰、関節などの痛み、感覚が鈍い、しびれる、光に対する過敏など)、②運動に関する症状(脱力、歩行困難、不随意運動など)、③自律神経などに関する症状(倦怠感、めまい、嘔気、睡眠障害、月経異常など)、④認知機能に関する症状(記憶障害、学習意欲の低下、計算障害、集中力の低下など)など多岐にわたります。
●痛みについては、特定の部位からそれ以外の部位に広がることもあります。運動障害などについても診察所見と実際の運動との乖離、症状の変動性、注意がそれた場合の所見の変化など、機能性に特有の所見が見られる場合があります。
●臨床現場では、専門分野の違い、病態のとらえ方の違いあるいは主たる症状の違いなどにより、様々な傷病名で診療が行われています。また一般的に認められたものではありませんが、病因に関する仮説に基づいた新しい傷病名がつけられている場合もあります。
例:身体症状症、変換症/ 転換性障害(機能性神経症状症)、線維筋痛症、慢性疲労症候群、
起立性調節障害、複合性局所疼痛症候群(complex regional pain syndrome: CRPS)
HPVワクチン接種との関連
●HPVワクチン接種直後から、あるいは遅れて、広い範囲に広がる痛みや、手足の動かしにくさ、不随意運動などを中心とする多様な症状が現れたことが副反応疑い報告により報告されています。
●この症状のメカニズムとして、①神経学的疾患、②中毒、③免疫反応、④機能性身体症状が考えられましたが、①②③では説明できず、④機能性身体症状であると考えられています。
●「HPVワクチン接種後の局所の疼痛や不安などが機能性身体症状を惹起したきっかけになったことは否定できないが、接種後1 ヶ月以上経過してから発症している症例は、接種との因果関係を疑う根拠に乏しい」と評価されています。
●HPVワクチン接種歴のない方においても、HPVワクチン接種後に報告されている症状と同様の「多様な症状」を有する方が一定数存在したことが明らかとなっています。
●このような「多様な症状」の報告を受け、様々な調査研究が行われていますが、「ワクチン接種との因果関係がある」という証明はされていません。
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