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甲状腺機能亢進症、甲状腺中毒症、甲状腺クリーゼ

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「甲状腺中毒症」とは?

・「甲状腺中毒症」とは、血中の甲状腺ホルモンの働きが過剰になる状態を言う。

・「甲状腺中毒症」の原因は、『甲状腺機能亢進症』(バセドウ病、機能性甲状腺結節、TSH産生(下垂体)腫瘍、妊娠性一過性甲状腺機能亢進症)など)と『甲状腺崩壊による甲状腺ホルモン漏出による甲状腺ホルモン過剰状態』(無痛性甲状腺炎、亜急性甲状腺炎、甲状腺ホルモンの過剰摂取)などがある。

 

 

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甲状腺機能亢進を疑う症状

・高熱

・頻脈

・頻呼吸

・意識障害

・四肢のふるえ

・落ち着きのなさ、意識障害

 

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Basedow病

疾患

・甲状腺細胞膜上にあるTSHレセプター、あるいはその近縁部位と反応する自己抗体であるTRAb(TSH receptor antibody:TSHレセプター抗体)が出現し、甲状腺ホルモンを過剰に分泌させて甲状腺機能が亢進する疾患(IgG抗体に属する)

・びまん性に軟らかい甲状腺腫大

甲状腺腫大の視診:

頸部を真横から見た時、正常では輪状軟骨の尾側は直線状だが、甲状腺腫があると、輪状軟骨の尾側が「前方に凸」になる

・甲状腺眼症(眼瞼後退、眼球突出、外眼筋機能不全など)

・甲状腺の血管雑音(動静脈瘻の発達による連続性雑音)

・ばち指

・非圧痕性浮腫(前脛骨部、上肢、肩、顔など)

・アキレス腱反射のhaif relaxation time(平均半弛緩時間:ハンマーで叩いた時からアキレス腱が元の位置へ半分まで戻る時間)の短縮;収縮したアキレス腱が再び弛緩する時間が短縮すること

 

検査

・甲状腺エコーでびまん性の血流増加

・FT4またはFT3上昇

・TSH低下(0.1μU/mL以下)

TRAb(TSH receptor antibody:TSHレセプター抗体):甲状腺細胞膜上にあるTSHレセプターあるいはその近縁部位と反応する自己抗体で、IgG抗体に属する。

TSAb(thyroid stimulating antibody):甲状腺細胞に患者血清を添加し細胞がどれだけ活性化するかで測定する方法。正常<120%

・その他:ALP高値、コレステロール値低値

 

治療

① 第一選択:チアマゾール(MMI):メルカゾール®

・妊娠初期には催奇形性の危険性があり、妊娠5週0日~9週6日までは避ける

・治療開始前のFT4値に応じて投与量を決定

FT4が正常上限の

1~1.5倍:MMI 5~10㎎

1.5~2倍:MMI 10~20㎎

2~3倍:MMI 30~40㎎

 

② プロピオチオウラシル(PTU):チウラジール®

・妊婦に使用可能

 

フォローアップ検査

・2~6週間隔

・TRAb、TSH、FT4の3種類でフォロー

・維持期は2~3か月毎

 

 

 

亜急性甲状腺炎

・ウイルス感染や感染後の炎症過程に引き起こされると考えられている。

・多くの症例で発症の2-8週前に先行する上気道感染をみとめる。

・コクサッキーウイルス、ムンプスウイルス、麻疹ウイルス、アデノウイルス、Covid-19ウイルスなどの感染が先行した例が報告されている。

・患者は40-50歳の女性に多く、発症に夏から秋に多い。

・30~50歳代、女性に多い

・症状:

のどが痛いといった漠然とした疼痛

発熱

倦怠感

前頸部圧痛(前頸部、それもやや下方)

・急性上気道炎の先行あり

エコー

・エコーで疼痛部位に一致した血流の乏しい境界不明瞭な低エコー領域

検査

・CRPまたは赤沈高値 +

・FT4高値、TSH低値(0.1μU/ml以下)

・血中甲状腺ホルモン、サイログロブリン高値

・疼痛部に一致した低エコー域

 

急性化膿性甲状腺炎

・頚部痛(顎や耳に放散、嚥下障害を伴うこともある)

 

下垂体腺腫(TSH産生)

・頭痛、視野障害(両耳側半盲)

 

 

妊娠時一過性甲状腺機能亢進症

・妊娠に伴う高濃度のhCGが甲状腺に作用して亢進症を来す

・hCG>10×10^4mIU/mL以上では甲状腺機能亢進症を来しうる

・数週間で自然治癒するため、治療は不要

 

