作用機序
・NSAIDsは,アラキドン酸カスケードにおいてプロスタグランジンやトロンボキサンの合成酵素であるシクロオキシゲナーゼ(Cyclooxygenase:COX)を阻害する。
・COXには1と2の二つのアイソフォームがあり、NSAIDsはCOX-1とCOX-2の両者を阻害する。
・COX‐1はすべての組織に恒常的に発現しており、血管の恒常性、胃粘膜保護作用(胃腸粘膜の血流や増殖による)、腎機能維持、血小板凝集、気管支拡張に関与するプロスタグランジンE2(PGE2)を産生し、主に生体を守る機能を有している。
・COX-2は炎症性サイトカインの刺激を受けてマクロファージ、線維芽細胞、滑膜細胞などに発現誘導され、血管拡張作用などを有し炎症促進作用を持つ。
・NSAIDsによりCOXが阻害されると,アラキドン酸カスケードがロイコトリエン系に傾くために,ロイコトリエン類の産生が増える(下図)
・NSAIDsのCOX-1阻害作用によって、気管支拡張に関与するプロスタグランジンE2(PGE2)の合成が低下することが一つの要因と考えられている。
・またPGE2の低下によってマスト細胞が刺激され、気管支収縮作用、血管拡張作用、血管透過性亢進作用にかかわるロイコトリエンが過剰に産生されることも原因と考えらえる
※ ロイコトリエン類は炎症反応において重要な役割(好中球走化性の活性化,気管支収縮作用,血管拡張作用,血管透過性の亢進など)を有し、作用が過剰になると喘息を誘発する(ロイコトリエン拮抗薬が気管支喘息の長期管理薬として使用されていることからも,ロイコトリエン類が過剰になると喘息を誘発してしまうことは想像できる)。
参照(このサイトから引用):https://www.igaku-shoin.co.jp/paper/archive/y2020/PA03389_04
COX-2選択的阻害の利点
・抗炎症作用を目的としてNSAIDs使用する場合には、COX-2のみを選択性に阻害する薬剤が理想的と考えられ、実際、COX-2選択性が高い薬剤では、胃腸障害の副作用(COX-1阻害が原因と考えられる)が発現しにくいことが明らかになっている。
・また「COX-2選択的阻害薬」であるセレコキシブの場合はCOX-1経路でプロスタグランジン類が産生されるために,全てがロイコトリエン系に傾かず,アスピリン喘息のリスクが下がる。
・そのためアスピリン喘息患者の場合,COX-2選択的阻害薬のセレコキシブ(セレコックス®)や、NSAIDsとは異なる作用機序で鎮痛・解熱作用を示すアセトアミノフェン(カロナール®)は使用可能である。
アスピリン喘息
・過敏症状がでる明確な機序は不明である。
・成人喘息の約10%を占める
NSAIDs潰瘍
・NSAID潰瘍は幽門部(前庭部)に多い
・浅い潰瘍が多発する傾向にある
・NSAIDを内服し酸抑制薬を投与しない場合、胃潰瘍が10~15%、十二指腸潰瘍が3%、消化管出血が1%発生するとされる
予防
・潰瘍の一次予防にPPIの使用は保険適応外である
・潰瘍の既往がない場合のCOX-2選択的阻害薬の使用において、潰瘍予防薬の併用は必要ない
・一方、既往がある患者ではPPIによる潰瘍発生予防治療を行うことが推奨されている
・潰瘍既往歴、高齢者、ステロイド併用者にはPPIやCOX-2阻害薬であるセレコキシブの選択が有効
腎機能障害
肝機能障害
・多くは可逆性
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