無痛性甲状腺炎

・慢性甲状腺炎(橋本病)に何らかの原因が加わり、甲状腺が破壊されて血中の甲状腺ホルモンが増加する疾患。

・大きく分けると、出産2~6ヶ月後に起きる場合と出産に関係なく起きる場合がある。

・出産に関係のない場合は、慢性甲状腺炎(橋本病)や寛解バセドウ病の経過中発症するものである。甲状腺機能亢進症との鑑別が必要となる

・亜急性甲状腺炎とは異なり、発熱や甲状腺の痛みはありません。

 

検査

・fT4、fT3

・TSH

・甲状腺自己抗体(TRAb,TSAb)

・白血球数、分画

・ビリルビン

・トランスアミナーゼ

・アルカリフォスファターゼ

・腎機能

・凝固系

・エコー

 

甲状腺クリーゼ

定義

甲状腺クリーゼとは、甲状腺中毒症の原因となる未治療ないしコントロール不良の甲状腺基礎疾患が存在し、これに何らかの強いストレス(感染、手術など)が加わった時に、甲状腺ホルモン作用過剰に対する生体の代償機構の破綻により複数臓器が機能不全に陥った結果、生命の危機に直面した緊急治療を要する病態をいう。

症状

・多臓器不全が特徴である.具体的には,全身性症候,臓器症候ならびに甲状腺基礎疾患関連
症候の3つに大別でき,各症状が重度であり,しばしば生体の恒常性を逸脱している.

全身性症候

発熱(しばしば38°C以上)

高度の頻脈(130回/分以上)

多汗

意識障害

ショック

 

臓器症候

息切れ

動悸等の循環不全

呼吸不全

興奮・昏迷・昏睡等の中枢神経症状

下痢・嘔吐・黄疸等の消化器症状

 

甲状腺基礎疾患関連症候

甲状腺腺腫

眼球突出

 

・高熱、頻脈、意識障害、うっ血性心不全、消化器症状、肝機能障害など

・甲状腺クリーゼは10%近い死亡率を認める内分泌救急疾患である

 

診断基準(日本甲状腺学会)

必須項目

甲状腺中毒症の存在:遊離 T3 および遊離 T4の少なくともいずれか一方が高値

症状(注1)

1. 中枢神経症状(注2)
2. 発熱(38 度以上)
3. 頻脈(130 回/分以上) (注3)
4. 心不全症状(注4)
5. 消化器症状(注5)

 

確実例:必須項目および以下を満たす(注6)

a.中枢神経症状+他の症状項目1つ以上、または、
b.中枢神経症状以外の症状項目 3 つ以上

疑い例

a.必須項目+中枢神経症状以外の症状項目2つ、または
b.必須項目を確認できないが、甲状腺疾患の既往・眼球突出・甲状腺腫の存在
があって、確実例条件の a または b を満たす場合(注6)。

 

(注1)明らかに他の原因疾患があって発熱(肺炎、悪性高熱症など)、意識障害(精神疾患や脳血管障害など)、心不全(急性心筋梗塞など)や肝障害(ウイルス性肝炎や急性肝不全など)を呈する場合は除く。

しかし、このような疾患の中にはクリーゼの誘因となるため、クリーゼによる症状か単なる併発症か鑑別が困難な場合は誘因により発症したクリーゼの症状とする。

このようにクリーゼでは誘因を伴うことが多い。甲状腺疾患に直接関連した誘因として、抗甲状腺剤の服用不規則や中断、甲状腺手術、甲状腺アイソトープ治療、過度の甲状腺触診や細胞診、甲状腺ホルモン剤の大量服用などがある。

また、甲状腺に直接関連しない誘因として、感染症、甲状腺以外の臓器手術、外傷、妊娠・分娩、副
腎皮質機能不全、糖尿病ケトアシドーシス、ヨード造影剤投与、脳血管障害、肺血栓塞栓症、虚血性心疾患、抜歯、強い情動ストレスや激しい運動などがある。

(注2)不穏、せん妄、精神異常、傾眠、けいれん、昏睡

Japan Coma Scale (JCS)1以上または Glasgow Coma Scale (GCS)14 以下。

(注3)心房細動などの不整脈では心拍数で評価する。

(注4)肺水腫、肺野の50%以上の湿性ラ音、心原性ショックなど重度な症状。

NewYork Heart Association (NYHA)分類 4 度または Killip 分類 III 度以上。

(注5)嘔気・嘔吐、下痢、黄疸(血中総ビリルビン > 3mg/dl)

(注6)高齢者は、高熱、多動などの典型的クリーゼ症状を呈さない場合があり
(apathetic thyroid storm)、診断の際注意する。

 

治療

・甲状腺中毒症による多臓器不全に対して抗甲状腺薬、無機ヨウ素薬、副腎皮質ステロイド薬、β遮断薬、解熱薬などの治療手段を併用して改善を試みるべきである。

・甲状腺ホルモン作用の減弱を試みる目的で、全例にグルココルチコイドを投与する。

・原因疾患がバセドウ病であれば、抗甲状腺薬の大量投与とともに無機ヨードを投与する。

・甲状腺ホルモン作用の減弱を試みる目的で、頻脈に対してはβ遮断薬を投与する。心拍数150/分以上の場合は、超短時間半減期かつβ1選択的遮断薬であるランジオロール(オノアクト)を用いる。

 

全身管理:

一般的緊急処置、十分な輸液と電解質補正、徹底した身体の冷却と解熱薬投与を行う。
中枢神経症状(せん妄、けいれんなど)があるときは鎮静薬や抗けいれん薬を使用する。
心不全、肝不全が認められる場合は、各科と相談し集学的治療を検討する。感染症等、誘因に起因する場合は、誘因の治療を行う。
全身状態が改善するまで、集中的治療を行う。また、全身状態改善後は、甲状腺中毒症のコントロールを継続する。

 

薬剤

βブロッカー

・HR≧90の場合

・ビソプロロール

2.5~5mg 分1

・プロプラノロール(インデラル®)

30~90mg 分3

気管支喘息では禁忌(→ベラパミル、もしくはジルチアゼム)

 

オノアクト点滴静注用50mg 1μg/kg/分から開始し、心拍数や循環動態に応じて1~10μg/kg/分の用量で適宜調節する

抗甲状腺薬

経口でMMI(1-methy-2-merucaptoimidazole:MMI)60 mg/日、

または経口でPTU(propylthiouracil)600 mg/日

または静注でMMI30 mg/日

 

※経口投与が困難な場合は,静注や胃管投与を行う.

なお,静注薬はMMIのみである

※チアマゾールthiamazole(1-methy-2-merucaptoimidazole:MMI) 、商品名:メルカゾール®

 

処方例:

チアマゾール(メルカゾール®)(5mg) 3錠を6時間ごとに経口投与

チウラジール錠50mg 3錠を6時間ごとに投与

 

チアマゾール投与の指標:
・一般的にFT4が指標として用いられる。「バセドウ病治療ガイドライン」でもFT4値を参考に甲状腺ホルモン高値の重症度に応じて投薬開始量を選択することが示されている。

・TSHは甲状腺ホルモン高値によるネガティブフィードバックによって抑制され低値となっているので,MMI治療によってさらに低下するのではなく,甲状腺ホルモンの正常化に伴いネガティブフィードバックが解除され,TSHは徐々に上昇し正常化すると考えられる。

・TSHが正常化したらさらにMMIを減量(5mg/日など)する

・FT3はFT4から活性型に変換された甲状腺ホルモンで,病勢が強い場合はFT4より正常値に入りにくい場合があります(T3優位型)。このような症例ではFT3の正常化に必要な量のMMIを投与します

FT4が下がりすぎた場合は甲状腺ホルモン製剤を併用するとコントロールしやすくなる

 

副腎皮質ステロイド薬(グルココルチコイド)

・甲状腺クリーゼにおいては副腎皮質ホルモンの代謝が促進し、相対的に副腎皮質機能低下症となる危険性が高いため、その予防のために投与する

・甲状腺ホルモン作用の減弱を試みる目的で、全例にグルココルチコイドを投与する。

・また高用量の副腎皮質ステロイド薬は甲状腺ホルモンの合成と分泌を抑制するだけでなく、末梢におけるT4からT3への変換も抑制し、甲状腺ホルモンを低下させる

 

例)

ヒドロコルチゾン(ソル・コーテフ®注射用)100mg

初回200~300mg、以後8時間ごとに100mg静注

または

デキサメタゾン8 mg/日

 

解熱薬(アセトアミノフェン)

・アセトアミノフェンを投与して強力に体温を下げるとともに、アイスパックやクーリングブランケットによる物理的冷却を行うことで、甲状腺クリーゼに伴う重篤な発熱に対処すべきである。

※NSAIDは遊離型甲状腺ホルモンをの上昇を来す可能性が指摘されているため禁忌

 

例)

アンヒバ坐剤Ⓡ[1回500 mg,1日1,500 mg]

カロナールⓇ,アセト アミノフェン「JG」Ⓡ)

 

ヨウ化カリウム

・甲状腺ホルモンの原料であるヨウ素を大量に投与すると、甲状腺内のホルモンの合成がストップしホルモンの分泌を低下する

・甲状腺機能亢進症により発症した甲状腺クリーゼにおいて、無機ヨウ素薬は抗甲状腺薬と同時に投与すべきである。

処方)

ヨウ化カリウム丸50mg 1錠を6時間ごとに投与

無機ヨウ素(ヨウ化カリウム® 200 mg/日)

 

血漿交換

 

外科手術

 

 

 

 

 

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